コネクテッド スマート カーのイラスト

安全性向上から自律化へ:
データ コネクティビティが支える車両の進化

著者:Davy Brown
トランスポーテーション ソリューションズ
VP 兼 CTO

自動車技術は急速に進化しており、自動運転車の可能性が盛んに取り上げられています。一方で、大きな注目を集めることは少ないものの、自動車の安全性を着実に高めている技術があります。 自動運転車を支えるデータ コネクティビティ(データ通信技術)は、すでにオンハイウェイおよびオフハイウェイの両方で、自動車の運用をより安全なものにしています。  

 

より安全な運用を実現する鍵は、拡大し続けるセンサ群から大量の高品質データを収集し、そのデータを迅速かつ正確に解釈し、必要な場所へ車両全体にわたって情報を分配する能力にあります。より優れたセンシングと処理能力により、車両周辺環境をより正確に把握できます。その情報により、人間のドライバーとコンピュータの双方が、リアルタイムで判断しやすくなります。

センサ + 高速データ コネクティビティ + 高度な情報処理 = より安全な運用

自動運転車への移行は、乗用車よりもオフハイウェイ用途で急速に進んでいます。 鉱山や農業などの用途では、他車両との接触リスクが比較的低く、自律化に適した環境といえます。さらに、オフハイウェイ重機に追加搭載されたセンサにより、オペレータ単独では得られない情報を把握できるようになります。こうした環境では、一般道路のように他車両との複雑な相互作用を考慮する必要もほとんどありません。

 

すべてのセンサ データを車両全体へ伝送する車両データ ネットワークが進化し、AI搭載部品がそのデータをより適切に解釈して対応できるようになったことで、運用環境の安全性は大きく向上しています。場合によっては、人間のオペレータが危険な環境に立ち入ること自体がリスクとなることもあります。たとえば、鉱山のような過酷な作業環境では、オペレータが現場で運転するよりも、車両を自律運用した方が安全な場合があります。

 

交通量の多い高速道路のように、より複雑でリスクの高い環境では、完全自律運転の実現にはなお時間がかかると考えられます。しかし、ドライバーや乗員はすでに、センサ技術の進化や、車両全体でより多くのデータをより迅速に伝送・処理する能力の向上による恩恵を受けています。人が運転する場合でも、レーンキープアシスト、自動ブレーキ、アダプティブ クルーズ コントロールといった機能の進歩により、自動車はこれまで以上に安全で快適な移動手段となっています。 

車載センサ技術

より高速なデータ通信に対応する車両設計

半自律型の安全機能を支えるセンサ群と膨大なデータを活用するには、情報をリアルタイムで伝送・処理できる車両アーキテクチャが必要です。 大量のデータを高速に処理することは、自動車業界にとってまったく新しい課題ではありません。自動車業界では、データ センターや製造現場など他分野で培われた、より高度なネットワーク構成を取り入れることで対応を進めています。

 

従来の集中型CANは、機能を車両全体に分散配置できるゾーン アーキテクチャへと移行しつつあります。このアプローチにより、高速データをゾーン、センサ、アクチュエータ、およびデータ処理を担う車載コンピュータ間で直接伝送できるようになります。

 

車両アーキテクチャ内でデータを伝送するには、熱、振動、湿気、および電磁干渉に耐えられる部品が必要です。また、自動車メーカーは、サイズ、重量、およびコストに関する厳しい設計制約の中で開発を行っています。そのため、部品メーカー各社は、組み立てやすい形状でありながら、高い耐久性と信頼性を備えた製品の開発を進めています。

 

TE は、車両内の限られたスペースのなかでデータ コネクティビティを実現するため、次の2つの ソリューションを提供しています。  

  • MATE-AX 小型同軸コネクタ システムのように部品を小型化しながらも 9 GHz RF 性能を実現
  • NET-AX+ モジュラー ハイブリッド データ コネクタのように複数の部品を 1 つのハイブリッド ソリューションに統合し、1 つのアセンブリで同軸データ コネクティビティに加え、信号および電源接続にも対応

より多くのデータ伝送と処理が運転体験を変える

データは、自動車の安全性や自律性を高めるだけでなく、所有や運用の体験そのものも変えつつあります。 たとえば、特に電気自動車では、オイル交換のような定期的な整備が不要になるため、メンテナンスへの考え方も変化しています。

 

リモート診断の活用により、不要なダウンタイムが発生する前にドライバーやオペレータへ問題を通知できるようになりました。その結果、定期的な点検に頼るのではなく、車両の状態に応じた予防保全が可能になります。言い換えれば、メンテナンスは定期的・日常的なものから、予測的・予防的なものへと移行しつつあります。

 

また、多くの車両システムがソフトウェアによって制御されるようになるになったことで、無線アップデート(OTA)による機能改善や性能向上も可能になっています。スマートフォンによる車両制御や音声コマンドは、ドライバーや乗員の車両とのかかわり方を変えつつあります。さらに、複数のスピーカーを通じて高品質なオーディオを提供するインフォテインメント システムも、運転や乗車の体験向上に貢献しています。

 

データを中心とした新しい車両アーキテクチャは、今後も自動車メーカーに新たな価値創出の可能性をもたらしていくでしょう。

安全性向上が自律化への進化を支え続ける

メーカー各社は、車両の安全性をさらに高めるとともに、新たな機能を実現するため、データ伝送の速度と信頼性の向上に取り組み続けています。 近年の車載ネットワークの変化と高性能センサの普及により、新しい機能は車両開発のたびに、より迅速に導入されるようになっています。

 

ソフトウェアの高度化と機能拡張が進む一方で、ネットワーク ノードを中心とした車載ネットワークの基本構造が大きく変わる可能性は低いと考えられます。今後は、それぞれのノードの処理能力を高めるとともに、増え続けるデータに対応するため、より高性能なコンピューティング能力が求められるようになるでしょう。

 

たとえば、Vehicle-to-Everything(V2X)技術は、車両と周辺のさまざまな機器やインフラとの連携を可能にします。現在はまだ発展途上の段階にありますが、必要なデータをリアルタイムでやり取りできる環境が整いつつあることで、その活用範囲は今後さらに広がると考えられます。複数の車両をリアルタイムで管理し、ルート効率や燃料消費、配送時間の最適化を図るような運用も、その一例です。ソフトウェア定義型車両(SDV)もすでに市場に登場しており、今後ますます普及していくと見込まれています。

 

同時に、安全性向上の取り組みも続いています。近い将来には、まばたきの頻度やステアリング操作、加速、ブレーキ操作の変化を分析し、オペレータの覚醒状況を監視する技術によって、道路、農場、鉱山、作業現場などで、より多くの人と車両の安全を守れるようになるかもしれません。

 

こうした技術の進化は、自動運転車の実現に向けた重要な土台となります。将来的には、人間のドライバーによる操作を必要としないレベルまで安全機能が高度化し、自動運転車が社会に広く受け入れられる時代へとつながっていくでしょう。

著者について

Davy Brown

Davy Brown は、TE の トランスポーテーション ソリューションズ セグメントにおいて副社長兼最高技術責任者を務めています。 この役職において、オートモーティブ、ICT(建機農機、トラック、2 輪)、および Sensors の各部門における、グローバル エンジニアリング、製品研究、イノベーションの戦略的方向性を担当しています。これまでのキャリアを通じて、半導体、ソフトウェア、民生機器、および通信業界にわたるさまざまな技術企業で、上級技術リーダーおよびエグゼクティブ職を歴任してきました。