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有線センサからワイヤレス センサへの移行を推進する要因

状態監視業界において、有線センサからワイヤレス センサへの移行ニーズを推進してきた 4 つの主要な推進要因について解説します。

回転装置設備の状態監視は工場の信頼性と安全性を管理する手段で、何十年も実践されてきた実績があります。 その中心にあるのは振動監視です。 従来、振動センサは装置上に施工されて中央の機械保護システム (振動モニタなど) まで固定配線で接続されていました。 この技術は信頼性が高いもののコストがかかり、通常は大型回転装置で使用されるものでした。すなわち、蒸気タービンや大型燃焼 (ガス) タービンなど、工場の操業に「きわめて重要」と見なされている装置です。 

渦巻ポンプやコンプレッサなどの重要度の低い設備 (いわゆる周辺装置) に対してそのような状態監視システムを施工するビジネス モデルは利点が少なく、維持が困難でさえあります。 しかし、場合によっては、そのような装置が使用できなくなることも安全性と信頼性の高い工場の操業にとって重大なことです。 したがって、低コストで周辺装置を状態監視する必要性はやはり存在します。

 

ワイヤレス振動センサは 10 年以上も、その解決策として提案されてきました。商用実装の多くは、さまざまな理由で成否の入り交じる結果になっています。しかし、TE Connectivity (TE) は、技術と市場実勢が十分に収斂されてそのようなワイヤレス センサを導入できるようになってきていると感じています。 

業界の推進要因

この市場空間を形成する推進要因は少なくとも 4 つあります。

 
  • 推進要因 1: 低コストでデータが得られることに対して工場作業者から増え続ける需要
  • 推進要因 2: 絶え間ない電化によるバッテリー性能の劇的な改善
  • 推進要因 3: モノのインターネット (IoT) の台頭によるデジタル無線性能の改善
  • 推進要因 4: IoT デバイスのエッジ コンピューティングによるワイヤレス通信の大幅な強化

推進要因 1

低コストでデータが得られることに対して工場作業者から増え続ける需要

デジタル化が進む中で明白になってきた教訓の 1 つは、データの需要が満たされることは決してないということです。ただし、そのデータは低コストで供給されなければなりません。 工場設備の状態監視もまったく同じです。 

従来の施工方法では、装置に施工したセンサに多芯シールド ケーブルを接続してそれを中央の機械保護装置まで配線する必要があります。総電路長は数百フィートになることもあります。これがセンサごとに必要です。センサが多い場合は数千フィートのケーブルが必要になります。さらに、通常、National Electrical Code® (米国電気規定) や現地工場の要件を満たすために装置のセンサから延びる最初の数十フィートに電線管を施工する必要があります。残りの中央ステーションまでのケーブルは、一般に、束ねられて大型の電線管やケーブル トレイに収められます。これらすべてに多くの労力と材料が必要で、拡張も容易ではありません。

この問題は、ワイヤレス センサによって解決できます。ワイヤレス ゲートウェイは中央ステーションに固定配線で接続されます。しかし、ワイヤレス センサの多くは単一のゲートウェイで処理されるため、装置にケーブルや電線管は不要です。ゲートウェイから中央ステーションへの信号ケーブルは 1 つのセンサからのデータだけではなく複数のセンサからのデータを伝送します。このアーキテクチャは拡張が容易です。ゲートウェイは追加のワイヤレス センサを処理できるほか、2 倍または 3 倍の数のセンサに対応可能なゲートウェイを新たに施工することもできるからです。同じコストでこれを実現することは、従来の方法では不可能です。

推進要因 2

絶え間ない電化によるバッテリー性能の劇的な改善

ワイヤレス センサが想定どおりの性能を発揮するにはバッテリーが必要であることは明らかです。ワイヤレス センサ利用の成否を左右する最大の要因はバッテリーの性能です。残量の低下したバッテリーを何度も交換する必要があると、ワイヤレス センサを利用するビジネス モデルの経済性は漸減していきます。また、センサへの電力が途絶することによるデータ消失は言うまでもありません。

最近まで、バッテリー性能の技術改良はエレクトロニクスにおけるその他の性能改善に追いついていませんでした。しかし、トランスポーテーション分野の電化 (電気自動車) とドローンの台頭によって、バッテリーの劇的なコスト低下と性能改善が進みました。現在でもワイヤレス用途で最適な技術であり選択肢であるリチウム バッテリーの価格は、2010 年のキロワット時あたり約 1,200 ドルから 2018 年にはキロワット時あたり 175 ドルにまで大幅に低下しました。ガソリン自動車よりも電気自動車のほうが安価に利用できる日はそう遠くありません。長寿命バッテリーの普及によって、ワイヤレス センサを低コストで利用できるようになります。数か月ごとに交換しなければならなかったバッテリーが年に 1 回、さらに進んで 2 年に 1 回未満の交換で済むようになると、ワイヤレス センサの運用は、一躍、有線センサに対してコスト競争力を持つようになります。

推進要因 3

モノのインターネット (IoT) の台頭によるデジタル無線性能の改善

デバイスをインターネットに接続して遠隔で制御し、管理できるようにする手法により、
無線ハードウェアと通信プロトコルの両面でデジタル無線通信が劇的に改善されてきました。スマートフォンおよび常時接続のタブレットと PC の台頭により、無線ハードウェアのコストは絶え間なく低下しています。モビリティの見地から、バッテリー寿命の向上に効果的な超低消費電力無線チップが求められてきました。このようなあらゆるデバイスで膨大な量のデータが生成されることから、高効率と低コストで利用できる無線帯域幅も求められてきました。

 

利用可能で最も将来性がある LPWAN (Lower Power Wide Area Network) として、LoRaWANTM と低エネルギー Bluetooth (BLE: Bluetooth Low Energy) による無線通信方式が注目されています。 

 

LoRaWANTM の利点:

  • 免許不要のサブ GHz 無線帯域
  • バッテリー寿命の向上に効果的な超低消費電力
  • センサとゲートウェイ間の長距離伝送能力 (現地の条件に応じて 5 km 以上)
  • 配備に柔軟性があり、混在環境の深部に設置可能
  • 必要に応じてデータを非同期で送信できるので、バッテリー寿命が向上。

 

BLE の利点:

  • 免許不要でグローバルな 2.4 GHz 無線帯域
  • バッテリー寿命の向上に効果的な超低消費電力
  • ゲートウェイ、スマートフォン、タブレットの大規模基地を利用することによる容易な通信
  • 広いデータ帯域幅により、解析を目的とした生データの転送が可能
  • ブロードキャスト モードでデータを送信することにより、容易な通信とバッテリー寿命の向上が可能。

推進要因 4

IoT デバイスのエッジ コンピューティングによるワイヤレス通信の大幅な強化

何年も前に、Gordon Moore はデジタル デバイスの性能が約 18 か月ごとに倍になると予測しました。これは「ムーアの法則」と呼ばれています。この予測は、手のひらの上やウェアラブル デバイス (スマート ウォッチなど) で非常に大きな計算能力が実現されている現在に至るまで、有効性をほぼ保ってきました。これによってエッジ コンピューティングが可能になってきています。すなわち、生データを中央ステーションに送り返して処理させるのではなく、ネットワークの終端 (ネットワークの「エッジ」) やその付近でデータを処理できるということです。

ワイヤレス振動センサにおけるエッジ コンピューティングのわかりやすい用途は、サンプリングされた振動波形の FFT (高速フーリエ変換) をセンサ自体が計算することでしょう。従来のシステムでは生の振動波形が (アナログ信号として) 中央ステーションに送信されて FFT が計算されます。エッジ コンピューティングでは、FFT をセンサ内で計算して処理済みのデータを送信することができます。生の振動信号を送信するよりも帯域幅のオーバーヘッドが減少し、バッテリー消費量が少なくなります。ただし、これは単純な例にすぎません。最終的にははるかに多くのコンピューティングがセンサで行われる可能性があります。適切なアルゴリズムがあれば、自身が施工されている装置のことや正常に動作しているかどうかをセンサが「知る」ことができるでしょう。 真にスマートな状態監視振動センサを実現する要素はすでに揃っています。

結論

TE Connectivity は、このような市場推進要因の台頭を受けて、ワイヤレス振動センサ 89xxN と 85xxN を設計しています。TE の新型センサは、スケーラビリティに優れたワイヤレス アーキテクチャによって装置の状態データに対する工場作業員の要望に応えます。89xxN は、LoRa™ 無線を組み込み、LoRaWANTM プロトコルを使用してワイヤレス ゲートウェイと通信します。サンプリング レートによっては 4 年間のバッテリー寿命を実現できます。89xxN はデバイス構成で BLE 接続に対応しているほか、ユーザー側で TE Toolbox を使用すると LoRaWAN ネットワークを介してセンサを構成することもできます。85xxN は、データ伝送と構成の両方で全面的に BLE を使用するように設計されています。最新の Bluetooth 5.0 規格をサポートしているので、ゲートウェイ、スマートフォン、タブレットからの操作で確実に機能します。これにより、あらゆる装置と条件に対応できます。8xx1N プラットフォームは柔軟性を念頭に設計されています。8911N と 8511N は、単軸加速度計を使用した簡潔な単一装置解析に適しています。複雑な装置解析向けには、3 軸加速度計を使用する 8931N と 8531N が用意されています。89x1N と 85x1N は、防水防塵設計を採用し、危険区域認定を取得していることから、複雑な工場環境に施工できます。

 

ワイヤレス振動センサ 89xxN と 85xxN は最新の工場に必要な状態監視センサです。

LoRaWAN は商標です。