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概要

フィルタ処理を使用してリレー コイルを駆動する

リレー コイルとは、鉄芯のあるボビン上に何度も巻かれた銅線です。十分に大きな電圧がコイル全体に印加されると、コイルと芯線は磁界を発生し、アーマチュアを引きつけます。そして、アーマチュアが接点の動きを制御します。ワイヤの長さとその断面積に応じて、コイルは電流に対して抵抗を生じます。オームの法則に従い、抵抗値が一定の場合は、電流の大きさがそのまま電圧の大きさに比例します。つまり、以下のようになります。

 

そのため、抵抗値が 120 Ω の DC 12 V コイルから得られる電流は 0.1 アンペアとなります。リレー コイルは、DC 電圧に対応したものもあれば、AC 電圧に対応したものもあります。DC (直流電流) 電圧は一定で、値は変化しません。ある瞬間において、DC 12 V 電源では正確に 12 ボルトが計測されます (通常は 10 分の数ボルト程度の誤差が生じます)。(図 1a を参照)

計算式 1.

そのため、抵抗値が 120 Ω の DC 12 V コイルから得られる電流は 0.1 アンペアとなります。リレー コイルは、DC 電圧に対応したものもあれば、AC 電圧に対応したものもあります。DC (直流電流) 電圧は一定で、値は変化しません。ある瞬間において、DC 12 V 電源では正確に 12 ボルトが計測されます (通常は 10 分の数ボルト程度の誤差が生じます)。(図 1a を参照)

図 1a. DC 電圧の波形

図 1a. DC 電圧の波形

対照的に、AC (交流電流) 電圧は値が常に変化します。Siemens Electromechanical Components 自己学習シリーズのレッスン 2「Understanding Relays (リレーについて)」で説明したように、たとえば、AC 120 V 電源の電圧は変化し続けます(図 1b を参照)。つまり、電圧がゼロから AC (交流電流) 電圧まで上昇したり下降したりする現象が常に発生し、値が変化し続けます。Siemens Electromechanical Components 自己学習シリーズのレッスン 2「Understanding Relays (リレーについて)」で説明したように、たとえば、AC 120 V 電源の電圧は変化し続けます(図 1b を参照)。

図 1b. AC電圧の変化

図 1b. AC電圧の変化

つまり、電圧がゼロからピーク電圧まで上昇し、その後はゼロを超えてマイナスまで下降し、またピーク電圧まで上昇してゼロまで下降します。このプロセスが連続的に繰り返されます。

 

たとえば、この AC 120 V 電源を 12 ボルトに変換して、DC 12 V のコイルに印加するとします。コイル電流を測定すると、オームの法則で計算した電流よりもはるかに低い電流がコイル (およびそのコイルに関連する回路) を流れていることがわかります。このようなコイル電流の低下は、交流電流に対するコイルのインピーダンスによるものです(インピーダンスとはインダクタンスの関数であり、交流電流が流れる場合のみ発生します)。

 

リレー コイルでは、アーマチュアを作動させるために一定量の電力を生み出す必要があります。電力は、電流の 2 乗と抵抗値の積 (P = I2 R) によって求められるため、コイルで生み出される電力量は、適切なリレー動作に必要な電力量よりもはるかに少なくなります。必要な電力を生み出すためには、十分な電流量を得られる値までコイル電圧を引き上げる必要があります。

 

つまり理論的には、AC を使用して DC リレーを動作させることは可能です。しかし実際には、そのような使い方は現実的ではありません。交流電流は半周期 (60 Hz の場合は、1 秒間に 120 回) ごとにゼロまで低下するため、リレーのアーマチュアは半周期ごとに復帰することになります。このようなアーマチュアの継続的な動作は、人間の耳で聴き取れる「ビビリ音」の原因となるだけでなく、アーマチュアの動作に伴って接点が開閉する原因となります。

 

AC 電源でリレーを駆動させるため、リレー製造元各社は隈取りリング (隈取りコイル) と呼ばれるデバイスをコアの先端に取り付けています(図 2 を参照)。隈取りリングを使うと、コアの一部で励磁されても、コアの残りの部分が磁化するまでの速度にある程度の遅延が生まれます。つまり、コアの一部と残りの部分の磁化に、若干の位相変位が生じることになります。そのため、隈取りリングが取り付けられていないコアの磁気エネルギが半周期ごとにゼロに低下しても、取り付けられているコアの部分ではアーマチュアを吸着する磁気エネルギを保ち続けることになります。隈取りリングが取り付けられている部分のエネルギがゼロに低下するまでには、コイルおよび隈取りリングが取り付けられていないコアの磁気エネルギが、電流値の上昇に伴って再び上昇し始めます。

 

図 2 - AC コイルで隈取りリングを使用して、AC の半周期ごとに磁気エネルギがゼロに低下しても、リレーのアーマチュアが復帰しないようにする

図 2. AC コイル

図 2. AC コイルで隈取りリングを使用して、AC の半周期ごとに磁気エネルギがゼロに低下しても、リレーのアーマチュアが復帰しないようにする

R10 シリーズ (AC コイル) リレーの「隈取り」

 

R10 (および競合製品) リレーでは、独自の手法によってコイルに「隈取り」、つまり位相変位を生み出しています。図 3 に示すように、コイル上部側の AC 電圧がマイナスに転じると、ダイオード M1 がコイルの下部側に電流を流します。 

図 3. R10 シリーズ AC コイル
図 3. R10 シリーズ AC コイルは、整流ダイオードと「デュアル コイル」配置を使用して、半周期ごとにアーマチュアが復帰しないようにする

M1 はコイルの上部側と並列に配置されているため、コイルの上部側には電流は流れません。しかし、コイルの半分が磁化され、結果として生じるコアの磁力により、コイルの上部側でも磁気エネルギが生まれます。先ほど説明したように、このようなコイルの半分に伝わる磁気エネルギの遅延により、電流がゼロに低下した場合でもアーマチュアを固定することができます。

 

AC 電圧が戻ると、ダイオード M2 が導通を行い、M1 はオフになります。今度は、コイルの上部側にコイル電流が流れ、引き続き前の半周期と同じ極性で磁力を生み出します。そのため、アーマチュアが復帰することはありません。すでに説明したように、コイルの非導通部分が「隈取り」として機能し、アーマチュアを吸着し続けます。ダイオードはリレー コイルと直列に配置され、AC 電圧を整流する役割を担っています。ただし、AC 回路ではダイオードをコイルと並列に配置することはできません。このようにすると、ダイオード上で電圧がマイナスに転じたときに、リレーではなくダイオードで導通が発生してしまいます(また、電流を制限するデバイスが直列で配置されていないため、初回の導通時にダイオードが破損してしまいます)。

AC リレーでの DC

 

AC による DC リレーの駆動が非現実的であるのと同様に、DC による AC リレーの駆動も非現実的です。ただし、やむを得ない状況では DC による AC リレーの駆動は可能です。この場合、事前の注意事項を考慮しなければなりません。最初に考慮すべき点は、リレーのコアとアーマチュアの間に残存する磁力を消磁する何らかの手段を用意することです。これにより、コイルの電力が遮断された後も、無視できない大きさの磁力がコアに残存していることで、アーマチュアが「張り付く」状況を回避します。次に考慮すべき点は、使用する DC 電圧の大きさが、コイルの AC 電圧定格を超えないようにすることです。

 

消磁について考慮するのは、アーマチュアが所定の位置に保持されているときは、物理的に (磁気によって) コアに接触するように AC リレーが構成されているためです(DC リレーでは、アーマチュアの小さな銅製のピンが、アーマチュアとコアの電磁接触を効果的に防いでいます)。AC リレーを AC 電圧で駆動させている限り、コイル電力の遮断後に残留磁力によってアーマチュアが保持されてしまっても問題ありません。ただし AC リレーを DC 電圧で駆動する場合は、残留磁力によってアーマチュアが保持されることには危険が伴います。最低でも、コアに残留した磁力は、リレーのドロップアウト電圧の低下につながります。

 

残留磁力の影響を打ち消すために、AC リレー コアの先端に小さなマイラー テープ片を貼り付けることができます。このテープはきわめて耐久性が高く、(数千回といえないまでも) 数百回の動作にも耐えられます。テープの厚さは、0.002 インチ~ 0.004 インチです。

 

コイル電圧で必要な低減量については、KR シリーズのリレー コイルを考慮します。AC 12 V コイルの DC 抵抗は 24 Ω です。オームの法則に従って 12 ボルトを 24 Ω で割り、電流量は 0.5 アンペアということになります。ただし、KR シリーズのデータシートで示されているように、コイルが実際に得る電流は、わずか 0.168 アンペアです(これは、コイル インピーダンスによるものです)。この 0.168 アンペアという電流量は、コイルが目的どおりの動作を行うのに十分な電力を生み出します。しかし、0.5 アンペアの電流から生み出される電力量は 6 ワットです。これは、許容される最大電力を超えています。そのため、コイルは過熱状態になり、ワイヤの被膜が焼けてしまいます。これにより、コイル巻線どうしの短絡が発生します。コイルにはさらに多くの電流が流れることになり、最終的には完全に焼損します。

 

DC で AC コイルを使用するには、コイルの電力が上限に収まるように DC 電圧量を下げる必要があります。ここでも、KR について考えてみましょう。開放型ユニットの最大電力定格は 4 ワットです。DC 抵抗が 24 Ω の AC 12 V コイルで使用する DC 電圧は、次のように求められます。

計算式 2.

つまり、DC 電圧は 9.8 ボルトを超えてはなりません。データ シートに示されている値は、定格値の 75% で DC 電圧を使用した場合の動作値なので、この例の DC 電圧は 7.35 ボルトを下回ってはなりません。

 

 

 

整流された AC を使用してリレー コイルを駆動する場合は、フィルタ処理が最適な手法となります。図 4a に示されているように、整流されフィルタ処理されていない AC には、電圧のピークと谷、つまり最大値と最小値が生まれます。最小値が定格電圧の 75% 以下である必要がある場合、アーマチュアは動作する場合があります。図 4b に示されているように、フィルタ処理によりリプルが排除されます。そのため、整流され適切にフィルタ処理された AC には、認識できるリプルは発生しません。

図 4a. 整流されフィルタ処理されていないAC には最大値と最小値が生まれる

図 4a. 整流されフィルタ処理されていないAC には最大値と最小値が生まれる

図 4b. 整流され適切にフィルタ処理された AC には、認識できるリプルは発生しない

図 4b. 整流され適切にフィルタ処理された AC には、認識できるリプルは発生しない

フィルタ処理を使用してリレー コイルを駆動する

リレー コイルとは、鉄芯のあるボビン上に何度も巻かれた銅線です。十分に大きな電圧がコイル全体に印加されると、コイルと芯線は磁界を発生し、アーマチュアを引きつけます。そして、アーマチュアが接点の動きを制御します。ワイヤの長さとその断面積に応じて、コイルは電流に対して抵抗を生じます。オームの法則に従い、抵抗値が一定の場合は、電流の大きさがそのまま電圧の大きさに比例します。つまり、以下のようになります。

 

そのため、抵抗値が 120 Ω の DC 12 V コイルから得られる電流は 0.1 アンペアとなります。リレー コイルは、DC 電圧に対応したものもあれば、AC 電圧に対応したものもあります。DC (直流電流) 電圧は一定で、値は変化しません。ある瞬間において、DC 12 V 電源では正確に 12 ボルトが計測されます (通常は 10 分の数ボルト程度の誤差が生じます)。(図 1a を参照)

計算式 1.

そのため、抵抗値が 120 Ω の DC 12 V コイルから得られる電流は 0.1 アンペアとなります。リレー コイルは、DC 電圧に対応したものもあれば、AC 電圧に対応したものもあります。DC (直流電流) 電圧は一定で、値は変化しません。ある瞬間において、DC 12 V 電源では正確に 12 ボルトが計測されます (通常は 10 分の数ボルト程度の誤差が生じます)。(図 1a を参照)

図 1a. DC 電圧の波形

図 1a. DC 電圧の波形

対照的に、AC (交流電流) 電圧は値が常に変化します。Siemens Electromechanical Components 自己学習シリーズのレッスン 2「Understanding Relays (リレーについて)」で説明したように、たとえば、AC 120 V 電源の電圧は変化し続けます(図 1b を参照)。つまり、電圧がゼロから AC (交流電流) 電圧まで上昇したり下降したりする現象が常に発生し、値が変化し続けます。Siemens Electromechanical Components 自己学習シリーズのレッスン 2「Understanding Relays (リレーについて)」で説明したように、たとえば、AC 120 V 電源の電圧は変化し続けます(図 1b を参照)。

図 1b. AC電圧の変化

図 1b. AC電圧の変化

つまり、電圧がゼロからピーク電圧まで上昇し、その後はゼロを超えてマイナスまで下降し、またピーク電圧まで上昇してゼロまで下降します。このプロセスが連続的に繰り返されます。

 

たとえば、この AC 120 V 電源を 12 ボルトに変換して、DC 12 V のコイルに印加するとします。コイル電流を測定すると、オームの法則で計算した電流よりもはるかに低い電流がコイル (およびそのコイルに関連する回路) を流れていることがわかります。このようなコイル電流の低下は、交流電流に対するコイルのインピーダンスによるものです(インピーダンスとはインダクタンスの関数であり、交流電流が流れる場合のみ発生します)。

 

リレー コイルでは、アーマチュアを作動させるために一定量の電力を生み出す必要があります。電力は、電流の 2 乗と抵抗値の積 (P = I2 R) によって求められるため、コイルで生み出される電力量は、適切なリレー動作に必要な電力量よりもはるかに少なくなります。必要な電力を生み出すためには、十分な電流量を得られる値までコイル電圧を引き上げる必要があります。

 

つまり理論的には、AC を使用して DC リレーを動作させることは可能です。しかし実際には、そのような使い方は現実的ではありません。交流電流は半周期 (60 Hz の場合は、1 秒間に 120 回) ごとにゼロまで低下するため、リレーのアーマチュアは半周期ごとに復帰することになります。このようなアーマチュアの継続的な動作は、人間の耳で聴き取れる「ビビリ音」の原因となるだけでなく、アーマチュアの動作に伴って接点が開閉する原因となります。

 

AC 電源でリレーを駆動させるため、リレー製造元各社は隈取りリング (隈取りコイル) と呼ばれるデバイスをコアの先端に取り付けています(図 2 を参照)。隈取りリングを使うと、コアの一部で励磁されても、コアの残りの部分が磁化するまでの速度にある程度の遅延が生まれます。つまり、コアの一部と残りの部分の磁化に、若干の位相変位が生じることになります。そのため、隈取りリングが取り付けられていないコアの磁気エネルギが半周期ごとにゼロに低下しても、取り付けられているコアの部分ではアーマチュアを吸着する磁気エネルギを保ち続けることになります。隈取りリングが取り付けられている部分のエネルギがゼロに低下するまでには、コイルおよび隈取りリングが取り付けられていないコアの磁気エネルギが、電流値の上昇に伴って再び上昇し始めます。

 

図 2 - AC コイルで隈取りリングを使用して、AC の半周期ごとに磁気エネルギがゼロに低下しても、リレーのアーマチュアが復帰しないようにする

図 2. AC コイル

図 2. AC コイルで隈取りリングを使用して、AC の半周期ごとに磁気エネルギがゼロに低下しても、リレーのアーマチュアが復帰しないようにする

R10 シリーズ (AC コイル) リレーの「隈取り」

 

R10 (および競合製品) リレーでは、独自の手法によってコイルに「隈取り」、つまり位相変位を生み出しています。図 3 に示すように、コイル上部側の AC 電圧がマイナスに転じると、ダイオード M1 がコイルの下部側に電流を流します。 

図 3. R10 シリーズ AC コイル
図 3. R10 シリーズ AC コイルは、整流ダイオードと「デュアル コイル」配置を使用して、半周期ごとにアーマチュアが復帰しないようにする

M1 はコイルの上部側と並列に配置されているため、コイルの上部側には電流は流れません。しかし、コイルの半分が磁化され、結果として生じるコアの磁力により、コイルの上部側でも磁気エネルギが生まれます。先ほど説明したように、このようなコイルの半分に伝わる磁気エネルギの遅延により、電流がゼロに低下した場合でもアーマチュアを固定することができます。

 

AC 電圧が戻ると、ダイオード M2 が導通を行い、M1 はオフになります。今度は、コイルの上部側にコイル電流が流れ、引き続き前の半周期と同じ極性で磁力を生み出します。そのため、アーマチュアが復帰することはありません。すでに説明したように、コイルの非導通部分が「隈取り」として機能し、アーマチュアを吸着し続けます。ダイオードはリレー コイルと直列に配置され、AC 電圧を整流する役割を担っています。ただし、AC 回路ではダイオードをコイルと並列に配置することはできません。このようにすると、ダイオード上で電圧がマイナスに転じたときに、リレーではなくダイオードで導通が発生してしまいます(また、電流を制限するデバイスが直列で配置されていないため、初回の導通時にダイオードが破損してしまいます)。

AC リレーでの DC

 

AC による DC リレーの駆動が非現実的であるのと同様に、DC による AC リレーの駆動も非現実的です。ただし、やむを得ない状況では DC による AC リレーの駆動は可能です。この場合、事前の注意事項を考慮しなければなりません。最初に考慮すべき点は、リレーのコアとアーマチュアの間に残存する磁力を消磁する何らかの手段を用意することです。これにより、コイルの電力が遮断された後も、無視できない大きさの磁力がコアに残存していることで、アーマチュアが「張り付く」状況を回避します。次に考慮すべき点は、使用する DC 電圧の大きさが、コイルの AC 電圧定格を超えないようにすることです。

 

消磁について考慮するのは、アーマチュアが所定の位置に保持されているときは、物理的に (磁気によって) コアに接触するように AC リレーが構成されているためです(DC リレーでは、アーマチュアの小さな銅製のピンが、アーマチュアとコアの電磁接触を効果的に防いでいます)。AC リレーを AC 電圧で駆動させている限り、コイル電力の遮断後に残留磁力によってアーマチュアが保持されてしまっても問題ありません。ただし AC リレーを DC 電圧で駆動する場合は、残留磁力によってアーマチュアが保持されることには危険が伴います。最低でも、コアに残留した磁力は、リレーのドロップアウト電圧の低下につながります。

 

残留磁力の影響を打ち消すために、AC リレー コアの先端に小さなマイラー テープ片を貼り付けることができます。このテープはきわめて耐久性が高く、(数千回といえないまでも) 数百回の動作にも耐えられます。テープの厚さは、0.002 インチ~ 0.004 インチです。

 

コイル電圧で必要な低減量については、KR シリーズのリレー コイルを考慮します。AC 12 V コイルの DC 抵抗は 24 Ω です。オームの法則に従って 12 ボルトを 24 Ω で割り、電流量は 0.5 アンペアということになります。ただし、KR シリーズのデータシートで示されているように、コイルが実際に得る電流は、わずか 0.168 アンペアです(これは、コイル インピーダンスによるものです)。この 0.168 アンペアという電流量は、コイルが目的どおりの動作を行うのに十分な電力を生み出します。しかし、0.5 アンペアの電流から生み出される電力量は 6 ワットです。これは、許容される最大電力を超えています。そのため、コイルは過熱状態になり、ワイヤの被膜が焼けてしまいます。これにより、コイル巻線どうしの短絡が発生します。コイルにはさらに多くの電流が流れることになり、最終的には完全に焼損します。

 

DC で AC コイルを使用するには、コイルの電力が上限に収まるように DC 電圧量を下げる必要があります。ここでも、KR について考えてみましょう。開放型ユニットの最大電力定格は 4 ワットです。DC 抵抗が 24 Ω の AC 12 V コイルで使用する DC 電圧は、次のように求められます。

計算式 2.

つまり、DC 電圧は 9.8 ボルトを超えてはなりません。データ シートに示されている値は、定格値の 75% で DC 電圧を使用した場合の動作値なので、この例の DC 電圧は 7.35 ボルトを下回ってはなりません。

 

 

 

整流された AC を使用してリレー コイルを駆動する場合は、フィルタ処理が最適な手法となります。図 4a に示されているように、整流されフィルタ処理されていない AC には、電圧のピークと谷、つまり最大値と最小値が生まれます。最小値が定格電圧の 75% 以下である必要がある場合、アーマチュアは動作する場合があります。図 4b に示されているように、フィルタ処理によりリプルが排除されます。そのため、整流され適切にフィルタ処理された AC には、認識できるリプルは発生しません。

図 4a. 整流されフィルタ処理されていないAC には最大値と最小値が生まれる

図 4a. 整流されフィルタ処理されていないAC には最大値と最小値が生まれる

図 4b. 整流され適切にフィルタ処理された AC には、認識できるリプルは発生しない

図 4b. 整流され適切にフィルタ処理された AC には、認識できるリプルは発生しない