データ接続

データが燃料となる未来へ突き進む

自動車におけるデータ接続のトレンド・課題・ソリューション

車両はよりスマートになって、安全性、セキュリティ、利便性、効率性のレベルを絶えず高めています。 このインテリジェンス レベルの向上の核となるのは、車両の内部と外部の両方から収集されて生成された情報に基づいた複雑な意思決定です。 データに基づく意思決定には、走行中の半ドアをチャイムで警告するという簡単なものや、山道で検知された障害物を自動的に回避するといった複雑なものもあります。 この両極端のトラフィック管理シナリオに加えて、沿道の標識との通信や車両同士の通信もあります。 これら以外にも、後部座席のインフォテインメント ディスプレイに最新の映画がクラウドからストリーミングされます。 トランスポーテーションの最初の世紀はガソリンやディーゼルが燃料でしたが、現在は電気とデータが当社を未来に推進する促進剤であることは明らかです。これまで以上に、かつては想像もできない容量や環境で情報源から意図された送信先まで完全かつシームレスかつ迅速にデータが移動する必要があります。 データ接続に関するこれらの課題は単純なものではありません。TE Connectivity (TE) は、さまざまな業界のお客様やサプライヤと連携してこれらの課題に対応しています。

 

データ接続

自動車のメガトレンドは ACES

モビリティにおける 4 つの主要トレンドの概要を示す名前として ACES という頭字語が浸透してきています。すなわち、  Automated (自動化)、Connected (接続)、Electrified (電化)、Shared Mobility (モビリティの共有) です。これらのテーマについてはこれまで多くのことが書かれてきました。そして、刺激的な技術開発が急激に進められています。 
 

  • 自動化や支援のトレンドは、運転者と自動車の間の意思決定と制御のバランスの問題に他なりません。 車載データ可用性と処理能力の向上によって ADAS (先進運転者支援) 機能が可能になります。たとえば、ABS (アンチロック ブレーキ)、衝突警告、車線維持、歩行者検知、自動平行駐車などです。 それ以外の ADAS 機能も絶えず導入され続けています。たとえば、適応型車高制御は、横方向センサによって差し迫った側方衝突の危険を検知して車高を10 cm 以上も引き上げます。車両による支援が増えるということは路上走行中の自動化機能も増えるということです。可能性としては 100 パーセントの支援 (完全自動運転) につながります。

  • 接続のトレンド は、関わりを持ち続けたいという欲求が社会で高まり続けていることと関係があります。 最近の世界的な出来事を考慮すると、私用でもビジネスでも自動車で移動することが増えていくと予想されます。個人空間を管理できる上に快適でもあるからです。 消費者は、インフォテインメント コンテンツ (音楽、映画) のストリーミング、オンライン ショッピング、ナビゲーション、仕事や個人的な用事などが、自分の車の中で直接できることを期待しています。最適な接続のためには自宅やオフィスにいる必要があるという時代は、はるか昔のことになってしまいました。

  • 電化のトレンド とは、推進力の主要な手段が内燃機関から電気モータ (eモータ) に移行するということです。 このトレンドは、化石燃料への依存低減、自動車排気ガスの減少 (あるいは全廃)、エネルギ使用効率の改善を求める声に後押しされています。 各種のセンサや複雑な制御アルゴリズムを組み合わせて使用することで、e モータ性能を最適化、メンテナンス コストの低減、バッテリーの安全な充電、1 回の充電で走行できる距離の最大化を実現します。BEV (バッテリー式電気自動車) の出現によって、走行中、いつどこで自動車を充電すべきかを考える必要性が生じています。この走行距離についての不安は、範囲・位置・ルートの情報を自動的に処理することでそのまま対処できます。最寄りの充電ステーションまで案内できるからです。

  • モビリティの共有のトレンドは、共有トランスポーテーション サービスに対する需要と、車の利用が不便になっても所有コストは低減できるという可能性によって牽引されています。自動車の利便性はそれぞれのユーザーに合わせる必要があります。最終的には、個人の電話、タブレット、パソコン、家庭のテレビを個人向けにカスタマイズできるのと同じように、共有車両も運転者や搭乗者に合った快適なものになるでしょう。 Uber や Lyft のような配達サービスであっても、ZipCar や Turo などのレンタカーのシェアリングであっても、クラウドからのデータと、モビリティ アプリケーション (アプリ) で簡単に利用できることで成立しています。

 

データは ACES の未来につながる燃料です

これら 4 つの ACES メガトレンドの共通点は何か その答えは、いずれも、成功の重要な要因としてデータに大きく依存していることです。 これらのトレンドがその可能性を最大限に活かすには、センサから生成された膨大な情報による決定が 1 秒の何分の 1 かの速度で処理・実行されなければなりません。 これらの決定の中には、重要ではあっても急を要さないものもあります。 最寄りのアイスクリーム店を見つけることは、重要なデータの用途ではあっても安全上重要なタスクではありません (異論はあるかもしれません)。 しかし、進路上の歩行者の検知や自動ブレーキはミリ秒単位で実行されなければなりませんし、失敗は許されません。 時が経つにつれて、どの ACESメガトレンドも今後も増え続けていく情報を利用するようになっていきます。そのため、安全性、信頼性、効率性の点で肝要な成果を出すために、決定に要する時間が短縮されなければなりません。 情報源からのあらゆるデータが意図された送信先まで完全かつ迅速に届けられることは必須です。

 

操縦室

データが未来の燃料なら、データ接続は燃料送出システムです

データ接続は、急速に自動車業界における最も重要な技術的要因になってきています。車載制御ユニットが接続されたことからすべてが始まりました。次に、スマートフォンが車両に接続されました。現在、多くの車はウェブから自律的に情報を集めることができます。理屈でいえば、次のステップは、V2X (Vehicle-to-Everything) 技術を用いた、車両同士の接続と環境と車との接続になります。自動車用途のデータ接続は多面的であり、共有データ ネットワークを通して非常に多くの用途に利用されることになります。 各用途は、通常、異なる 3 つの機能カテゴリ、すなわち、安全性とセキュリティ、便宜、利便性、効率のいずれかに対応します。 自動車のデータ接続は、通常、3 つの物理的なカテゴリで考えられます。すなわち、車両と外の世界、車載、車両と搭乗者です。情報は、どのような物理的データ接続パスからでも生成・収集できますし、どのような機能用途にでも利用することができます。
 

  • 車両と外の世界の接続。トランスポーテーション用のワイヤレス通信は長年にわたって主にラジオ放送を受信する一方的な経路でした。現在では、車両は基本的に高度なモバイル センサとローリング コンピュータ プラットフォームとなっています。自動車と外の世界を結ぶ双方向通信は、安全性、セキュリティ、利便性、効率性のための用途を可能にする機能です。これらはすべて ACES トレンドに対応します。自動車と外の世界をアンテナで接続するこれらのワイヤレス通信経路の例は、次のとおりです。
  • AM/FM/DAB/TV
  • LTE/5G
  • GPS/GNSS
  • V2X
     

V2X とは「vehicle to everything」の短縮形です。この用語は、車両と周囲との通信、すなわち、他の車両 (V2V)、沿道のインフラストラクチャ (V2I)、歩行者 (V2P) などの路上のユーザーや構造物とのやり取りを意味します。車両の内外に広がる情報の利用を進めるこのトレンドには、完全なデータの受信と信頼できる情報源からの情報取得がこれまで以上に必要とされます。
 

  • 車載接続。これまでの 40 年間、車載ネットワークは車両アーキテクチャの一部でした。車両の内部で一般的に使用される有線ネットワークの例は、次のとおりです。
  • CAN
  • LIN
  • Flexray
  • MOST
  • カメラ ビデオ
  • 車載用 Ethernet      

先進運転者支援安全システムに向けての進展と車載自動運転機能の増加によって、車載高速データ伝送レーンと車両の安全性に対する関連性がますます高まってきています。 すなわち、車両コンポーネントの新しい設計特性が必要になるとともに、車両 OEM はアーキテクチャの定義と通信プロトコルの選択において物理チャネル特性の限界を考慮する必要があるということになります。
 

  • 車両と搭乗者の接続 。考慮すべき重要な接続の 1 つは、人間と装置の接続です。運転者への情報の提供、乗客へのエンターテイメントの提供、パーソナル デバイスとのシームレスな統合のいずれにおいても、搭乗者と車両自体との接続が重要になってきています。将来のデジタル コックピットによって、特別にカスタマイズされた利便性を運転者と搭乗者が同じように享受することができます。たとえば、シートとミラーの設定、プレセットされた音楽、ナビゲーションの設定、アドレス帳情報は、車両を代えても運転者に伴って自動的に移動します。搭乗者については、ストリーミング サービス アカウントと wi-fi 設定セッティングが車を代えてもすぐに使えるようになります。車両と搭乗者の接続の例は、次のとおりです。
  •  WLAN
  • Bluetooth
  • USB
  • WiFi
  • ディスプレイ    

 

自動車におけるデータ接続の課題と要件

データ接続仕様と要件の進化は課題です。自動車 OEM とサプライヤは力を合わせてこれらの車両に関する課題に対応しています。

 

  • 車両メーカー間だけではなく 1 台の車両の中でさえも、多くの種類のデータ メッセージング戦略 (機能層) と伝送プロトコル (物理層) があります。ワイヤレス接続 (アンテナ) は、インタフェースの周波数とプロトコルによって多くの種類があります。有線接続には、差動ツイストペア、同軸、シールド、非シールドなどがあります。 光ファイバさえも利用されます。

  • 接続は高速でなければなりません。 車載通信アーキテクチャは、 1 秒間に最大 12 GB の速度に迫ろうとしています。ACES を重視した用途では、重要な意思決定に必要な演算速度が絶えず増え続けることで、高帯域、大容量、低レイテンシ通信チャネル
    が求められ続けています。
  • 通信には堅牢性と高信頼性が必要です。 全電気式高電流環境であっても、データ通信は完全でなければなりません。データ リンクは厳しい電磁障害適合性 (EMC) 要件を満たす必要があります。それによって、予期しない不要な放射や電磁場の影響を確実に防止できます。車載通信チャネルは極端な温度や振動にさらされがちです。

  • 接続は小型で、通信アーキテクチャに適合しなければなりません。 自動車メーカーやシステム サプライヤの推進する小型軽量化のアプローチをサポートする必要があります。エレクトロニクスが小型化と高性能化を続ける中で、コネクタがそのパッケージ サイズに影響を与えるわけにはいきません。分散アーキテクチャ アプローチであっても集中アーキテクチャであっても、接続ソリューションはそのアプローチに対応できなければなりません。 高速コンピューティング クラスタを組み込んでセンサ融合に基づく用途向けの信号処理をサポートする新しいアーキテクチャでは、車載データ通信に対する要求が厳しさを増しています。

 

選ばれたサプライヤとしての TE Connectivity

TE Connectivity は、システムの知識が豊富なデータ接続コンポーネント サプライヤです。エレクトロニクスアーキテクチャと物理的統合に関する専門知識を有しています。したがって、お客様の専門用語を理解することができます。 当社はお客様と連携し、統合された最適なコンポーネント ソリューションによってお客様のシステムを最適化するアプリケーション サポートを提供しています。お客様が新しい改良された自動車アーキテクチャを開発する際には、当社も協力し、拡張性のあるサブシステムとコンポーネントの最適な設計を提供します。TE は、情報がデジタル化される時点から受信される時点まで、お客様と連携してお客様のデータ接続要件を満たすカスタム ソリューションを開発・実現します。幅広い製品ラインナップ、技術設計の専門知識とノウハウ、製造およびアプリケーション ツーリングの能力、そして Power of TE、すなわち当社のエンジニア、科学者、全世界の拠点が関わる業界や市場の深さと奥行きを活用することで、お客様をサポートします。
 

  • 製品ラインナップ。 接続ソリューションのグローバル リーダーとして、当社はお客様や他の業界テクノロジーリーダーと協力し合い、データが燃料となる未来の自動車の物理面およびワイヤレス接続の課題に対処できるソリューションを作成しています。強力なデータ接続ソリューションの幅広い製品ラインナップは、あらゆる主要媒体 (差動、同軸、光ファイバ) と伝送の技術に基づき、自動車における、車両と外の世界、車載、車両と搭乗者の接続について、その高まり続ける性能の需要を満たす高速データ インターコネクション製品を提供します。
     

当社は、リンク要件に基づいたチャネル性能を計算するコンポーネントのシミュレーション モデルを提供しています。同時に、従来のアーキテクチャと次世代アーキテクチャの両方に最適なかたちで統合できる小型のモジュール設計をサポートしています。たとえば、TEの MATE-AX (小型同軸コネクタ システム)は、PCB 上のコネクタ フットプリントを従来の FAKRA コンポーネントよりも最大で 75% 縮小し、より高い帯域幅を提供します。TE の MATEnet (小型自動車イーサネット コネクタ システム) は、より複雑な高速データ ネットワーキング アーキテクチャの既存の ECU インタフェースにシームレスに統合できる物理リンク技術に対する効率的な配線ソリューションの需要に対応します。また、当社のアンテナ製品ラインナップとワイヤレス接続技術は、放送、セルラ、および次世代テレマティックスおよび V2X サービス向けの外部通信ソリューションを提供しています。ここでは、アンテナとトランシーバーを組み合わせて複雑さの緩和、スペースの節約、性能の向上を実現する統合化ソリューションも開発しています。
 

当社の製品ラインナップは、複数のチップ メーカー物理層仕様に添った高チャネル性能を実現します。これには、複数ギガビット イーサネット コネクタ用の新しいソリューションも含まれています。それらは、最大 10 Gbps、他のプロトコルでは 20 Gbps を超える速度をサポートし、次世代の安全性および自動運転用途の需要に対応します。さらに、TE のデータ接続製品は過酷な自動車環境の要件を満たすように特別に設計されていています。LV214 や USCAR などの規格に準拠し、環境に関する最も厳しい各要件も満たします。One-Pair Ethernet (OPEN) Alliance Technical Committee などの伝送特性と電磁障害適合性の最も厳しい仕様に対しても試験が行われています。
 

  • 技術設計の専門知識とノウハウ。エンジニア、接触物理学者、材料科学者による TE Connectivity のチームはお客様と密接に協力し、75 年以上の物理的接続システムの専門技術を活かして増大を続ける接続要件や課題に最適化されたソリューションを開発しています。世界中に用意された設計センタによって、お客様の近くであらゆるシミュレーション、モデリング、プロトタイピング、試験を行うことができます。その他の技術能力は、次のとおりです。RF 設計および EMC の専門知識、小型の堅牢な実装を可能にする小さく柔軟性に優れた相互接続技術の設計・製造・アプリケーション ツーリングの専門知識、シームレスなエレクトロニクス統合、最適な信号送受信を実現するカスタム アンテナ システム、車載データ伝送用の堅牢なコネクタ インタフェース、コンポーネント制限仕様と完全リンク性能を含む PHY-to-PHY チャネル分析。

  • 対象となる産業分野とグローバル展開の深さと奥行き。TE Connectivity は、民生機器、航空宇宙および防御、産業、アプライアンス、トランスポーテーションなどを含む多様な業界と市場を代表する非常に幅広いお客様に応対しています。 当社全体のつながりを深めることで、自動車に特化した当社のエンジニアが世界中の仲間に知識と経験を利用して自動車業界の課題を解決することができます。 当社は、さまざまな規格委員会や産業コンソーシアムに参加しており、プロセスの初期に問題解決を行うことができます。研究開発に幅広く先行投資し、業界の困難な課題をお客様に影響が出る前に解決できるような協働を模索しています。

  • 製造とアプリケーション ツーリング。当社は、社内にアプリケーション ツーリング事業部門のある接続ソリューションの世界的なメーカーとして、全世界的な製品製造プロセスを利用するだけではなく、製品の設計をお客様の具体的な製造方法や慣習に確実に合わせます。進化を続けるお客様の運用環境の要件に合わせて設計を最適化する工具と機器を備えています。サプライ チェーン全体と連携し、チップ メーカーからモジュール メーカーやシステム サプライヤまで、データの完全性と信号品質で最適なシステムレベルの性能を実現します。特定の用途や需要に対する適切なデータ接続ソリューションを提供します。

 

参考文献

  1. V2X – 協調インテリジェント交通システム (C-ITS) における重要な構成要素, Thomas Adam, Swen Kopp, Steffen Lang, Andreas Winkelmann, TE Connectivity のホワイト ペーパー,
  2. コネクテッド カーおよび電化車両における電磁両立性, Jens Wulfing, TE Connectivity のホワイト ペーパー,
  3. 次世代車載データ ネットワーク向けの堅牢なコネクティビティ ソリューション, Christian Rusch, Bert Bergner, TE Connectivity のホワイト ペーパー
  4. ACES: 自動車モビリティの未来を作る, 2020 年 2 月 17 日  —  視点 (https://www.arm.com/blogs/blueprint/viewpoints), By Chet Babla, VP Automotive, Arm
  5. トランスポーテーションにとっての ACES モビリティの意味, By Hilary Davidson (https://www.act-news.com/author/hilary-davidson/), 2019 年 5 月 30 日, Advanced Clean Tech News
  6. モビリティと自動運転車両の未来のための重要な頭字語としての ACES についての花火, Dr. Lance B. Eliot, https://www.forbes.com/sites/lanceeliot/2019/07/04/fireworks-about-aces-as-key-acronym-for-the-future-of-mobility-and-self-driving-cars/#1cb789c654ec
  7. モビリティの自律型の未来, Kersten Heineke and Philipp Kampshoff, McKinsey & Company

接続: 新しいモビリティ エコシステムを加速する, Michele Bertoncello, Gianluca Camplone, and Asad Husain, McKinsey & Company


8.ライドシェアリングと都市の大変動, Troy Baltic, Russell Hensley, and Jeff Salazar, McKinsey & Company