磁気抵抗 (MR) センサ

磁気抵抗センサに関するよくある質問 (FAQ)

センサ特性

低磁場感度と高磁場感度の違いは何ですか?

磁場感度とは、磁場強度の変化を検出するセンサの機能のことです。これは MR センサにとって重要な特性であり、磁場の変動をどれだけ効果的に測定できるかを決定します。

  • 低磁場感度: 微弱な磁場に対する感度の高いセンサは微小な変化を検出できるため、医療用画像診断や地球物理調査など、低磁場環境での正確な測定を必要とする用途に適しています。
  • 高磁場感度: 高磁場感度用に設計されたセンサは、飽和することなく強い磁場を正確に測定できます。これらのセンサは、産業オートメーションや自動車システムなど、強力なマグネットや高電流環境が関与する用途に適しています。
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極間隔とは何ですか?

極間隔は、磁化された表面または磁場内にある隣接する磁極間の距離を示す重要な測定値です。これは、磁場の変動を正確に検出して測定するセンサの能力に影響を与えます。

  • 小極間隔は、ロボットや産業オートメーションなど、高分解能の位置検知を必要とする用途に適しています。医療診断機器では、分解能と精度を向上させるために小極間隔が採用されています。
  • A 中極間隔は分解能とレンジのバランスが取れており、自動車や民生機器などの動的な環境に適しています。
  • 大極間隔は磁場を検出できる範囲が広いため、大型産業機器や再生可能エネルギー システムでの用途に適しています。
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磁場強度にはどのような特徴がありますか?

磁場強度特性は、弱磁場、中磁場、強磁場にわたって変化します。それぞれに対応する基準は次のとおりです。

  • 弱磁場強度: MR センサでは弱磁場の微小な変化を検出するために高い感度が要求されます。多くの場合、正確な測定のために高度な薄膜処理技術が不可欠です。温度安定性により、温度変化によって性能が変動することがないことが確認されています。このことは、低磁場条件で正確な測定を維持するうえで重要です。
  • 中磁場強度: 中磁場強度で動作するセンサは感度とレンジのバランスが取れています。これらのセンサの出力が磁場の変動を線形かつ高精度で反映し、ヒステリシスを最小限に抑えて測定精度を維持することが確認されています。
  • 強磁場強度: MR センサは、飽和することなく強磁場強度を処理します。レンジと温度安定性によって信頼性の高い性能を実現し、線形性を維持してヒステリシスを最小限に抑え、一貫した正確な読み取り値を実現します。

スイッチング磁場は、スイッチング電圧における磁場とどのようにして等しくなるのでしょうか? 

磁気抵抗 (MR) センサでは、センサの抵抗状態を変化させるうえで必要な特定の磁場強度をスイッチング磁場と呼んでいます。この磁場が印加されるとセンサの電気抵抗が変化し、これは電圧の変化 (スイッチング電圧) として検出されます。基本的には、スイッチング磁場がセンサの抵抗状態の切り替えを生じさせ、スイッチング電圧がこの変化を示します。

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磁気センサのエア ギャップの目的は何ですか?

MR センサにおけるエア ギャップとは、センサと磁源との距離のことです。このギャップは、センサの性能と精度に重大な影響を及ぼします。エア ギャップを適切に管理することで、一貫性と信頼性の高い結果が得られます。

 

  • 最大エア ギャップは、磁気シミュレーション、経験に基づく試験、メーカーの仕様によって決定されます。
    • 磁気シミュレーション: Ansys Maxwell または MATLAB などのソフトウェアでは、センサ システムをモデリングして、さまざまなエア ギャップでの磁場強度を予測できます。
    • 経験に基づく試験: エンジニアが物理試験を実施してコンピュータ モデルを検証し、センサが最低限の性能目標を達成できる距離を特定します。
    • メーカーの仕様: 多くの場合、センサ メーカーは、センサの設計・使用目的・独自のラボ試験に基づいて、最大エア ギャップに関するガイドラインを提供しています。
  • センサの精度を最適化するには、センサ メーカーが指定した範囲内にエア ギャップを維持する必要があります。これにより、ノイズと誤差を最小限に抑えながら正確な測定を行ううえで十分な磁場強度が得られます。
    • 磁場強度: エア ギャップが小さいほどセンサの磁場が強くなり、感度と精度が向上します。ギャップが大きくなると磁場も減少し、感度と精度が低下します。
    • SN 比: 小さなエア ギャップからの磁場強度が高いと、センサの信号とノイズを区別する能力が高まります。ギャップが大きいほど、磁場の変化を正確に検出することが難しくなります。
    • 測定誤差: エア ギャップが小さいほど測定誤差が最小限に抑えられ、正確な読み取り値が得られます。エア ギャップが大きくなると、磁場が弱くなったり、位置がずれたりして、誤差が生じる可能性があります。
  • ギャップ磁極長、極間隔、エア ギャップの相互関係: 磁極長と極間隔は、センサのメーカーが指定した最適なエア ギャップ範囲内で動作するように設計する必要があります。たとえば、磁極長が短くて極間隔の小さいセンサはエア ギャップを小さくできるため、センサの精度が向上します。
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ウェハ レベル パッケージングとは?

ウェハ レベル パッケージング (WLP) では、個々のセンサに分割される前に、半導体材料の薄片 (ウェハ) 上で数百または数千のセンサの製造、パッケージング、テスト、バーンインを統合的に実施します。

 

特長:

  • 小型化: WLP は、スペースの限られた用途で重要な、小型でコンパクトなセンサ設計を実現します。
  • 性能の向上: ウェハ レベル パッケージングでは、インターコネクションを短くすることで電気特性を向上させ、インダクタンスと静電容量の寄生効果を緩和します。
  • 費用対効果: 製造規模を拡大して個別センサの取り扱いを減らすことで、WLP で製造する際のコストを大幅に削減します。
  • 信頼性: 処理と取り扱いの手間を省くことによって環境要因から確実に保護できるようになり、センサの品質と信頼性が向上します。

 

一般的な用途:

  • 民生機器
  • 先進運転者支援システム (ADAS)
  • 医療診断機器
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AMR センサは物体の回転角度をどのように決定するのですか?

AMR センサは、磁場の方向を検知して物体の回転角度を測定します。永久磁石が回転すると、異方性磁気抵抗効果によって抵抗の変化が検出されます。このセンサは、ホイートストン ブリッジ構成を使用して、抵抗の変化を差動サイン信号とコサイン信号に変換します。コンピュータ アルゴリズムがこれらの信号を処理し、正確な回転角度を決定します。正確な角度測定を可能にするには適切な校正が不可欠であり、オフセット・振幅・直交性の誤差を補正することも含まれます。AMR センサは、0.5° 〜 0.1° の精度で最大 180° の角度を測定できます。 ただし、AMR 検知とホール効果ラッチを組み合わせることで、360° の角度測定が可能になります。

ホイートストン ブリッジ構成

ホイートストン ブリッジは AMR センサの性能をどのように向上させますか?
AMR センサでは、通常、異方性磁気抵抗効果による抵抗の変化を検出するためにホイートストン ブリッジ構成で配置された抵抗素子を使用します。このブリッジにより、磁場の方向に対応する差動サイン信号とコサイン信号が生成されます。コンピュータ アルゴリズムがこれらの信号を処理し、物体の正確な位置を特定します。AMR センサの精度と分解能を向上させるため、多くの場合にホイートストン ブリッジが使用されます。


機能:

  • 複数のホイートストン ブリッジが並列に構成され、それぞれが独立して動作します。これらのブリッジは冗長データを提供し、精度と信頼性を高めます。
  • アルゴリズムは、重み付け平均化または高度なデータ融合を使用して冗長信号を処理します。

 

製品の特長:

  • 精度の向上: 複数のホイートストン ブリッジを使用すると、冗長信号を分析して誤った読み取り値を識別することによって、測定精度を向上させることができます。
  • 高分解能: 複数のブリッジによってセンサの分解能も向上し、磁場の変化をより細かく検出できます。
  • 堅牢性: 複数のブリッジを使用することでセンサの堅牢性が向上し、さまざまな環境条件での信頼性が向上します。

用途:

  • 車両検知: 複数のホイートストン ブリッジを備えた AMR センサは車両検知システムで使用され、車両の速度・方向・存在を正確に測定します
  • 角度測定: モータ制御やロボットなどの用途では、複数のブリッジを使用することで高精度の角度測定を実現します

均一磁場センシング

均一磁場センシングとは何ですか?

均一磁場センシングとは、検知対象領域全体にわたって強度と方向が均一な磁場を検出することです。磁気抵抗センサは、磁場の変化を正確かつ一貫して測定することを目的としています。均一磁場センシングが重要な場合もあれば、それほど重要でない場合もあります。

 

均一磁場センシングの重要な用途には、次のようなものがあります。

MRI 装置

磁気共鳴映像法 (MRI) 装置では、身体の内部構造を鮮明かつ正確に画像化するために、きわめて均質な磁場が不可欠です。不均一性があると、画像に歪みやアーティファクトが生じる可能性があります。

磁気ナビゲーション システム

磁気ナビゲーション システムは、エアロスペースおよび艦船航行で使用されています。このようなシステムは均一な磁場を利用し、正確な方向情報を提供します。磁場の変動は航行誤差につながる可能性があります。

科学研究

物理学や材料科学の実験では、磁場の変動による影響を受けることがないように均質な磁場が必要になることがよくあります。

磁気抵抗センサのヒステリシス

ヒステリシスは MR センサの精度にどのように影響するでしょうか?

ヒステリシスとはシステム内の入力と出力の間の遅延のことであり、特に磁場の方向が変わるときの遅延を指します。MR センサでは、ヒステリシスはいくつかの形でセンサの精度に影響を与えます。

 

  • 残留磁化
    • 影響: ヒステリシスにより、磁場が除去または変化した後でも、センサに残留磁化が保持されます。この残留磁化は、以降の測定での誤差につながる可能性があります。
    • 例: 方向が変わる磁場の測定に MR センサを使用する場合、過去の磁場方向からの残留磁化によってセンサの読み取り値が不正確になることがあります。

 

  • 応答で発生するラグ
    • 影響: ヒステリシスにより、入力磁場とセンサの出力の間にラグが生じます。このラグは、特に磁場が急速に変化する動的な用途において、測定の遅延や不正確性の原因となることがあります。
    • 例: 車両検知などの用途では、車両が通過するときに磁場が急速に変化するため、ヒステリシスによってセンサがこれらの変化を見逃したり、測定が不正確になったりする可能性があります。

 

  • オフセット誤差
    • 影響: ヒステリシスによってオフセット誤差が生じ、磁場が除去されたときにセンサの出力がゼロに戻らないことがあります。このオフセットは、後続のすべての測定で一定の誤差につながる可能性があります。
    • 例: 角度測定用途で、ヒステリシスによるオフセット誤差によって、センサが一貫して誤った角度を報告することがあります。

 

緩和手法:

  • 校正: 定期的な校正は、残留磁化誤差やオフセット誤差を考慮するようにセンサの出力を調整することによって、ヒステリシスに起因する誤差を補正するのに役立ちます。
  • 補償アルゴリズム: 高度なアルゴリズムを使用して、磁気履歴に基づいてセンサの応答をモデリングおよび補正することにより、ヒステリシスを補償できます。

比較

AMR センサと GMR センサの違いは何ですか?

異方性磁気抵抗 (AMR) センサおよび巨大磁気抵抗 (GMR) センサは、いずれも薄膜電気抵抗の変化に伴う磁場の変化を検出します。これらも同様の用途で使用されます。ただし、動作原理と主要なパフォーマンス特性には違いがあります。

 

検知原理
AMR センサは、強磁性体における磁化と電流方向とのなす角度による電気抵抗の変化を測定します。この効果が生じるのは、電流に対する磁場の方向によって抵抗値が変化するためです。 GMR センサは、非磁性層で隔てられた多層強磁性体構造の磁化の配向によって生じる抵抗の変化を利用します。磁性層が平行に並んでいると抵抗は低くなり、逆平行であると抵抗は高くなります。
感度
一般的に、AMR センサの感度は中程度であるため、高精度でありながら極端に高い感度が要求されない用途に適しています。 
GMR センサは AMR センサに比べて感度が高く、磁場の微細な変化を検出することができます。このため、高精度が求められる用途に適しています。
構造
通常、AMR センサはパーマロイ (ニッケル-鉄合金) などの単層の強磁性材料で構成されています。 GMR センサは、コバルトなどの強磁性層や銅などの非磁性層を含む複数の層で構成されています。この多層構造が巨大な磁気抵抗効果を実現する鍵となります。
性能特性
AMR センサは、検出範囲が狭くてヒステリシスが小さく、シンプルさと費用対効果の高さで知られています。 GMR センサは検出範囲が広くて信頼性も高いですが、強力な永久磁石が存在する場合に複数のスイッチング ポイントを示す場合があります。
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AMR センサとホール効果センサの違いは何ですか?

異方性磁気抵抗 (AMR) センサとホール効果センサは、どちらも磁場を検出しますが、動作が異なり、それぞれ異なる特性があります。

 

動作原理
AMR センサは、強磁性体における磁化と電流方向とのなす角度による電気抵抗の変化を検出します。 ホール効果センサは、磁場にさらされたときに電流に対して垂直に生成される電圧を測定します。
感度
AMR センサは一般的にホール効果センサに比べて感度が高く、磁場の微小な変化を検出するのに適しています。
磁場方向
AMR センサは、センサと平行な磁場に反応します。 ホール効果センサは、センサに垂直な磁場に反応します。
設計の柔軟性
AMR センサは水平方向の磁場を検出できるため、柔軟に設計できます。 ホール効果センサでは、通常、センサの真上にマグネットを配置する必要があります。