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過酷な環境におけるデータ接続

高速でのデータ伝送を確実に行うため、OEM 設計者は設計の初期段階から、コンポーネントやその配置、環境条件による影響について、より慎重に吟味する必要に迫られています。

著者

Christian Manko (TE Connectivity の Data Connectivity Product Manager)

「Truck & Off-Highway Engineering (TOHE)」誌掲載記事より

技術の進歩により、産業・商用車両におけるコネクティビティも新たなレベルへと移行しています。

顧客は、運転時に必要なタスクを自動化/拡充させることを通じて、ドライバーの生産性と安全性を向上させ、結果的に総所有コストの低減をもたらしてくれるような機能を求めています。自動ブレーキ・ステアリング機能やオンボード診断のほか、車両対車両 (V2V) 通信、車両対インフラストラクチャ (V2I) 通信、そしてドライバーに 360° の視界を提供するカメラなどの機能は、顧客の基本的な要件になりつつあります。

 

これらの機能を実現するには、大量のデータを高速で伝送する必要があります。エンジニアは、このような顧客の要件に応えられるような新型モデルを設計するため、トラックやオフハイウェイ車の業界においては、過酷な環境下でいかに信号の完全性やデータ伝送を確保するかが大きな問題になります。

複合アーキテクチャへの Ethernet 導入

データ需要の増加と高速接続に対処するには、高度なネットワーク インフラが必要になります。通常、最高速度 500 kbps に対応可能な CAN バス アーキテクチャは、

過酷な環境下での使用に耐える車両の通信ネットワークの確固たるバックボーンとして、過去数十年にわたって利用されてきました。ただし、安全性や生産性の向上を目的とした、高度な車両機能や自動化機能において必要とされるデータ帯域幅は、CAN 単独で処理するには大きすぎます。

 

シングルペア Ethernet プロトコル (100 Mbps の 100BASE-T1、または 1 Gbps の 1000BASE-T1) ならば、高速でのデータ伝送にも対応できます。Ethernet ネットワークとコネクタを利用することで、OEM 設計者はより多くのデバイスをネットワーク上にシームレスに統合し、車両におけるデータ接続の高速化を実現できます。その一方で、Ethernet はポイント ツー ポイント (P2P) トポロジによって構成されるため、車内の電気・電子 (E/E) アーキテクチャも変更を余儀なくされます。OEM 業者が機能やデバイスの追加を決定した場合、設計者は、信号の伝送経路を指定する Ethernet スイッチや、

Ethernet と CAN 間の通信にゲートウェイを使用することも検討せざるを得ないでしょう。

 

過酷な条件下においてスペースや重量、性能を最適化するにあたって、設計者は設計の最初の段階で、高度な機能への対応が必要な箇所にどのような形で Ethernet を組み込むか、吟味しなくてはなりません。Ethernet を必要とする機能それぞれについて、車内にはケーブルを何本、どこに配置するのか、Ethernet スイッチはどこに配置するのか、既存の電気制御ユニット (ECU) 内と、新しい専用の ECU 内のどちらにスイッチを設けるのか、といった判断が必須になるわけです。電磁干渉 (EMI) や、その他の機械的障害に関する問題を回避する、または少なくとも低減させるためにも、こうした対応は極めて重要です。

 

 

走行中のバス

たとえば、過酷な環境下での使用に耐える車両に搭載された 360° カメラは、車外から車内のディスプレイへと高速データ伝送を行って、運転手が周囲の状況を確認できるようにします。(車両の四方に 1 台ずつ設置された) 4 台のカメラは、ECU に信号を送ります。設計者は、4 台のカメラから送られるデータを組み合わせて 1 つの信号として ECU に送信できるよう、スイッチの配置位置を検討する必要があります。スイッチは、車内またはカメラのうち 1 台に配置することができ、他の 3 台のカメラからのデータ入力とデータ送出のため、通常はポートを 4 つ備えています。もう 1 つ、

ビデオ表示モニタにスイッチを組み込む、という方法もあります。

 

自動ブレーキ機能や先進運転者支援システム (ADAS) など、多数のセンサを使用するアクティブ型の自動化機能を搭載するには、設計の初期段階から十分な検討が必要になります。センサはそれぞれ、専用の通信リンクで ECU に接続されます。車載センサの数が増えればその分、ケーブルと通信リンクの数も増えることになります。将来登場する自律走行型ヘビー デューティー車両では、レーダー約 16 基、ライダ約 10 基、カメラ約 10 台といった具合に、車両全体でかなりの数のセンサが必要になるでしょう。その場合、ケーブルとリンクの数は 30 を超えることになります。シャーシ内外における信号の完全性を維持するため、また、リンクを 1 つの ECU に集約させるためには、接続スペース上の制約、重量、EMI などの影響を考慮した上で、EMI 耐性を備えた、すっきりとした取り回しにすることが

求められます。データ量が増えるということは、より広い帯域幅が必要になる、つまりは高速にも対応可能なコネクタとケーブルが必要になる、ということでもあります。

 

 

過酷な条件で走行するトラック

産業用車両や商用車両など大型車両の場合、信号の完全性を維持しながらデータを確実に伝送することが、通常車両よりも難しくなります。車両内での Ethernet 信号伝送に関して、Ethernet 規格では最大 15 m (49 フィート) までという技術的要件が定められています。ところが、トラック、バス、オフハイウェイ車の場合、この規定を上回る最大 40 m (131 フィート) の長さでも信号の完全性を維持できなくてはなりません。さらには、強い振動や極端な高温低温、衝撃、大量のちり

などにも耐える必要があります。

 

現在の Ethernet 規格では、セグメント長さが 40 m になる場合、インライン接続を最大 4 つにするよう規定しています。

設計者は、最適な信号の完全性を維持するには各セグメントの長さをどの程度に抑えるべきか、吟味する必要があります。信号の完全性に影響を及ぼす要因としては、車外環境への露出や高温への暴露、アンテナや EMI の原因となりうるコンポーネント付近への配置などが挙げられます。ケーブルの取り回しが設計上の重要な要素となるほか、物理層全体も、想定した性能に見合ったものにしなければなりません。

 

 

正しいコンポーネントを選択する

TE Connectivity のデータ コネクティビティ担当 Engineering Manager、Abbas Alwishah の説明によれば、「CAN と Ethernet による複合アーキテクチャを設計する場合、エンジニアは大量のデータを扱う高度な機能を搭載するにあたって、機能に応じた形で接続インフラ全体にも配慮するよう求められます。技術が進歩するにつれて、OEM とサプライヤとの連携も重要性を増しています。顧客が高精細カメラを求めている、

あるいは、超低レイテンシで動作する近接検知システムを求めていると伝えてきた場合、その機能やシステムに必要なコンポーネント 1 つ 1 つについて説明します。センサ、コネクタ、ケーブル アセンブリ製品、アンテナ、プロセッサ、ディスプレイなどですね。そして、性能、スペース、重量、コストといった項目を

最適化するためのトポロジを提案しています」。

 

過酷な条件に耐えられる Ethernet 互換コンポーネントを選択することは、過酷な環境下での使用に耐える使用寿命の長い車両において、信頼性の高いデータ伝送を実現するには必要不可欠です。(元来は乗用車向けに設計された) 車載用 Ethernet コネクタは、車室内など、頑丈なコネクタや長めのケーブルが不要で、極端な衝撃、高温/低温、その他の物理的障害にさらされることのない場所であれば使用できます。高品質の非シールド ツイストペア ケーブルは、車両内のほとんどの場所で Ethernet への使用に適しています。シールド ツイストペア ケーブルは、必要な箇所にだけ使用すれば済みます。設計者の選択は、コスト管理や省スペース、軽量化にも

影響を及ぼします。

 

たとえば、車載 Ethernet 向けに TE が開発した、拡張可能なモジュール式の MATEnet コネクタは、ヘビー デューティ車両でも、オンボード診断 (V2X technologies) やテレマティクス、ダッシュボード インフォテインメント、先進運転者支援システム (ADAS) など、データ量が中程度以上でかつ低レイテンシが求められる用途に使用できます。同コネクタは、100 Mbps ~ 1 Gbps (IEEE 100BASE-T1/1000BASE-T1 に準拠) でのデータ伝送が可能で、非シールド/

シールド ツイストペア ケーブルの両方に対応しています。

 

シャーシ搭載コンポーネントには、堅牢性以上の性能が求められます。機械的な信頼性を備え、保守性に優れ、極端な高温/低温に耐え、より長いチャネルでも効率的に動作することが、まずは大前提となります。高周波数においては、ケーブル/コネクタの品質と設計がチャネルの性能を大きく左右し、システム全体の性能、さらにはアプリケーションの性能にも大きな影響を及ぼします。特に、シャーシ搭載コンポーネントに関して言うなら、過酷な環境でも高速データ伝送を実現するよう設計された、ケーブルとコネクタを選択する必要があります。

 

TE のデータ コネクティビティ担当 Product Manager である Mark Brubaker は、こう述べています。「機械的な障害耐性を求めるニーズに応えようとして、本能的に、より大型で堅牢なハウジングの追加を考えるエンジニアがいるかもしれません。ところが、壁を厚くすれば電気性能に悪影響を及ぼすおそれがあります。過去の事例に目配りすることも確かに重要ですが、高速でのデータ伝送や、より高い周波数における接続性能のテストといった、新世代の電気的ニーズについて理解するため、さらに先へ踏み出すこともまた重要です」。

 

高速データ伝送が不可欠となる高度な自動化機能を設計するならば、製品の選択と配置の問題を後回しにするわけにはいきません。ヘビー デューティ車両のアーキテクチャに Ethernet を追加する場合、設計者はこれまで以上に早い段階から、複雑な問題について深く考え、計画を立てなくてはなりません。そのようにして初めて、信頼性と機械的な障害耐性を巧みに両立させ、高速データ伝送とチャネルの長さに不可欠な電気的要件、さらには保守性に関するニーズを満たすことが可能になります。

 

過酷な環境におけるデータ接続
過酷な環境におけるデータ接続
将来登場する自律走行型ヘビー デューティー車両では、レーダー約 16 基、ライダ約 10 基、カメラ約 10 台といった具合に、かなりの数のセンサが必要になるでしょう。これはつまり、30 を超えるケーブルとリンクを、EMI 耐性を備え、すっきりと取り回しできるものにする、ということを意味します。