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ロード セルの基礎

ロード セルを理解するうえで重要な基本概念を示し、重要な性能特性や環境への配慮について説明します。

ロード セルにおける圧縮力と張力の比較

ロード セルは力を測定する部品であり、力の種類 (圧縮力または張力) によって設計、取り付け方法、用途が決まります。

  • 圧縮ロード セルは、ロード セルに荷重が押し込まれることによって生じた圧縮力を測定します。典型的な用途はトラック スケール、産業プラットフォーム スケール、タンク スケールなどで、そこでは構造物やプラットフォームの下にロード セルが取り付けられます。
    • 利点:
      • 静的荷重測定用に簡単に取り付け可能
      • 高耐荷重オプションもあり
    • 誤差リスク:
      • 荷重分散が不均一
  • 張力ロード セルは、ロード セルから荷重が引き離されることによって生じた張力を測定します。張力ロード セルの一般的な用途は、クレーン スケールの監視やケーブル張力の測定です。そこでは、荷重経路と一直線上にロード セルが配置されます。
    • 利点:
      • 吊り下げ荷重に適している
      • 吊り上げシステムにおいて動的な力を測定可能
    • 誤差リスク:
      • 横方向の荷重または位置ずれ
  • 複合ロード セルは、張力と圧縮力の両方を測定できます。これらのセンサは、機械や材料の試験に役立ちます。
  • トルク測定におけるロード セルは、より複雑です。そこでは、単一の軸方向の力を測定するのではなく、ねじれによるせん断ひずみをトルク センサ (回転ロード セル) で測定します。45° の角度でシャフトに接着すると、一方のゲージに張力がかかり、対角線上の反対側のゲージに圧縮力がかかります。この場合、ひずみブリッジは、反対方向のひずみを使用して、トルクに比例する差動信号を生成します。

静的測定と動的測定の比較

静的測定は、一定に維持される荷重、または時間の経過とともに非常にゆっくりと変化する荷重に適用されます。たとえば、トラック スケールや、固定タンクを測定するロード セルがこれに該当します。それに対して、動的測定には、動き、振動、衝撃によって急速に変化する力が伴います。このような動的荷重を測定する用途としては、衝突試験やロボット監視が挙げられます。静的条件と動的条件を区別することは、ロード セルの選択、信号調整、正確性の要件に影響を与えます。静的用途では長期安定性とクリープの最小化が優先されるのに対し、動的用途では、過渡的な力を正確に捉えるために、高速な応答、高い固有周波数、効果的なノイズ フィルタリングが求められます。

単軸ロード セルと多軸ロード セルの比較

ロード セルは力を測定するよう設計されていますが、用途の複雑さによっては、単軸センサではなく多軸センサが必要になる場合があります。これらの違いを理解し、どのような場合にどちらを使用するかを知ることは、実装の成功に大きく影響します。

ロード セルの軸の比較チャート

単軸と多軸の比較チャート

正確性と精度

正確性と精度はどちらもロード セルの性能にとって不可欠な指標ですが、それらは測定品質の異なる側面を表します。

  • 正確性とは、測定された出力と実際にかけられた荷重との誤差の大きさを表します。
  • 精度とは、同じ条件下で実施した複数回の測定結果の一貫性を指します。正確性は問いません。

 

例:

  • 100 ポンドの力をかけたときにロード セルの測定値が 99.9 ポンドであれば、「正確性が高い」とみなされます。
  • 反復測定の結果が 100.1 ポンド~ 99.6 ポンドの範囲であれば、「正確性と精度が高い」とみなされます。
  • 反復測定の結果が 101.5 ポンド~ 98.0 ポンドの範囲であれば、「正確性も精度も低い」とみなされます。

   

仕様 代表値 説明
正確性 ±1.0% FS かけられた荷重の真の値からの偏差。
線形性とヒステリシスの組み合わせ ±1.0% FS 非線形性とヒステリシスによる複合誤差。
ゼロ シフト (1°C あたり) ±0.05% FS/°C 温度変化によるゼロ出力の変化。
感度シフト (1°C あたり) ±0.05% FS/°C 温度変化による感度の変化。
再現性* ±0.005% FS
同一の荷重条件下での出力の一貫性。
クリープ (30 分)* ±0.01 ~ 0.03% FS 一定の荷重下での出力の経時的なドリフト。
出力に対する温度の影響* ±0.03% FS/10°C 温度による出力信号の変化。
ゼロに対する温度の影響* ±0.05% FS/10°C 温度によるゼロ シフト。

 *常に規定されているとは限りません

 

計測学グレードのロード セルと校正ラボで使用されるロード セルは、わずか ±0.02% の複合誤差と ±0.005% の再現性を達成することができ、精密さが要求される用途に応える比類のない性能を実現します。

環境要件を定義することは、ロード セルの信頼性と安全性を確認するうえできわめて重要です。環境定格は、実際の使用条件下での性能、耐用寿命、長期的な正確性に影響を与える可能性があります。

温度範囲

ロード セル用途の使用温度範囲全体を考慮することが重要です。屋外や産業環境では多くの場合、要求される温度範囲が広くなります。温度変化は正確性に影響するため、補償技術が必要となる場合があります。

侵入保護 (IP 定格)

IP 定格は、防塵・防水性能を示す世界的に標準化された等級システムです。定格は「IP」という文字とそれに続く 2 桁の数字で構成され、最初の数字は固形物に対する保護レベルを示します。

 

数字 固形物に対する保護レベル 水に対する保護レベル
0 なし 保護されていない
1 50 mm (2 インチ) を超える物体 水の滴下 (垂直)
2 指など、12.5 mm (0.5 インチ) を超える物体 水の滴下 (最大 15° の角度)
3 工具やワイヤなど、2.5 mm (0.1 インチ) を超える物体 水の噴霧 (最大 60° の角度)
4 小径ワイヤなど、1 mm (0.04 インチ) を超える物体 水しぶき (任意の方向)
5 限定的な防塵 (若干の侵入あり) 噴水流
6 完全防塵 (侵入なし) 強力な噴水流
7* --- 一時的な浸漬 (30 分未満)
8* --- 継続的な浸漬 (深さ指定あり)
9* --- 高圧、高温の噴水流

 *注: 1 桁目には 0 〜 6 のみが適用され、2 桁目には 0 〜 9 が適用されます

耐腐食性

ロード セルの耐久性と信頼性を確保するには、耐腐食性を備える必要があります。これは特に、屋外環境や過酷な条件が生じる場所で重要です。ハーメチック シーリング、IP 定格のエンクロージャ、特殊材料を用いることで、優れた保護性能が得られます。材料の選択も、腐食の可能性を軽減するために重要となります。

ロード セルのボディ: ロード セルのボディは、湿気、化学物質、塩水噴霧、酸性環境に直接接触することが多いため、一般的に最も脆弱な部分です。

  • 高合金ステンレス鋼は、最も要求の厳しい用途でも優れた耐腐食性を発揮します。
  • 硬質アルマイト処理アルミニウムは、中程度の耐腐食性が求められる軽量システムによく使用されます。
  • 保護コーティングやめっきを施すことで、ロード セル ボディの表面の耐久性を高めることもできます。

ひずみゲージ: 侵入した湿気への曝露は、ひずみゲージにとって重大な危険因子です。腐食は、ひずみゲージの動作に大きな影響を及ぼす可能性があります。

  • ひずみゲージの空洞にハーメチック シーリングを施すことで、ひずみゲージをある程度保護することができます。
  • エポキシ樹脂による封止も、侵入に対する保護効果があります。
  • ガラスと金属間のシールも、この目的に非常に効果的です。

 

電気コネクタ: 湿度や化学物質への曝露による接続ポイントの腐食は、センサの信頼性や正確性に深刻な影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクは、いくつかの方法で軽減できます。

  • 防水ジャケット付きのシールド ケーブルは、接続ポイントへの湿気の侵入を防ぎます。
  • 腐食リスクを最小限に抑えるため、密閉されたインタフェースに IP 定格のコネクタを指定できます。

 
接着剤: ボディへのひずみゲージの接着に使用される接着剤は経年劣化する可能性があり、腐食の大きなリスクをもたらします。耐薬品性と耐熱性に優れた高性能接着剤は、その耐性が目的の用途に特有の過酷な環境を対象としている場合には非常に効果的です。

電磁障害適合性 (EMC)

電磁干渉は、信号ドリフトやノイズを引き起こし、繊細なロード セル回路の故障の原因となることがあります。ロード セルを選択する際は、電磁干渉 (EMI)、無線周波数干渉 (RFI)、静電気 (ESD) からの保護を考慮することが重要です。以下の対策を講じることで、信号の安全性を向上させ、ロード セルの寿命を延ばし、IEC 61000、EN55032、FCC Part 15 などの EMC 規格への適合性を確保できます。

 

  • シールド ケーブル: 編組シールドまたは箔シールドが施され、片端が接地されたツイストペア ワイヤは、信号線への干渉の防止に効果的です。
  • 静電界遮蔽: 導電性シールを備えた金属ハウジングは静電界遮蔽として機能し、外部からの EMI/RFI を遮断します。
  • フィルタ: 信号線および電力線上でフェライト ビーズ、コンデンサ、ローパス フィルタを使用することにより、高周波ノイズと電圧スパイクを抑制できます。
  • 接地: ロード セルのボディ、ケーブル シールド、信号処理機器を適切に接地することにより、迷走電流や静電放電に対して低インピーダンスの経路を提供できます。 
  • ESD 保護回路: 入出力線上で TVS (過渡電圧抑制) ダイオードまたは ESD サプレッサを使用することにより、静電気放電による損傷のリスクを大幅に低減できます。
  • 電気的絶縁: 信号調整モジュールを光絶縁または変圧器ベースで絶縁することにより、ロード セルとデータ収集システム間の伝導干渉を防止できます。
  • PCB のベスト プラクティス: 制御されたインピーダンス トレース、グランド プレーン、アナログ/デジタル パスの分離を使用すると、内部 EMI とクロストーキングを最小限に抑えることができます。

耐衝撃性と耐振動性

モバイル、自動車、エアロスペース、産業機械の用途では、ロード セルの性能を損なわずに機械的衝撃や振動に耐えられることが不可欠です。これらの用途では、可能であれば、耐久性を高めた設計や振動減衰機能を実装する必要があります。たとえば、エアロスペース用のロード セルでは、校正を許容可能な範囲内に維持するために振動減衰マウントが必要になります。

ロード セルのフォーム ファクタ

ロード セルの最も一般的なフォーム ファクタの特性について説明します。

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ロード セルの技術

特定の用途に適したロード セルを選択するための鍵となる動作原理と主要な構成部品について説明します。

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