離陸準備をする電動垂直離着陸機 (eVTOL)

TE の視点

空に向かって、電動航空機の未来を考えませんか

Ron Port、エアロスペース・ディフェンス&マリン(Aerospace, Defense & Marine) 事業部 プレジデント

電動垂直離着陸機 (eVTOL) は、今後数年にわたるアーバン・モビリティを再構築し、従来の航空機設計に関する考え方を変革する可能性があります。 飛行機でオヘア国際空港に降りてから、交通渋滞に巻き込まれることなくシカゴの中心部まで行けることを想像してみましょう。ユナイテッド航空は、早ければ2025年にもバッテリー駆動式のeVTOLによってこれを実現することを予定しています。このeVTOLは、電気乗用車と高級車のような内装を備えた特大型ドローンを掛け合わせたような、新しいタイプの航空機です。

 

当初、これらのeVTOL「エア タクシー」はヘリコプターと同様の飛行規定に従うため、ヘリポートと同様に運用される予定です。しかし、似ているのはそこまでです。この新しい航空機の設計は、消費者グレードおよび商用グレードの電気自動車における進歩の恩恵を受けています。実際、当面使用される開発中のほとんどのモデルは、窮屈なヘリコプターや小型機というよりも、2人から6人乗りの非常に快適な自動車に近いものです。

 

eVTOLの開発は、EVの開発と同じではありませんし、従来の飛行機の開発とも異なります。「電気自動車」を飛行させるには、重量と航続距離の最適化が必要になります。何かを宙に浮かす場合、わずかな重量も無視できるものではありません。遠くまで行こうとするほど、より大きなのバッテリーが必要になり、そのため重量も増えます。また、充電時間も重要な考慮事項です。eVTOLを早く再浮上させることができれば、それだけ収益も上がります。

 

このような検討も経て、比較的少人数の乗客を収容して短距離を飛行することに重点を置いた、eVTOLの新しいビジネスモデルが形作られました。したがって、これらの航空機を設計・製造する企業は、従来の航空宇宙メーカーとは異なる点を重視します。すなわち、迅速にモデル固有システムの設計・試験・認定を繰り返し進めます。 

 

今もって十分な信頼性および安全基準が必要とされる急速なプロセスにおいて、TE Connectivity(以下TE)は、EVや航空宇宙環境での使用に認証評価を受ける材料と製品開発の幅広い経験を活かして、付加価値とイノベーションを生み出すeVTOL開発でお客様と綿密に連携することができます。

新たなクラスの航空機に新たなクラスの部品を

eVTOLの一部の技術は、他の用途からほぼそのまま移転されています。 たとえば、商用電気自動車の充電コンポーネントとシステムは、航空機の用途に比較的容易に適合します。しかし、eVTOLに必要な空中での要件は、高速道路で求められるものと大きく異なります。


eVTOLは、比較的低い高度で、短時間の飛行が頻繁に行うことが予想されます。これらの条件下では、極めて耐久性の高い部品が必要です。もちろん、どのような航空機向けに製造される部品でも、安全性、品質、信頼性は不可欠です。しかし、これらの航空機は人口密度の高い地域を比較的低い高度で飛行するため、それらの重要性はさらに高まります。したがって、耐久性と信頼性の高い高電圧給電システムが必須です。

 

TEはこのニーズに応えるため、配電ユニットおよび電力切り替えコンタクタのほか、配電、アビオニクス、インフォテインメントシステムを接続する電気ケーブルおよび光ファイバケーブルを提供し、航空機の安全性、信頼性、快適性の向上に貢献しています。さらに、航空宇宙用途における過酷な条件向けに開発された高電圧コネクタを最適化し、この初期世代のeVTOLへの電力供給に必要な100~600キロワットを対応可能にします。

 

TEはエンジニアと協力してeVTOL設計を最適化することで、一見些細でありながら本質的な差別化を可能にする経験を生かすことができます。たとえば、丸形ケーブルから平型ケーブルに変更することで、軽量化と熱特性の改善、ケーブルの柔軟性の向上、そして機体内での占有面積の削減が実現し、旅客の快適性が向上されることができます。

都市全域を移動する eVTOL。

お客様のeVTOLイノベーションに応えるパートナー

航空機設計への新たなアプローチ

eVTOLを開発している企業は、従来の航空機メーカーと比較して、部品サプライヤとの異なる協力関係を求める傾向があります。 通常、eVTOL 開発者はアジャイル設計の原則を取り入れているため、週単位や月単位ではなく日単位で新規の設計の反復を行うことを希望しています。したがって、そのような開発者は市販の既製部品を設計に組み込むことが容易になり、初期製造コストを抑制し、交換部品のメンテナンス費用を削減することできます。

 

TEのようなメーカーは、航空システムの部品を設計して組み込んできた長い経験から得たエンジニアリング知識で、このニーズに迅速に対応することができます。そのような知識によって、安全性を損なわずに開発サイクルを加速させるために、eVTOLの開発エンジニアをサポートすることができます。また、商用車や乗用車などの隣接産業向けの部品を開発してきた経験によって、eVTOLメーカーが新しいクラスの航空機を推進する新しいシステムを開発する際に、従来の航空宇宙の常識と超えた発想でサポートすることができます。

スケーラビリティは都市移動革命をもたらす鍵になる

eVTOL産業が急速に拡大している中、その可能性を最大限に引き出すには、部品の一定レベルの標準化を進める必要があると考えられます。 外観上いかに設計が異なるように見えても、サイズおよび重量の最適化、電力供給、安全性、耐久性、信頼性といった中核的な設計上の課題を抱えています。

 

初期段階では、経験豊富なパイロットが操縦システムになじめるように、eVTOLは電子部品を備えたヘリコプターのように飛行することになると考えられます。また、サイズや重量が収容能力に影響する為、小型にもなります。

 

しかし、小型から始めることには利点があります。小型機での課題を解決することで、収容能力や航続距離を拡大する前にあらゆる課題を解決する多くの機会がもたらされます。最初のeVTOL機を離陸させるには、迅速な開発が重要になるのと同様に、市場での成果を収め続けるためには将来を見据えた部品を設計することも重要になります。

 

さらに、TEはこれらの航空機の製造に使用する部品を、将来大型機体で使用することを想定して設計することができます。バッテリー密度は、長距離飛行可能な大型電動航空機を製造する上で、実用面での課題になっています。

 

重量とスペースを最小限に抑えながら、高電圧を安全かつ確実に対応できる部品の開発を続けることによって、次世代のバッテリー技術が実現したときに、空港から都心まで飛行する都市タクシーが、地域バスや市内高速鉄道のような乗り物に急速に進化する可能性があります。着陸場所とバッテリー充電能力、実用的で比較的限られたインフラニーズを満たすことにより、ジェットエンジンが登場して以来見たことのない形で、人々の移動手段に革命をもたらす可能性があります。

適切な部品によって可能性は無限大

eVTOLが都市と郊外をつなぐ新しい持続可能な交通手段を提供することで、アーバン・モビリティに対する考え方が一変させる可能性があります。 市場に受け入れられて大型化できる限り、より持続可能な民間航空機での移動へと進める第一歩にもなります。安全性と快適性の新たな基準を策定する、考え抜かれた設計は、この新たなクラスの飛行機を軌道に乗せる鍵になり、この先長くeVTOLを飛行させ続けることにも重要です。TEは、この革新に寄り添い続けます。

著者について

Ron Port, President, Aerospace Defense & Marine

Ron Port

Ron Portは、TEのエアロスペース・ディフェンス&マリン(Aerospace, Defense & Marine)事業部のプレジデントであり、ビジネスの成長と収益性に向上させる責任を負っています。この職務に就く過去15年間は、産業B2B企業で事業管理に携わっていました。経営管理、戦略、セールス&マーケティング、エンジニアリング、オペレーションおよびコーポレート事業開発などに関する約25年の経験を持っています。ピッツバーグ大学で化学工学の理学士号、経営学修士、そしてフロリダ工科大学で化学工学の修士号を取得しています。