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車両アーキテクチャについて議論する自動車エンジニア。
車両アーキテクチャについて議論する自動車エンジニア。
今日、部品は他の電子機器と同様に、標準化されたネットワークを介して接続されることが多くなっています。より均質なバスベースのアーキテクチャの台頭は、部品エンジニアに課題と機会の両方をもたらします。

電化への急速なシフトや自動車システムの複雑化など、スマート車両技術の進歩は、自動車業界に大きな進化をもたらしています。 このインタビューでは、TE の Lamar F. Ricks(信頼性および試験担当ディレクター、前輸送用センサ担当最高技術責任者(CTO))が、エンジニアがセンサを新しい車両アーキテクチャに統合する方法について説明します。 

 

電気自動車市場の成熟が進むにつれ、部品メーカーに求められるシステム要件はより標準化されていくでしょう。しかし今日、エンジニアは市場の動向を予測し、メーカーが何ができるかを見出すための幅広いソリューションを開発する必要があります。そのプロセスには、材料と製造能力への深い理解が必要です。実用的なソリューションは、高温や振動に耐える堅牢性が必要であり、車両の他のシステムとシームレスに統合する必要があります。

 

車両アーキテクチャの進化で考慮すべきもうひとつの懸念事項は、ゾーン型アーキテクチャとドメイン集中型アーキテクチャの比較にあります。さらに、コスト削減、信頼性の向上、サイバーセキュリティの強化など、ゾーン型アーキテクチャの使用における課題と利点についても注目すべきです。ソフトウェア定義型車両の将来に関する洞察、例えばソフトウェア開発が車両設計の中心となりつつあることは、ハードウェア中心のシステムからソフトウェア中心のシステムへのシフトを促進しています。

CTO へのインタビュー:車両アーキテクチャの変革
スマート車両技術のための高度な接続がもたらす変革的な影響についての洞察。
CTO へのインタビュー:車両アーキテクチャの変革
スマート車両技術のための高度な接続がもたらす変革的な影響についての洞察。

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スマート車両技術の進歩は、車両アーキテクチャ設計をどのように変えたのでしょうか?

現在、さまざまな動向が見られます。この動向は、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインに関連しており、まさに電化についてのものです。都市化、持続可能性や環境への配慮に対するプレッシャーなど、さまざまな力学が世界中の政府に働きかけ、多様な法律や新しい規制が制定されました。これらすべてが、電化を推進する OEM に利益をもたらしています。さらに、さまざまな税制優遇措置が、電化への消費の意欲を高めています。変化は非常に早く起こっています。

 

車両アーキテクチャは、ゾーン型アプローチと呼ばれるものに移行しつつあります。ゾーン型アプローチでは、電気および電子ベースのプラットフォームが標準化されています。このような電子システムの標準化とモジュール化は、EV の成功に最も重要です。それは、さまざまなメリットを約束します。コストと重量の削減、サブシステムと部品の互換性の容易さ、そしてそれらの車両により高度な機能を搭載することを約束します。このような高電圧推進システムのイノベーションの速さは、車両にさまざまなアーキテクチャをもたらす原動力となっています。低電圧の電気および電子システムとそのアーキテクチャ、およびそれに関連するさまざまなプラットフォームを完全に根本から見直し、再設計する流れを加速させています。すでにレガシー分散型アーキテクチャからドメイン集中型アーキテクチャに移行した車両プログラムもあり、現時点でそうしたドメイン型アーキテクチャは、将来の EV に最適化されたゾーン型アーキテクチャへのさらなる変革が必要となります。これには、車両への電力供給と自動運転機能を可能にする複雑な高電圧システムも含まれます。

 

古いシステムはレガシー分散型アーキテクチャでした。これらは、ドメイン集中型アーキテクチャに移行しました。将来的には、ゾーン型アーキテクチャに移行するでしょう。 すでにゾーン型アーキテクチャを活用している車両は全体の数パーセントであり、業界をリードしています。しかし、10 年も経たないうちに、OEM の約 40 %がゾーン型アーキテクチャを採用するようになると推定されています。この流れは、競合他社が追随し、これらの変化に迅速に対応するよう促しています。今日、電化車両の OEM は、安全性や快適性、およびインフォテインメントなどの機能を向上させるためだけでなく、電化の加速や ADAS 機能を実現するためにも、ソフトウェアを活用しています。将来的には、車両の機能性およびそれに関連するすべてのソフトウェアは、それが動作するハードウェアから独立して開発され、車両のライフ サイクル全体を通じて更新されるようになるでしょう。こうして、ソフトウェア定義型車両(SDV)と呼ばれるものが生まれました。当社は、ADAS と機能性の向上に向けたこの流れに沿って取り組んでいます。最近発表したプラットフォームのひとつに、高分解能ホイール スピード センサがあります。このホイール スピード センサは、レガシー ホイール スピード センサの 4 倍を超える分解能を有しています。この高い分解能により、ホイールの動きをより細かく制御することができ、自動駐車や渋滞時の操縦支援など、さまざまな機能の自動化が可能になります。これは、車両の機能性をまったく新しいレベルに押し上げるものです。

 

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なぜゾーン型アーキテクチャとドメイン集中型アーキテクチャなのですか?

ドメイン型アーキテクチャは、システムを論理的に整理することができ、クラウド接続に非常に適しています。例えば、インフォテインメント、ADAS、テレマティクス、ゲートウェイ システムはすべてグループ化されており、それぞれに電子制御ユニット(ECU)があります。しかし、このアーキテクチャでは、車両内の配線や接続の量が増えます。その結果、車両重量が増え、コストも上がります。OEM は、新しいセンサや電子機器、さらにはそれらすべてを制御する ECU を追加することで、この種のアーキテクチャに簡単に新機能を導入することができます。一方で、全体的なシステムの中で相互接続されつつある ECU の数は膨大であり、コストがかかります。また、外部からの潜在的なデジタル アクセス ポイントが複数あるため、サイバー攻撃の脅威にもさらされます。その結果、現在かなり主流となっているこれらのドメイン集中型アーキテクチャは、結局のところ、車両の電気システムを構成する最も効率的な方法ではありません。従って、システムのコア アーキテクチャと配電システムの見直しは必須であり、このゾーン型アーキテクチャの大量導入につながっています。そして、このゾーン型アーキテクチャにより、システムは論理的かつ物理的に、効率的に組織化されたゾーンにグループ化されます。また各ゾーンでは、すべてのシステムが同一プロセッサによって管理されています。これらは独自の配電ユニットを持っています。これらはすべてゲートウェイを介してイーサネットに接続され、最終的には中央車両コンピュータに接続されます。そうすることで、わずか数個の ECU で車両全体を管理できると同時に、車両が持つ新しい高度で複雑な機能をすべて提供することができます。

 

ゾーン型アーキテクチャベースのシステムでは、ECU がアクチュエータやセンサの近くにあるため、配線や接続が少なくて済みます。その結果、よりスリムで、効率的で、スケーラブルな設計になりました。これにより、効率的な接続、軽量化、車両システムの大幅なコスト削減、およびはるかに強固なサイバーセキュリティと信頼性の向上が可能になります。ゾーン型アーキテクチャは、ソフトウェアとソフトウェア定義型車両を推進するための、構造化されたクリーンで安全な環境を促進します。携帯電話やサブスクリプション サービスで見られるような OTA アップデートなどの仕組みが見られるようになります。ゾーン型アーキテクチャへの移行により、車両はもはやホイール上のスーパーコンピューティング スマートフォンのようになり、運転者はアプリをダウンロードするだけでその体験を最適化できるようになります。それはセンサにとってどういう意味をもたらすかと疑問に思うかもしれません。最近の車には、いまだアナログ出力を持つセンサもあり、それらはお客様のローカル制御ユニットの電子基板上にあるアナログ/デジタル コンバータに入力されます。将来的には、ゾーン型アーキテクチャを活用したバスベースのシステムで通信するデジタル出力のセンサが主流になると思います。

 

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これらの進歩は、車両用センサの開発にどのような影響を与えたのでしょうか?

ゾーン型へのシフトは、ソフトウェア定義型車両を推進し、可能にするものです。それなしには、実現することはできません。今後、OEM は基本的にソフトウェア開発の取り組みが中心となるでしょう。歴史的に、OEM やティア 1 企業は最適化されたハードウェア中心のシステムを設計してきました。そして、システムを可能にするために必要なソフトウェアを決定します。ゾーン型アーキテクチャでは、その正反対のことが起こります。OEM はまず、ゾーンを制御するためのソフトウェアを設計し、進化させます。その後、ソフトウェアをサポートするためにハードウェアをどのように変化させ、適応させる必要があるかを検討します。ハードウェアがソフトウェアに追随するようになり、ソフトウェア開発の主権がティア 1 企業から OEM に移譲されることになるでしょう。そして、ミドル レイヤーを通じてハードウェアとソフトウェアを厳密に分離することで、独立したソフトウェアとハードウェアの開発プロセスとライフ サイクルが可能になります。この例えは、おそらく初期の PC のようなものでしょう。初期の PC は非常にカスタム性が高い設計でしたが、後に標準化さたマザーボードを採用したという流れです。現在の車両と、過去にコンピュータが歩んできた道のりを比較することは、今後たくさん出てくるでしょう。それらすべてを実現するために重要なのが、標準化とモジュール化です。これは重要なことです。

 

OEM は、ソフトウェア開発の大半を制御し、ハードウェアと電子モジュールの標準化を推進するでしょう。これにより、自動車メーカーにはより高い価値が提供され、さまざまなプラットフォーム モデルで最大限の再利用が可能になります。ゾーン型アーキテクチャでは、システムの高い消費電力要件と冗長性をサポートするために、48 ボルト システムへの移行も行われる予定です。そして 48 ボルトのシステムは、電力損失が少ないのです。ここで重要なのは、ワイヤー ハーネスの大幅な軽量化が可能となることです。今日のシステムでは、車内には大規模なケーブルが敷設され、さまざまなケーブルが車内に張り巡らされています。ゾーン型アーキテクチャでは、ケーブル アセンブリの数が格段に少なくなり、車両全体の配線が大幅に軽量で簡単になります。旧アーキテクチャからこの新しいゾーン型アーキテクチャへの移行による OEM の全体的な利点は、開発コストの大幅な削減、工場での生産に必要な設備投資の大幅な削減、製造効率の大幅な向上、開発サイクル時間の短縮、在庫の削減など、あらゆる種類の大きなメリットがもたらされることです。これは、OEM にとって多大な利点となるでしょう。また、電気配線の小型化や短縮化、デジタル出力付きセンサの採用により、OEM はセンサの追加や削減がさらに容易になり、各車両に合わせた機能を提供できるようになります。

 

実際、「コンビ センシング」と呼ばれるような、複数のセンサを単一パッケージにまとめようとする経済的な動きは、パッケージングや関連する複雑なケーブル アセンブリのコストを最小限に抑えるため、一般的に行われます。将来的には、個々のセンサの追加や削減の容易化により、その動きは減少し消失するかもしれません。さらに、機能安全要求事項の深い理解に対するニーズがより一層高まっています。世界中のどの組織にも、訓練を受け、認定を受けた機能安全マネージャ(実際には複数名)、さらにはエンジニアや IC 設計者がいなければなりません。彼らは皆、機能安全というトピックに精通している必要があります。機能安全についてはご存じでしょうか。これは安全機能の信頼性レベルを指しています。つまり、SIL です。SIL は、安全機能の開始から終了まで適用され、たとえ誤作動や機能喪失の状況下にがあっても、システムが安全な状態に戻るか、正しく機能することを保証するものです。これは、フォールト トレラント アーキテクチャです。設計も製品開発のプロセスも、機能安全規格に準拠する必要があります。これらの規格は、国際電気標準会議(IEC)の委託を受け、IEC 61508 や ISO 26262 などで規定されています。そして、すべての安全基準を満たしていることを適切に評価する対応した定量的指標を達成するためには、独立した機能安全監査に合格する必要があります。

 

ASIL 分解というものがあります。これは、自動車システムの開発で使用される手法で、リスクを管理および軽減し、異なる機能や異なる部品に関連付けるものです。このプロセスでは、より高い ASIL 要件を持つシステムをより小さな部品や機能に分解し、車両内のより高いレベルの ASIL を満たすために、それぞれの部品や機能により低い ASIL レーティングを割り当てる必要があります。このアプローチによって、これらの安全対策をより管理しやすく、費用対効果の高い形で実施することができます。ASIL は 4 つのレベルに分かれています。A、B、C、D の 4 レベルがあります。ASIL D は危険管理の厳格さの絶対的な最高レベルを表し、ASIL Aは最も低いレベルです。この分類は、潜在的な危険の重大性、暴露、および制御可能性の評価に役立ちます。また、重要な安全対策に焦点を当てるよう、開発プロセスを導きます。ASIL A は、リスクは比較的低いものの、安全性を確保するためにリスク軽減が必要なシステムに適用されます。ASIL B は、リスクは中程度であるものの、ASIL A よりも厳格な管理が必要なシステムを対象としています。ASIL C は、リスクがはるかに大きいシステムを対象としており、より厳格な安全対策が求められます。最後に、ASIL D は最高レベルであり、危害のリスクが最も高く、従って最も厳しい安全要件が必要とされる最重要システムにのみ適用されます。これらの変更はすべて、エンジニアが最終用途の詳細をよりよく理解するための大きな課題となっています。システムにおけるセンサには、単なる機能性や性能だけでなく、安全性、品質、信頼性、重量、持続可能性、およびコストの観点からも、その役割と価値が求められています。エンジニアが製品開発をする際、考慮しなければならない要素はたくさんあります。これらの OEM は、ソフトウェア定義型車両の世界に向かって突き進み、主にソフトウェアに注力するため、これらの機械システムやセンサに対する理解と成熟度が低下する可能性があります。これらの OEM は、以前は非常にハードウェア中心の開発をしており、それが得意でした。今後、ソフトウエア定義車両が普及するとき、センサ プロバイダだけでなく、ティア 1 企業やシステム プレーヤーにもその役割が回ってくると思います。

 

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センサの信頼性と安全性を向上させるために、何が起きているのでしょうか?

信頼性についてお話しされましたね。私は、信頼性工学の設計手法を自ら制度化し、自身の R&D 組織内にグローバル規模で導入しました。信頼性設計(DIR)とは、さまざまな故障が発生しうる特定の環境下において、指定された必要条件や負荷のもとで、特定の期間、製品が意図された機能を発揮することを保証するものです。この手法は、信頼性への配慮を製品設計プロセスに統合するものであり、故障を最小限に抑え、製品全体の性能と製品の安全性を高めるのに役立ちます。ミッション プロファイルというものがあります。ミッション プロファイルとは、その製品がライフ サイクル全体を通じて遭遇することが予想される運用条件や要件を詳細に記述したものです。このミッション プロファイルに含まれるのは、熱的、機械的、電気的な面における機能的負荷と、最終用途の特定の使用条件に依存するすべての環境ストレスです。一般的に、ミッション プロファイルへのこの情報は、製品要求文書に反映されます。当社は、お客様から得たこの情報を活用して、当社の製品がどのように性能を発揮すべきかを定義し、それに従って設計し、検証しています。当社は、使用プロファイルや、さまざまなシミュレーション、試験データ、フィールド データといった形でお客様から提供されたデータを理解する必要があります。当社は、業界標準や、過去のさまざまな製品での経験から得られた既知の故障モードからの情報とともに、それらすべての情報を使用します。同様のプラットフォームや製品について、製品 FMEA や設計 FMEA を実施し、製品開発を行うための製品要件定義を行っています。これにより、センサ開発者は最終用途の要件を満たす信頼性の高い製品を開発できるようになります。また、製品の過剰な設計あるいは開発による不要なコスト発生を防ぐこともできます。これは、最適化されたエンジニアリングです。まさに、丁度いいのです。

 

当社は機能安全評価も行っています。機能安全マネージャや、当社のすべてのエンジニアが機能安全訓練を受講する方法についてお話ししました。当社の機能安全マネージャと R&D エンジニアは、OEM やティア 1 企業の機能安全の専門家と深く話し合い、センサのすべての ASIL 要件や、システムレベルで適用されるどのような分解方法に関しても、完全に理解し、連携するようにしています。車両やシステム アーキテクチャに加え、サブシステムや各部品、そしてセンサまでのフローを正しく理解することが必須です。また、非常に複雑なテーマであるため、適切な訓練を受け、認定を受けた専門家が対応する必要があります。

 

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次世代の自動車はどのように進化していくとお考えですか?

次世代自動車は、過去のレガシー型内燃機関ベースのプラットフォームと比較すると、ハードウェア中心ではなくなることは間違いないと述べました。車両はソフトウェア定義のプラットフォームになるでしょう。ソフトウェア定義型車両についてもお話ししましたが、それはハードウェアの標準化とモジュール化を極限まで進めたものです。次世代の自動車は、運転者と同乗者の体験を中心に差別化されるでしょう。センサは、次世代自動車の進化において重要な役割を果たし、運転者と同乗者の特定のニーズに合わせて車両プラットフォーム上の機能や特徴を提供します。また、自動運転アシスト機能などによって、運転体験はこれまでとは大きく異なるものになるでしょう。

 

自動車技術者協会(SAE)は、自動運転のレベルを 6 段階に分けて定義しています。レベル 0 は完全なマニュアルです。自動化はされていません。運転者は、ステアリング操作、加速、車線変更、ブレーキなど、すべての操作をこなします。古いレガシー車両のようなものです。レベル 1 は運転支援です。レベル 1 では、車両がクルーズ コントロールで車速を監視するなど、1 つの自動化されたシステムがある場合があります。レベル 3 は部分的自動化で、先進運転支援システム(ADAS)とも呼ばれ、車両がステアリング、加速、車線変更、ブレーキを行います。一方で、運転者は監視しており、いつでも車両を制御することができます。レベル 4 は条件付き自動化と呼ばれ、車両がすべての運転や操縦機能を実行しますが、特定の条件下では運転者が介入する権限を持っています。レベル 5 は高度な自動化で、車両がすべての運転や操縦を行い、ジオフェンシングが必要となります。レベル 5 では、運転者はまだ介入する権限を持っています。しかしレベル 6 では、車両は絶対的な完全自律性を獲得し、あらゆる条件下ですべての運転や操縦機能を実行します。運転者との対話は一切必要ありません。そして、レベル 6 では運転者が運転者であるという概念すらなくなると思います。車が運転者だからです。現在、ほとんどの車両はレベル 2 とレベル 3 の間で運転されています。数年前までは OEM 各社は非常に楽観的で、レベル 4 への急速な移行を予想していたほどでしたが、運転者同乗者との安全性が重視されるようになったため、ほとんどの OEM がその予想を下方修正しました。

 

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車両設計にセンサを選択する際、エンジニアはどのような要素を考慮すべきでしょうか?

重要な要素はたくさんあります。まずは製品の堅牢性から始めましょう。そのことについてはお話ししました。信頼性のための設計と堅牢性の検証は、高い信頼性の製品、最終用途、またお客様に世界レベルの体験を提供するための基盤です。これらのお客様には、車の所有者、OEM、ティア 1 企業が含まれます。信頼性、それを実現するための設計や検証について、お話ししました。性能と機能性は、センサが当然満たさなければならないものです。TE では、シックス シグマ設計(DFSS)手法を採用しており、当社の製品が十分に性能を発揮し、用途のあらゆる条件下で仕様と要件を満たすことを保証するのに役立っています。機能的 安全性について。それはまた別の話です。そのことは先ほどお話ししました。センサは用途に適した機能安全要件を満たしていますか?完全な機能安全評価は、認定された機能安全マネージャが主導し、エンジニアは機能安全に関する訓練を受ける必要があります。これは重要です。先述の標準化やモジュール化によって、ソフトウェア定義型車両の互換性や標準化が絶対的な鍵となるでしょう。ソフトウェア定義型車両への移行に伴い、標準化のニーズは非常に高まっています。特に、互換性を考慮することは非常に重要です。OEM やティア 1 企業は、用途においても、あるいはさまざまなサプライヤー間でも、簡単かつシームレスに変更可能なセンサを求めるでしょう。

 

環境に優しくなることや、持続可能性について。それも大きなテーマです。今、自動業界車が直面している最も深刻な課題は、間違いなくカーボン フットプリントです。  これらの伝統的な材料や製造プロセスは、そのほとんどが化石燃料に依存しています。これらはすべて温室効果ガスの排出に大きく寄与しており、その多くが禁止されています。代替材料を考え出す必要がありますが、そのの中には実績のないものもあり、過去に使われていたものほど堅牢でないものもあります。しかし、その一部の利用を禁止する法律ができたことで、その実現れが難しくなっています。ですから、今後、センサ エンジニアにとって大きな課題のひとつは、「環境に優しい」とされる材料で製品の堅牢性を維持していくことだと思います。もうひとつは、サプライ チェーンの継続性でしょう。部品、材料、そして機器のサプライ チェーン全体の信頼性と堅牢性はどうでしょうか?特別な単一の供給元がありますか?それとも、陳腐化の懸念がある場合に利用可能な複数の選択肢がありますか?地政学的な懸念があれば、サプライ チェーン全体を通じて容易に商品を出荷することができなくなるため、グローバルなフットプリントを持つことが重要です。当社はそれを有しています。例えば、当社ではe モータの位置決め用に電気自動車向けのレゾルバを提供しており、グローバルに展開しています。当社では、各地域にレゾルバ製造拠点を有しており、お客様に供給することができます。そしてもちろん、技術面や品質面でのサポートも必要です。自動車業界では、欠陥ゼロを達成することが最優先事項です。迅速な根本原因分析、継続的な改善に向けた問題解決、欠陥ゼロの推進などは、当社にとって実に重要なことです。

 

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TE は、OEM が革新的でカスタマイズされたセンサソリューションを開発するのをどのように支援しているのでしょうか?

当社は、製品開発のライフ サイクルに先駆けて、お客様の既存のペイン ポイントや今後のニーズを十分に理解しています。お客様に、何が上手くいっていて、何が上手くいっていないのかヒアリングします。また、当社のセンサの専門知識によって、お客様が気づいていないかもしれない点を特定する支援もしています。つまり、言語化されていないニーズです。また、今後何年にもわたってセンシング プラットフォームの中核となる次世代技術を開発するため、当主要な顧客と先進的な開発に取り組んでいます。新しい用途に最初に触れるのが情報提供依頼書(RFI)や見積依頼書(RFQ)だとしたら、3 年ほど遅すぎます。TE は、ずっと早い段階からお客様との関わりを進めています。当社のシステム アプリケーション エンジニアリング チームについてお話ししました。R&D 組織にはシニア技術者や専門分野の知識を有する専門家がいます。彼らは皆、OEM やティア 1 企業の先進開発エンジニアリング チームと非常に緊密に連携しています。その点において、TE は信頼できる開発パートナーとして選ばれています。

 

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一流を目指すエンジニアにアドバイスをお願いします。

私がこれまでのキャリアで学んだことがあるとすれば、唯一変わらないものは変化そのものであるということです。非常に素早く適応することを学ぶ必要があります。楽をしてはいけません。常に注意を払って行動するのです。TE では、市場、選択して開発できる技術、供給基盤の選択肢、競合製品の評価を常に行っています。しかし、最も重要なことは、お客様のニーズを継続的に評価し、お客様が抱える問題を理解することです。近年、お客様のニーズは常に変化し、進化しています。TE は、お客様が競争に打ち勝つための支援をすることに誇りを持っています。当社は、お客様がどのような理由で夜眠れず、睡眠不足に陥っているのかを理解することで、真に付加価値のあるソリューションを開発します。私たちはセンサの専門家です。お客様は、最も困難なセンシング ニーズの解決に向けて当社と協業できることの価値を高く評価してくださっています。

 

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質問がある場合は、どこに行けばいいのでしょうか?

TE.com というウェブサイトがあります。そこで輸送センサを調べることができます。個人的に私と連絡を取りたい人がいましたら、LinkedIn でご連絡ください。関係者へのご紹介や、ご質問への対応も喜んでさせていただきます。リソースを活用しましょう。

 

車両アーキテクチャについて議論する自動車エンジニア。
車両アーキテクチャについて議論する自動車エンジニア。
今日、部品は他の電子機器と同様に、標準化されたネットワークを介して接続されることが多くなっています。より均質なバスベースのアーキテクチャの台頭は、部品エンジニアに課題と機会の両方をもたらします。

電化への急速なシフトや自動車システムの複雑化など、スマート車両技術の進歩は、自動車業界に大きな進化をもたらしています。 このインタビューでは、TE の Lamar F. Ricks(信頼性および試験担当ディレクター、前輸送用センサ担当最高技術責任者(CTO))が、エンジニアがセンサを新しい車両アーキテクチャに統合する方法について説明します。 

 

電気自動車市場の成熟が進むにつれ、部品メーカーに求められるシステム要件はより標準化されていくでしょう。しかし今日、エンジニアは市場の動向を予測し、メーカーが何ができるかを見出すための幅広いソリューションを開発する必要があります。そのプロセスには、材料と製造能力への深い理解が必要です。実用的なソリューションは、高温や振動に耐える堅牢性が必要であり、車両の他のシステムとシームレスに統合する必要があります。

 

車両アーキテクチャの進化で考慮すべきもうひとつの懸念事項は、ゾーン型アーキテクチャとドメイン集中型アーキテクチャの比較にあります。さらに、コスト削減、信頼性の向上、サイバーセキュリティの強化など、ゾーン型アーキテクチャの使用における課題と利点についても注目すべきです。ソフトウェア定義型車両の将来に関する洞察、例えばソフトウェア開発が車両設計の中心となりつつあることは、ハードウェア中心のシステムからソフトウェア中心のシステムへのシフトを促進しています。

CTO へのインタビュー:車両アーキテクチャの変革
スマート車両技術のための高度な接続がもたらす変革的な影響についての洞察。
CTO へのインタビュー:車両アーキテクチャの変革
スマート車両技術のための高度な接続がもたらす変革的な影響についての洞察。

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スマート車両技術の進歩は、車両アーキテクチャ設計をどのように変えたのでしょうか?

現在、さまざまな動向が見られます。この動向は、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインに関連しており、まさに電化についてのものです。都市化、持続可能性や環境への配慮に対するプレッシャーなど、さまざまな力学が世界中の政府に働きかけ、多様な法律や新しい規制が制定されました。これらすべてが、電化を推進する OEM に利益をもたらしています。さらに、さまざまな税制優遇措置が、電化への消費の意欲を高めています。変化は非常に早く起こっています。

 

車両アーキテクチャは、ゾーン型アプローチと呼ばれるものに移行しつつあります。ゾーン型アプローチでは、電気および電子ベースのプラットフォームが標準化されています。このような電子システムの標準化とモジュール化は、EV の成功に最も重要です。それは、さまざまなメリットを約束します。コストと重量の削減、サブシステムと部品の互換性の容易さ、そしてそれらの車両により高度な機能を搭載することを約束します。このような高電圧推進システムのイノベーションの速さは、車両にさまざまなアーキテクチャをもたらす原動力となっています。低電圧の電気および電子システムとそのアーキテクチャ、およびそれに関連するさまざまなプラットフォームを完全に根本から見直し、再設計する流れを加速させています。すでにレガシー分散型アーキテクチャからドメイン集中型アーキテクチャに移行した車両プログラムもあり、現時点でそうしたドメイン型アーキテクチャは、将来の EV に最適化されたゾーン型アーキテクチャへのさらなる変革が必要となります。これには、車両への電力供給と自動運転機能を可能にする複雑な高電圧システムも含まれます。

 

古いシステムはレガシー分散型アーキテクチャでした。これらは、ドメイン集中型アーキテクチャに移行しました。将来的には、ゾーン型アーキテクチャに移行するでしょう。 すでにゾーン型アーキテクチャを活用している車両は全体の数パーセントであり、業界をリードしています。しかし、10 年も経たないうちに、OEM の約 40 %がゾーン型アーキテクチャを採用するようになると推定されています。この流れは、競合他社が追随し、これらの変化に迅速に対応するよう促しています。今日、電化車両の OEM は、安全性や快適性、およびインフォテインメントなどの機能を向上させるためだけでなく、電化の加速や ADAS 機能を実現するためにも、ソフトウェアを活用しています。将来的には、車両の機能性およびそれに関連するすべてのソフトウェアは、それが動作するハードウェアから独立して開発され、車両のライフ サイクル全体を通じて更新されるようになるでしょう。こうして、ソフトウェア定義型車両(SDV)と呼ばれるものが生まれました。当社は、ADAS と機能性の向上に向けたこの流れに沿って取り組んでいます。最近発表したプラットフォームのひとつに、高分解能ホイール スピード センサがあります。このホイール スピード センサは、レガシー ホイール スピード センサの 4 倍を超える分解能を有しています。この高い分解能により、ホイールの動きをより細かく制御することができ、自動駐車や渋滞時の操縦支援など、さまざまな機能の自動化が可能になります。これは、車両の機能性をまったく新しいレベルに押し上げるものです。

 

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なぜゾーン型アーキテクチャとドメイン集中型アーキテクチャなのですか?

ドメイン型アーキテクチャは、システムを論理的に整理することができ、クラウド接続に非常に適しています。例えば、インフォテインメント、ADAS、テレマティクス、ゲートウェイ システムはすべてグループ化されており、それぞれに電子制御ユニット(ECU)があります。しかし、このアーキテクチャでは、車両内の配線や接続の量が増えます。その結果、車両重量が増え、コストも上がります。OEM は、新しいセンサや電子機器、さらにはそれらすべてを制御する ECU を追加することで、この種のアーキテクチャに簡単に新機能を導入することができます。一方で、全体的なシステムの中で相互接続されつつある ECU の数は膨大であり、コストがかかります。また、外部からの潜在的なデジタル アクセス ポイントが複数あるため、サイバー攻撃の脅威にもさらされます。その結果、現在かなり主流となっているこれらのドメイン集中型アーキテクチャは、結局のところ、車両の電気システムを構成する最も効率的な方法ではありません。従って、システムのコア アーキテクチャと配電システムの見直しは必須であり、このゾーン型アーキテクチャの大量導入につながっています。そして、このゾーン型アーキテクチャにより、システムは論理的かつ物理的に、効率的に組織化されたゾーンにグループ化されます。また各ゾーンでは、すべてのシステムが同一プロセッサによって管理されています。これらは独自の配電ユニットを持っています。これらはすべてゲートウェイを介してイーサネットに接続され、最終的には中央車両コンピュータに接続されます。そうすることで、わずか数個の ECU で車両全体を管理できると同時に、車両が持つ新しい高度で複雑な機能をすべて提供することができます。

 

ゾーン型アーキテクチャベースのシステムでは、ECU がアクチュエータやセンサの近くにあるため、配線や接続が少なくて済みます。その結果、よりスリムで、効率的で、スケーラブルな設計になりました。これにより、効率的な接続、軽量化、車両システムの大幅なコスト削減、およびはるかに強固なサイバーセキュリティと信頼性の向上が可能になります。ゾーン型アーキテクチャは、ソフトウェアとソフトウェア定義型車両を推進するための、構造化されたクリーンで安全な環境を促進します。携帯電話やサブスクリプション サービスで見られるような OTA アップデートなどの仕組みが見られるようになります。ゾーン型アーキテクチャへの移行により、車両はもはやホイール上のスーパーコンピューティング スマートフォンのようになり、運転者はアプリをダウンロードするだけでその体験を最適化できるようになります。それはセンサにとってどういう意味をもたらすかと疑問に思うかもしれません。最近の車には、いまだアナログ出力を持つセンサもあり、それらはお客様のローカル制御ユニットの電子基板上にあるアナログ/デジタル コンバータに入力されます。将来的には、ゾーン型アーキテクチャを活用したバスベースのシステムで通信するデジタル出力のセンサが主流になると思います。

 

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これらの進歩は、車両用センサの開発にどのような影響を与えたのでしょうか?

ゾーン型へのシフトは、ソフトウェア定義型車両を推進し、可能にするものです。それなしには、実現することはできません。今後、OEM は基本的にソフトウェア開発の取り組みが中心となるでしょう。歴史的に、OEM やティア 1 企業は最適化されたハードウェア中心のシステムを設計してきました。そして、システムを可能にするために必要なソフトウェアを決定します。ゾーン型アーキテクチャでは、その正反対のことが起こります。OEM はまず、ゾーンを制御するためのソフトウェアを設計し、進化させます。その後、ソフトウェアをサポートするためにハードウェアをどのように変化させ、適応させる必要があるかを検討します。ハードウェアがソフトウェアに追随するようになり、ソフトウェア開発の主権がティア 1 企業から OEM に移譲されることになるでしょう。そして、ミドル レイヤーを通じてハードウェアとソフトウェアを厳密に分離することで、独立したソフトウェアとハードウェアの開発プロセスとライフ サイクルが可能になります。この例えは、おそらく初期の PC のようなものでしょう。初期の PC は非常にカスタム性が高い設計でしたが、後に標準化さたマザーボードを採用したという流れです。現在の車両と、過去にコンピュータが歩んできた道のりを比較することは、今後たくさん出てくるでしょう。それらすべてを実現するために重要なのが、標準化とモジュール化です。これは重要なことです。

 

OEM は、ソフトウェア開発の大半を制御し、ハードウェアと電子モジュールの標準化を推進するでしょう。これにより、自動車メーカーにはより高い価値が提供され、さまざまなプラットフォーム モデルで最大限の再利用が可能になります。ゾーン型アーキテクチャでは、システムの高い消費電力要件と冗長性をサポートするために、48 ボルト システムへの移行も行われる予定です。そして 48 ボルトのシステムは、電力損失が少ないのです。ここで重要なのは、ワイヤー ハーネスの大幅な軽量化が可能となることです。今日のシステムでは、車内には大規模なケーブルが敷設され、さまざまなケーブルが車内に張り巡らされています。ゾーン型アーキテクチャでは、ケーブル アセンブリの数が格段に少なくなり、車両全体の配線が大幅に軽量で簡単になります。旧アーキテクチャからこの新しいゾーン型アーキテクチャへの移行による OEM の全体的な利点は、開発コストの大幅な削減、工場での生産に必要な設備投資の大幅な削減、製造効率の大幅な向上、開発サイクル時間の短縮、在庫の削減など、あらゆる種類の大きなメリットがもたらされることです。これは、OEM にとって多大な利点となるでしょう。また、電気配線の小型化や短縮化、デジタル出力付きセンサの採用により、OEM はセンサの追加や削減がさらに容易になり、各車両に合わせた機能を提供できるようになります。

 

実際、「コンビ センシング」と呼ばれるような、複数のセンサを単一パッケージにまとめようとする経済的な動きは、パッケージングや関連する複雑なケーブル アセンブリのコストを最小限に抑えるため、一般的に行われます。将来的には、個々のセンサの追加や削減の容易化により、その動きは減少し消失するかもしれません。さらに、機能安全要求事項の深い理解に対するニーズがより一層高まっています。世界中のどの組織にも、訓練を受け、認定を受けた機能安全マネージャ(実際には複数名)、さらにはエンジニアや IC 設計者がいなければなりません。彼らは皆、機能安全というトピックに精通している必要があります。機能安全についてはご存じでしょうか。これは安全機能の信頼性レベルを指しています。つまり、SIL です。SIL は、安全機能の開始から終了まで適用され、たとえ誤作動や機能喪失の状況下にがあっても、システムが安全な状態に戻るか、正しく機能することを保証するものです。これは、フォールト トレラント アーキテクチャです。設計も製品開発のプロセスも、機能安全規格に準拠する必要があります。これらの規格は、国際電気標準会議(IEC)の委託を受け、IEC 61508 や ISO 26262 などで規定されています。そして、すべての安全基準を満たしていることを適切に評価する対応した定量的指標を達成するためには、独立した機能安全監査に合格する必要があります。

 

ASIL 分解というものがあります。これは、自動車システムの開発で使用される手法で、リスクを管理および軽減し、異なる機能や異なる部品に関連付けるものです。このプロセスでは、より高い ASIL 要件を持つシステムをより小さな部品や機能に分解し、車両内のより高いレベルの ASIL を満たすために、それぞれの部品や機能により低い ASIL レーティングを割り当てる必要があります。このアプローチによって、これらの安全対策をより管理しやすく、費用対効果の高い形で実施することができます。ASIL は 4 つのレベルに分かれています。A、B、C、D の 4 レベルがあります。ASIL D は危険管理の厳格さの絶対的な最高レベルを表し、ASIL Aは最も低いレベルです。この分類は、潜在的な危険の重大性、暴露、および制御可能性の評価に役立ちます。また、重要な安全対策に焦点を当てるよう、開発プロセスを導きます。ASIL A は、リスクは比較的低いものの、安全性を確保するためにリスク軽減が必要なシステムに適用されます。ASIL B は、リスクは中程度であるものの、ASIL A よりも厳格な管理が必要なシステムを対象としています。ASIL C は、リスクがはるかに大きいシステムを対象としており、より厳格な安全対策が求められます。最後に、ASIL D は最高レベルであり、危害のリスクが最も高く、従って最も厳しい安全要件が必要とされる最重要システムにのみ適用されます。これらの変更はすべて、エンジニアが最終用途の詳細をよりよく理解するための大きな課題となっています。システムにおけるセンサには、単なる機能性や性能だけでなく、安全性、品質、信頼性、重量、持続可能性、およびコストの観点からも、その役割と価値が求められています。エンジニアが製品開発をする際、考慮しなければならない要素はたくさんあります。これらの OEM は、ソフトウェア定義型車両の世界に向かって突き進み、主にソフトウェアに注力するため、これらの機械システムやセンサに対する理解と成熟度が低下する可能性があります。これらの OEM は、以前は非常にハードウェア中心の開発をしており、それが得意でした。今後、ソフトウエア定義車両が普及するとき、センサ プロバイダだけでなく、ティア 1 企業やシステム プレーヤーにもその役割が回ってくると思います。

 

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センサの信頼性と安全性を向上させるために、何が起きているのでしょうか?

信頼性についてお話しされましたね。私は、信頼性工学の設計手法を自ら制度化し、自身の R&D 組織内にグローバル規模で導入しました。信頼性設計(DIR)とは、さまざまな故障が発生しうる特定の環境下において、指定された必要条件や負荷のもとで、特定の期間、製品が意図された機能を発揮することを保証するものです。この手法は、信頼性への配慮を製品設計プロセスに統合するものであり、故障を最小限に抑え、製品全体の性能と製品の安全性を高めるのに役立ちます。ミッション プロファイルというものがあります。ミッション プロファイルとは、その製品がライフ サイクル全体を通じて遭遇することが予想される運用条件や要件を詳細に記述したものです。このミッション プロファイルに含まれるのは、熱的、機械的、電気的な面における機能的負荷と、最終用途の特定の使用条件に依存するすべての環境ストレスです。一般的に、ミッション プロファイルへのこの情報は、製品要求文書に反映されます。当社は、お客様から得たこの情報を活用して、当社の製品がどのように性能を発揮すべきかを定義し、それに従って設計し、検証しています。当社は、使用プロファイルや、さまざまなシミュレーション、試験データ、フィールド データといった形でお客様から提供されたデータを理解する必要があります。当社は、業界標準や、過去のさまざまな製品での経験から得られた既知の故障モードからの情報とともに、それらすべての情報を使用します。同様のプラットフォームや製品について、製品 FMEA や設計 FMEA を実施し、製品開発を行うための製品要件定義を行っています。これにより、センサ開発者は最終用途の要件を満たす信頼性の高い製品を開発できるようになります。また、製品の過剰な設計あるいは開発による不要なコスト発生を防ぐこともできます。これは、最適化されたエンジニアリングです。まさに、丁度いいのです。

 

当社は機能安全評価も行っています。機能安全マネージャや、当社のすべてのエンジニアが機能安全訓練を受講する方法についてお話ししました。当社の機能安全マネージャと R&D エンジニアは、OEM やティア 1 企業の機能安全の専門家と深く話し合い、センサのすべての ASIL 要件や、システムレベルで適用されるどのような分解方法に関しても、完全に理解し、連携するようにしています。車両やシステム アーキテクチャに加え、サブシステムや各部品、そしてセンサまでのフローを正しく理解することが必須です。また、非常に複雑なテーマであるため、適切な訓練を受け、認定を受けた専門家が対応する必要があります。

 

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次世代の自動車はどのように進化していくとお考えですか?

次世代自動車は、過去のレガシー型内燃機関ベースのプラットフォームと比較すると、ハードウェア中心ではなくなることは間違いないと述べました。車両はソフトウェア定義のプラットフォームになるでしょう。ソフトウェア定義型車両についてもお話ししましたが、それはハードウェアの標準化とモジュール化を極限まで進めたものです。次世代の自動車は、運転者と同乗者の体験を中心に差別化されるでしょう。センサは、次世代自動車の進化において重要な役割を果たし、運転者と同乗者の特定のニーズに合わせて車両プラットフォーム上の機能や特徴を提供します。また、自動運転アシスト機能などによって、運転体験はこれまでとは大きく異なるものになるでしょう。

 

自動車技術者協会(SAE)は、自動運転のレベルを 6 段階に分けて定義しています。レベル 0 は完全なマニュアルです。自動化はされていません。運転者は、ステアリング操作、加速、車線変更、ブレーキなど、すべての操作をこなします。古いレガシー車両のようなものです。レベル 1 は運転支援です。レベル 1 では、車両がクルーズ コントロールで車速を監視するなど、1 つの自動化されたシステムがある場合があります。レベル 3 は部分的自動化で、先進運転支援システム(ADAS)とも呼ばれ、車両がステアリング、加速、車線変更、ブレーキを行います。一方で、運転者は監視しており、いつでも車両を制御することができます。レベル 4 は条件付き自動化と呼ばれ、車両がすべての運転や操縦機能を実行しますが、特定の条件下では運転者が介入する権限を持っています。レベル 5 は高度な自動化で、車両がすべての運転や操縦を行い、ジオフェンシングが必要となります。レベル 5 では、運転者はまだ介入する権限を持っています。しかしレベル 6 では、車両は絶対的な完全自律性を獲得し、あらゆる条件下ですべての運転や操縦機能を実行します。運転者との対話は一切必要ありません。そして、レベル 6 では運転者が運転者であるという概念すらなくなると思います。車が運転者だからです。現在、ほとんどの車両はレベル 2 とレベル 3 の間で運転されています。数年前までは OEM 各社は非常に楽観的で、レベル 4 への急速な移行を予想していたほどでしたが、運転者同乗者との安全性が重視されるようになったため、ほとんどの OEM がその予想を下方修正しました。

 

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車両設計にセンサを選択する際、エンジニアはどのような要素を考慮すべきでしょうか?

重要な要素はたくさんあります。まずは製品の堅牢性から始めましょう。そのことについてはお話ししました。信頼性のための設計と堅牢性の検証は、高い信頼性の製品、最終用途、またお客様に世界レベルの体験を提供するための基盤です。これらのお客様には、車の所有者、OEM、ティア 1 企業が含まれます。信頼性、それを実現するための設計や検証について、お話ししました。性能と機能性は、センサが当然満たさなければならないものです。TE では、シックス シグマ設計(DFSS)手法を採用しており、当社の製品が十分に性能を発揮し、用途のあらゆる条件下で仕様と要件を満たすことを保証するのに役立っています。機能的 安全性について。それはまた別の話です。そのことは先ほどお話ししました。センサは用途に適した機能安全要件を満たしていますか?完全な機能安全評価は、認定された機能安全マネージャが主導し、エンジニアは機能安全に関する訓練を受ける必要があります。これは重要です。先述の標準化やモジュール化によって、ソフトウェア定義型車両の互換性や標準化が絶対的な鍵となるでしょう。ソフトウェア定義型車両への移行に伴い、標準化のニーズは非常に高まっています。特に、互換性を考慮することは非常に重要です。OEM やティア 1 企業は、用途においても、あるいはさまざまなサプライヤー間でも、簡単かつシームレスに変更可能なセンサを求めるでしょう。

 

環境に優しくなることや、持続可能性について。それも大きなテーマです。今、自動業界車が直面している最も深刻な課題は、間違いなくカーボン フットプリントです。  これらの伝統的な材料や製造プロセスは、そのほとんどが化石燃料に依存しています。これらはすべて温室効果ガスの排出に大きく寄与しており、その多くが禁止されています。代替材料を考え出す必要がありますが、そのの中には実績のないものもあり、過去に使われていたものほど堅牢でないものもあります。しかし、その一部の利用を禁止する法律ができたことで、その実現れが難しくなっています。ですから、今後、センサ エンジニアにとって大きな課題のひとつは、「環境に優しい」とされる材料で製品の堅牢性を維持していくことだと思います。もうひとつは、サプライ チェーンの継続性でしょう。部品、材料、そして機器のサプライ チェーン全体の信頼性と堅牢性はどうでしょうか?特別な単一の供給元がありますか?それとも、陳腐化の懸念がある場合に利用可能な複数の選択肢がありますか?地政学的な懸念があれば、サプライ チェーン全体を通じて容易に商品を出荷することができなくなるため、グローバルなフットプリントを持つことが重要です。当社はそれを有しています。例えば、当社ではe モータの位置決め用に電気自動車向けのレゾルバを提供しており、グローバルに展開しています。当社では、各地域にレゾルバ製造拠点を有しており、お客様に供給することができます。そしてもちろん、技術面や品質面でのサポートも必要です。自動車業界では、欠陥ゼロを達成することが最優先事項です。迅速な根本原因分析、継続的な改善に向けた問題解決、欠陥ゼロの推進などは、当社にとって実に重要なことです。

 

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TE は、OEM が革新的でカスタマイズされたセンサソリューションを開発するのをどのように支援しているのでしょうか?

当社は、製品開発のライフ サイクルに先駆けて、お客様の既存のペイン ポイントや今後のニーズを十分に理解しています。お客様に、何が上手くいっていて、何が上手くいっていないのかヒアリングします。また、当社のセンサの専門知識によって、お客様が気づいていないかもしれない点を特定する支援もしています。つまり、言語化されていないニーズです。また、今後何年にもわたってセンシング プラットフォームの中核となる次世代技術を開発するため、当主要な顧客と先進的な開発に取り組んでいます。新しい用途に最初に触れるのが情報提供依頼書(RFI)や見積依頼書(RFQ)だとしたら、3 年ほど遅すぎます。TE は、ずっと早い段階からお客様との関わりを進めています。当社のシステム アプリケーション エンジニアリング チームについてお話ししました。R&D 組織にはシニア技術者や専門分野の知識を有する専門家がいます。彼らは皆、OEM やティア 1 企業の先進開発エンジニアリング チームと非常に緊密に連携しています。その点において、TE は信頼できる開発パートナーとして選ばれています。

 

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一流を目指すエンジニアにアドバイスをお願いします。

私がこれまでのキャリアで学んだことがあるとすれば、唯一変わらないものは変化そのものであるということです。非常に素早く適応することを学ぶ必要があります。楽をしてはいけません。常に注意を払って行動するのです。TE では、市場、選択して開発できる技術、供給基盤の選択肢、競合製品の評価を常に行っています。しかし、最も重要なことは、お客様のニーズを継続的に評価し、お客様が抱える問題を理解することです。近年、お客様のニーズは常に変化し、進化しています。TE は、お客様が競争に打ち勝つための支援をすることに誇りを持っています。当社は、お客様がどのような理由で夜眠れず、睡眠不足に陥っているのかを理解することで、真に付加価値のあるソリューションを開発します。私たちはセンサの専門家です。お客様は、最も困難なセンシング ニーズの解決に向けて当社と協業できることの価値を高く評価してくださっています。

 

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質問がある場合は、どこに行けばいいのでしょうか?

TE.com というウェブサイトがあります。そこで輸送センサを調べることができます。個人的に私と連絡を取りたい人がいましたら、LinkedIn でご連絡ください。関係者へのご紹介や、ご質問への対応も喜んでさせていただきます。リソースを活用しましょう。