TE の視点
オートメーションとコネクティング リビング部門、戦略、マーケティング、事業開発担当副社長、Lavanya Manohar
世界中の倉庫では、自律型ロボットが人間と協力して、これまで以上の速さで商品を出荷しています。このスピードに対する需要は高くなる一方です。 2 日以内の出荷と大量注文の履行を標榜している小売業者にとって、その成否は、商品の検索、ピッキング、梱包のプロセスを倉庫でどの程度自動化できるかにかかっています。当初は、バーコード スキャナを持った人間が倉庫の中を移動して、注文された商品を探し出し、出荷エリアへ持ち運んで梱包、発送していました。
大手小売業者は、このプロセスの所要時間を短縮するために、倉庫の在庫棚全体を移動して人間の発送担当者に商品を渡すことができるロボットに投資しました。ロボット技術のインテリジェント化と巧妙化が進むに伴い、ロボットが棚から商品を取り出し、それを出荷エリアに運ぶベルトコンベアに載せることで、システムを簡潔化できるようになりました。
この進化の次段階では、倉庫ロボットをどのように稼働するかを根本的に変える必要があります。これまでのシステムでは、人間の動作とロボットの動作が相互に独立していることが普通でした。次世代のロボットは、その稼働範囲を広げ、周囲の人間と同じ空間で作業できるようになりつつあります。このような変化を実現するには、ロボットの安全性、スマート化、小型化、自律化の推進が必要です。
認知力、器用さ、適応力、推論力の領域でロボットのスキルが人間に近づくに伴い、ロボット自体の大きさはますます人間に近くなっていきます。このようなロボットによるタスクも、当初は人間とロボットとの共同作業が中心となっていましたが、今後は人間が関与せずに全面的に自律動作するロボットに重点が置かれるようになります。この来るべき倉庫の進化は、コネクティビティ、ビルディング オートメーション、電力消費に大きな効果を及ぼします。
ロボットの機能が充実し、これまで以上に多くの作業を倉庫でこなせるようになるに伴い、 納期の短縮などの重要な目的を達成しながら、ロボットを安全で効率的に運用できるようにすることが求められます。
この 2 つの課題に対応するには、高度なセンサ、統合した安全システム、改善したコネクティビティがロボットに必要です。
ロボットが次のように人間のような知覚、器用さ、推論力を発揮するには、アップグレードしたセンサが必要です。
昼夜を問わず、また環境の過酷さに関係なく、あらゆる条件下で信頼性と安全性に優れた自律運転を確保することはきわめて重要です。センサとコネクティビティ ソリューションには、機能性のほかに耐久性も必要です。また、システムが複雑になるに伴い、クラウドに接続してメンテナンス上の問題がないか自己診断する機能があれば、倉庫でロボット全体の稼働を維持するうえで必要な時間とコストを削減できる可能性があります。
ロボットが何にも依存せずにその機動性を最大限に発揮することは困難です。 バッテリー動作の自律型ロボットが最大の効率で稼働するには、自身を定期的に充電できる必要があります。ロボットを充電器とドッキングして、人手を必要とせずにそのコンポーネントを確実な嵌合状態にすることは容易ではありません。ロボットは、それに割り当てた作業に応じてさまざまな大きさと形状になります。ロボットが運搬する荷重と担当する具体的な用途は、その動作がピッキング、配置、分類、検索のどれであるかに応じて異なります。
TE Connectivity の充電ソリューションは、ロボットが自律的に嵌合プロセスを管理できるように十分な許容範囲を確保しながら、確実な接続状態が得られるように設計されています。TE の充電コネクタは、関与するロボットの種類にも合わせて作られています。たとえば、重いパレットを運搬するロボットに使用する充電コネクタに対する要件は、個々の製品を棚から取り出す自動化移動ロボットの充電に使用するブラインド嵌合対応充電コネクタとは異なります。
どのような場合も、充電ステーションには、過酷な環境や汚染環境でも確実に機能するコネクタを装備する必要があります。ロボットを効率的に充電するうえで適切な大きさの電流を確実に伝送するライン フィルタも必要です。この嵌合回数は何十万回にも及ぶことが考えられます。充電器と充電ポートのどちらも、このサイクル全体にわたる部品の自動結合と自動分離に耐えられるように設計製造する必要があります。
ロボットの設計段階では、サイズと能力とのトレードオフがいつでも重要な検討事項です。 ほぼすべてのロボット製造元が、さまざまなペイロードのロボットを製造していますが、そのすべてに多岐にわたる能力要件があります。パレットより小さい荷重を扱う必要がないクロスドック施設であれば、機動性を制限したきわめて重いロボットを使用できます。一方、個々の商品のピッキングや薬局での薬品の仕分けができるロボットは、はるかに小型であることが必要です。
同時に、倉庫スペースが限られていることから小型のロボットが必要な場合、そのようなロボットに対しては電力、信号、トルクの要件が厳しくなります。このようなニーズに応えるため、TE のようなコンポーネント製造元は、これまで以上に小型でありながら機能性と信頼性に優れた部品の設計製造に重点を置いてきました。コンポーネント製造元が顧客の幅広い要求に応える革新的な製品を開発するに伴い、製品の設計と製造では高度な専門的能力がますます重要になります。
ロボット動作の洗練化を推し進めることで、現在は人手を必要としている多くの仕事をロボットに任せることができるようになります。 たとえば、ほとんどの倉庫では、一般的な注文サイズよりも大量の商品 (20 本の歯ブラシが入った箱など) を保管しています。この場合は、その箱をロボットが配送区域へ運び、注文された歯ブラシ 1 本をそこで人間がピッキングする必要があります。次世代のロボットは、その 1 本の歯ブラシを自律的に探し出してピッキングできるかもしれません。同様に、壊れやすく傷みやすい食料品の場合は、果物や野菜などの壊れやすい商品がロボットの動作によって損傷しないように、圧力やトルクをインテリジェントに管理する能力と、より高度な器用さがロボットに求められます。
このように複雑さの度を増す作業を実行できる倉庫ロボットでは、狭いスペースを迅速、安全に移動する能力と処理能力がますます重要になります。しかし、コンポーネント技術の進歩は、ロボットが活躍する場を広げ、倉庫のオートメーションを推進し続けています。これにより、ロボット オートメーションによって速度、能力、安全性の向上が見込める他業界の用途へロボットが進出する道が開きます。倉庫で新しい作業をロボットが担うようになる速度は飛躍的に速くなる一方です。これを受けて、電化、オートメーション、センシング、モビリティの重要な要素であるコンポーネントに対する需要も増加すると考えられます。
Lavanya Manohar
Lavanya Manohar は、TE Connectivity のオートメーションとコネクティング リビング部門で戦略、マーケティング、事業開発担当副社長を務めています。ロボット工学、ファクトリー オートメーション、倉庫オートメーション、センサー、コネクティビティなどの産業分野で 15 年以上にわたって培った製品、テクノロジー、コンサルティングの経験を活かして、デジタル トランスフォーメーションを成功に導き、AI 対応製品の開発と発売を成し遂げたほか、企業買収や大規模なグローバルチームの管理で実績を積んできました。ハーバード大学大学院経営研究科で MBA、インド工科大学マドラス校で工学の学位をそれぞれ取得しています。