用途
回転機器の状態監視におけるセンサ
回転機器の状態監視用センサの選定に関する総合ガイド。
産業現場において、効率向上、ダウンタイムの削減、安全性向上に対する需要が高まっていることから、状態監視システムの利用が拡大しています。 これらのシステムは、センサを利用して振動、温度、圧力などの主要なパラメータの変化を検知し、設備の状態に関する有用な知見を提供することで、組織が予期せぬダウンタイムを最小限に抑えるための予防的な対策を講じられるようにします。
回転機器は、石油・ガス事業や工業製造などの産業におい円滑な操業に不可欠です。この重要な機器のカテゴリは、非回転機器と比較して、特有の課題を抱えています。ポンプ、モータ、ギアボックス、コンプレッサは、絶え間ない動きや振動にさらされているため、潜在的な問題を発見することがより困難になります。こうした問題には、ベアリングの摩耗、位置ずれ、および不均衡などが含まれます。
さらに、回転機器に使用される潤滑油は、時間の経過とともに劣化することがあり、その結果、機器の故障につながる可能性があります。これらの課題に対処するためには、振動、温度、潤滑油の状態など、さまざまなパラメータを監視するために、適切なセンサを使用する必要があります。しかし、適切なセンサを選定するのは難しい場合があります。
技術の進歩に伴い、状態監視に使用されるセンサの市場は、近年急速に成長しています。適切なセンサを選定する際に考慮すべき複雑な要素や要因を理解することは、信頼性が高く効果的な状態監視を行ううえで極めて重要です。
測定パラメータ
回転機器の監視用センサを選定する際に、まず考慮すべき点は測定パラメータです。回転機器の監視には、いくつかの種類のセンサが利用可能であり、それぞれに固有の長所と短所があります。
ポンプ、モータ、ギアボックス、コンプレッサなどの重要機器には、主に以下のセンサが使用されています:
- 振動センサは、回転機器から発生する振動や揺れを測定し、軸受の摩耗、軸のずれ、不均衡などの機械的な問題を早期に検出するために使用されます。
- 温度センサは、回転機器の温度を測定し、過熱の早期検知に用いられます。過熱は、電気的な問題、機械的な問題、あるいは潤滑の問題など、潜在的な不具合の兆候となる場合があります。
- 油質センサは、回転機器で使用される潤滑油の品質を測定し、汚染、酸化、劣化などの問題を早期に検知するために使用されます。
- 圧力センサは、ポンプやコンプレッサ内部の圧力を測定し、漏れやポンプ性能の低下といった問題を早期に検知するために使用されます。
- 電力(電圧および電流検知)センサは、機器の電気的性能を監視するために使用され、機器に供給されている電圧および電流に関するデータを提供します。この情報は、電力変動やモータへの負荷増加といった問題を検知するのに役立ちます。これらは、電気系統や機器自体に問題があることを示している可能性があります。
- 磁束(B 場)センサは、機器から発生する磁場を監視するために使用され、磁場の強さや方向に関するデータを提供します。それほど一般的ではないものの、機器に通電しているかどうか検知したり、他のセンサと組み合わせて追加情報を提供したりするために利用できます。
- 音響ノイズ(超音波)センサは、機器から発生する音を監視するために使用され、ノイズの周波数や強度に関するデータを提供します。この情報は、振動の増加といった問題を検知するうえで有用であり、こうした現象は、緩みや機械的な摩耗など、機器の不具合を示している可能性があります。
用途要件
測定パラメータに加え、特定の用途に適したセンサの選定は、状態監視プログラムの具体的な要件や目標に大きく左右されます。たとえば、工業生産の用途においては、振動や温度の検知を検討するとよいでしょう。これらのセンサは、信頼性が高く正確であれば、モータのベアリングの摩耗や軸のずれを早期に警告し、ポンプのキャビテーションや設置不良の問題を検出することができます。これらの測定値は、温度の監視と併せて、生産に影響を及ぼす可能性のある問題を予測するのに役立ちます。
ギアボックス用途向けのセンサを選定する際、振動センサと並んで、油質センサが当然の選択肢となります。油質センサは、潤滑油の品質に関する重要な情報を提供し、高周波振動センサはギアの摩耗を早期に検出することができます。これにより、設備の寿命を延ばし、ダウンタイムを大幅に削減することが可能です。
信頼性および精度
信頼性および精度の確保
効果的な状態監視には、信頼性が高く正確なセンサが不可欠です。回転機器の監視用センサの信頼性と精度を評価する際には、いくつかの要因を考慮する必要があります。
- 校正
センサの校正を維持することは、長期にわたって精度を確保するために重要です。理想的なセンサは、工場出荷時に校正済みで、安定性が高く、定期的な校正の必要性を低減または排除できるものです。
- 再現性および安定性
再現性および安定性とは、センサが長期にわたり一貫性のある正確な測定結果を生み出す能力を指します。センサの信頼性や精度は、温度、湿度、振動などの要因によって影響を受ける可能性があるため、こうした条件下でも安定して動作するように設計された堅牢なセンサを選ぶことが重要です。
- 精度
収集されたデータが有意義かつ有用なものとなるためには、センサの精度が極めて重要です。センサの精度は、具体的な用途の要件や、監視対象となる情報の種類に基づいて評価する必要があります。
- 音響ノイズ
ノイズ(超音波)センサは、機器から発生する音を監視するために使用され、ノイズの周波数や強度に関するデータを提供します。この情報は、振動の増加といった問題を検知するうえで有用であり、こうした現象は、緩みや機械的な摩耗など、機器の不具合を示している可能性があります。
- 耐久性
センサの耐久性は、長期にわたり効果的に機能し続けることを保証するうえで重要です。耐久性に優れたセンサは、破損や故障が起こりにくく、長期間にわたり正確な測定結果をもたらします。IP6X 規格の筐体を備えたセンサを選定することは、耐久性を高め、長期にわたって高い精度を維持するための効果的な方法です。
- 感度
センサは安定性を損なわないよう堅牢である必要がありますが、同時に感度も高くなければなりません。感度とは、センサが監視対象のパラメータのわずかな変化を検出する能力のことです。効果的な状態監視を行うためには、感度が高く、監視対象のパラメータの変化を検出できるセンサを選ぶことが重要です。
たとえば、圧電技術を採用した振動センサは、より高い周波数帯域で動作できることが知られており、機器の振動に関するより詳細な情報を提供し、潜在的な問題を早期に検知することを可能にします。一方、マイクロ電気機械システム(MEMS)技術は、低コストかつ小型であることから、状態監視システムで広く利用されています。しかし、圧電式センサに比べると周波数範囲が狭いことが多く、機器の故障の初期兆候を検知する際に、同等の感度や精度を発揮できない場合があります。予期せぬダウンタイムを最小限に抑えるためには、設備の摩耗を早期に発見することが不可欠です。
互換性
監視・制御システムとの互換性の確保
効果的な状態監視を行うためには、センサが設置環境に適していること、およびセンサと監視・制御システムとの互換性が極めて重要です。工業製造や石油・ガス事業で稼働している回転機器の多くは、過酷な産業環境にさらされています。互換性を確保することで、状態監視プログラムの有効性と効率を大幅に向上させることができます。
- 環境条件を考慮
極端な温度、振動、腐食、汚染、湿気、高圧、および衝撃に頻繁かつ長期間さらされることを考慮しましょう。お客様がお選びになるセンサは、特定の条件の変化を検知できる十分な感度を備えつつ、こうした過酷な環境にも耐えられる十分な堅牢性を兼ね備えている必要があります。密閉型設計、IP6X 規格の筐体、ATEX、および本質安全認証を備えた製品をお選びください。
- 有線・無線の両方の選択肢を検討
有線センサは、監視対象の機器と監視・制御システムを直接接続するため、より安定した信頼性の高い信号を得ることができます。しかし、既存の製造現場に有線センサを設置するのは、より困難で、費用もかさむ場合があります。一方、無線センサは設置が容易な場合が多く、設置場所や移動の面でも柔軟性が高いことがよくあります。しかし、多くの無線センサは電池駆動であるため、電池の寿命や交換について考慮する必要があります。
低消費電力の電子回路とエッジ処理を備えたセンサは、バッテリーの持続時間を大幅に延ばすことができます。有線センサと無線センサのどちらを選ぶかを決める際には、既存のシステムとの互換性を考慮することが重要です。すでに有線システムを導入されている場合は、有線センサを引き続き使用した方が、費用対効果が高く、手間もかからないかもしれません。一方、システムのアップグレードをお考えの場合や、センサの設置場所についてより柔軟性を求めたい場合は、無線センサの方が適しているかもしれません。
- 通信プロトコルを考慮
状態監視用のセンサでは、データ転送にさまざまな通信プロトコルが使用されることがよくあります。センサと監視・制御システムが、使用する通信プロトコルの点で互換性があることを確認してください。最も一般的に使用されている 2 つの通信プロトコルは、短距離通信向けの Bluetooth と、センサ間の距離がより離れている遠隔地向けの LoRaWAN です。互換性を評価する際には、電力要件についても考慮する必要があります。
設置および保守
センサの設置と保守の容易さ
センサの設置と保守が容易であることは、ダウンタイムを削減し、状態監視プロセスの効率を最大化するために重要です。状態監視の普及は、製造業務における効率性と安全性への関心の高まりに起因しています。導入や保守に手間がかかる場合、状態監視を導入することによるメリットが台無しになってしまう可能性があります。
- 設定が簡単で、サイズや形状が使いやすいセンサを選ぶ
設置が容易で、手順が分かりやすくシンプルなセンサを探しましょう。使いやすいインタフェースを備えたセンサは、設定や構成が簡単です。センサの物理的なサイズや形状も、設置や保守のしやすさに影響を与える可能性があります。コンパクトで軽量であり、監視対象の機器に容易に組み込めるセンサをお選びください。
価格および入手性
センサの価格および入手性
コストと品質のバランスをとることが不可欠です。コスト削減は、工業生産現場に状態監視システムを導入するうえでの成長要因として挙げられています。コストを抑えるためには、安価なセンサを選ぶのが当然の選択のように思えるかもしれませんが、こうした安価な製品には、必要な精度や信頼性が欠けていることがよくあります。コストと性能の適切なバランスを見極めることは難しい場合もありますが、状態監視プログラムの成功を確実にするためには極めて重要です。
技術的イノベーション
スマート センサ機能
状態監視におけるセンサの進化は、単純なデータ収集から、エッジ コンピューティング、人工知能、機械学習の統合へと移行してきました。こうした技術の進歩により、リアルタイムのデータ分析、インテリジェントな意思決定、および予知保全が可能となり、予期せぬダウンタイムのリスクを低減し、設備全体の信頼性を向上させるうえで重要な役割を果たすことができます。
TE のセンサの専門家と連携する
回転機器の監視用センサの選定や評価を行う際には、センサの専門家と協力することを強くお勧めします。TE Connectivity では、豊富な経験と専門知識を活かし、設計から商品化に至るまで、有益なアドバイスとサポートを提供しています。当社のエンジニアは、センサ技術、信号処理、データ分析について深い知見を有しており、お客様の用途に合わせた最適な構成選びをお手伝いいたします。
センサの動作の多くは、設置される環境によって左右されることがあります。当社の専門家は、センサに関する知識に加え、お客様の業界における回転機器が置かれる具体的な条件についても深く理解しています。
当社では、センサの選定という複雑なプロセスを円滑に進められるよう、お客様の具体的なニーズや要件に基づいた有益な知見や提案をご提供いたします。