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小型ロード セルの設計最適化による性能向上

荷重センシングにおける高性能化とコンパクトな設計のニーズについて、詳細をご覧ください。

自動化は私たちの日常的な機能に欠かせないものとなりました。このトレンドは、センサの処理要件をより一層拡大するだけでなく、高性能化やさらなる小型化、量産性を最大限に高める設計も要求します。

荷重センシング

力という要素は、プロセス制御やプロセス監視において最も基本的な関心パラメータの 1 つです。荷重センサ (ロード セルとも呼ばれます) は、力を電気信号に変換して mV、増幅、またはデジタル形式で出力します。

荷重センサは広く普及しており、次のようなさまざまな用途に使用されています。

  • 点滴ポンプでは、2 つの荷重センサが薬液の圧力によって生じる力を検出し、差動信号を薬液の流量に関連付けます。 
  • インスリン ポンプ内の荷重センサは、薬液の圧力によって生じる力を検知することで閉塞を検出し、差動信号を薬液の流量に関連付けます。 
  • 産業用ロボットや医療用ロボットでは、接続部のトルクや工具にかかる力を精密に制御するために多くのロード セルが使用されています。
  • ロード セルは、病院のベッドで患者の体重を計測するためにも使用されています。 
  • 整形外科機器では、トルクや力を監視するためにドリルなどの器具内でロード セルが利用されています。 
  • エクササイズ バイクなどのスポーツ機器では、パワー測定のためにロード セルがスピンドルに組み込まれています。 
  • 電子レンジのような家電製品では、さまざまな調理機能のタイミング制御にロード セルが使用されています。 
  整形外科用ドリルの画像
整形外科用ドリル
    エクササイズ バイクの画像
エクササイズ バイク
 透析装置の画像
透析装置
インスリン ポンプ
産業用および医療用ロボット
病院のベッド

ロード セルの最も基本的な特性は、感度、安定性、再現性、精度です。さらに、不慮の落下や想定外の圧力など、通常の使用や取り扱い中に生じる大きな過負荷に損傷せずに耐えられることも重要です。センサの精度、安定性、再現性のみが支配的要因である計測用途を除き、OEM や消費者市場におけるほとんどの用途では、ロード セルが持つ機能と生産コストのバランスを取ることと、生産量を量産閾値まで拡大できることが求められます。 

荷重センシング

図 1 に示す TE Connectivity (TE) の FX29 ボタン型圧縮ロード セルは、非常にコンパクトなサイズに高性能と優れた価値を兼ね備えた良い例です。中核的なセンシング素子は、微細加工された半導体シリコンピエゾ抵抗ゲージです。各ロード セルには、図 2 に示すように 4 つの MEMS ダイが効果的に配置されています。これらのゲージは、熱的および電気的動作特性を厳密に一致させるために対を成しており、2 つのゲージの脚を張力、残り 2 つのゲージの脚を圧縮力とするホイートストン ブリッジを形成しています。ゲージが接着されている基材は、力やトルクなどの刺激に応じて変形します。このブリッジにより、FX29 のケースにかけられた力に正比例する差動出力電圧が生成されます。

図 1. FX29 ロード セル
(直径 19.7 mm、高さ 5.5 mm)
図 2. ゲージ型 FX29 センサ

多くのメーカーが採用している箔ひずみゲージ (BFSG) と比較して、半導体ゲージは感度が 75 倍高いため、耐荷重構造をより頑強にすることができ、ひずみレベルが小さくなります。それでも、生成される出力は BFSG の 10 倍です。

 

このような頑強な構造を持つ FX29 ロード セルでは (ひずみ量の代表値は、図 3 のシミュレーションに示すように 0.02 mm 以下)、反復的な荷重による疲労破壊が起こることはほとんどありません。この高い構造剛性により、衝撃や振動の力に耐える堅牢性も強化されます。FX29 の過負荷性能の代表値は公称力範囲の 2.5 倍であり、それに対して BSFG センサは 1.5 倍です。設計や生産のその他の要素は、FX29 ロード セルが最適に機能するよう設計されていることを裏付けています。 

 

MEMS ゲージ (図 4) は、「Microfused 技術」と呼ばれる高温プロセスでガラス (無機材質) によってステンレス基材に接着されています。BFSG で通常見られる有機的な接着材 (これはセンサのドリフトを徐々に進行させる破壊的な原因でもあります) は一切使われていません。さらに、Microfused プロセスは機械的部品の残留応力を軽減するため、長期安定性も確保されます。  

 

図 3. FX29 のフルスケールひずみ (代表値)
図 4. Microfused ゲージ

Microfused 製造プロセスは既に、数百万規模の大量生産に対応できるように細かく調整されています。その証拠に、自動車用 ABS (アンチロック ブレーキ システム) センサのほとんどはこの技術を使用して製造されています。したがって、その堅牢性と価格対性能比は誰の目にも明らかです。

 

FX29 ロード セルのボディは、金属射出成形とプレス加工で作られた 2 ピース構造で、低コストで大量生産できるように設計されています。また、FX29 のもう 1 つの特長は、ワンサイズですべてに適合する出力形式です (図 5)。標準で mV/V、増幅電圧、デジタル I2C のすべての出力形式が 1 つの小型パッケージに収められており、アドオンや外部の電子モジュールは必要ありません。 

 

図 5. 出力図

まとめ

要するに、コンパクトな FX29 ロード セルは堅牢性の水準を引き上げ、卓越した価格対性能比をもたらします。これは実証済みの量産技術によって実現されており、さまざまな荷重センシング用途に幅広く適しています。

著者について

Hai Mei はボストン地域を拠点とし、現在は TE Connectivity のセンサ ソリューション部門で

シニア アプリケーション エンジニアリング マネージャを務めています。Hai は計測機器業界で 30 年の経験を持ち、製品設計、

アプリケーション エンジニアリング、戦略的ソーシング、サプライヤ開発などの

さまざまな職務に就いてきました。米国特許を 7 件保有し、これまでに数多くの圧力・荷重センシング製品を

開発しています。Hai はロードアイランド大学で機械工学の修士号を取得し、

上海交通大学でエンジニアリング メカニクスの学士号を取得しています。

Microfused は商標です。