トラックと夕陽

トレンド

トレンド実現におけるイーサネットの重要性

産業用および商用の車両や機械では、将来の顧客からの要求に完全に応えられるように、イーサネット システムを取り入れた設計を検討する必要があります。

著者

Joachim Barth、研究開発/製品開発エンジニアリング マネージャ、および Christian Manko、データ接続プロダクト マネージャ、TE Connectivity

元々は『Elektronik journal』誌の「Special edition electromechanics」として公開された記事です 

農業や建設業などで使用するヘビー デューティー車両は、車両の種類によっても異なりますが、数年以上の耐用年数を想定して製造されるのが一般的です。 そのためメーカー各社は、顧客に長期的な価値を提供できるように、将来のトレンドを見据えて設計する必要があります。技術が変化するペースは速いため、そのような設計は困難を伴います。ただし、産業および商業輸送業界が持つ利点の 1 つとして、自動車業界で既に実証済みの将来に重点を置いたアプリケーションから知識や技術を応用できる点が挙げられます。

産業および商業輸送の分野では自動化された機能とデータ接続の需要が増加の一途をたどっており、CAN バス プロトコルは早急にその限界に達しようとしています。環境性能や安全性、生産性といった需要を後押しする大きな流れの中で最先端のポジションを確保するためには、近い将来やその後の顧客からの要求に完全に応えられるように、イーサネット システムを取り入れた設計を検討する必要があります。

農業、建設、トラック輸送の各産業

産業車両および商用車の業界では、次世代型のトラック・バス・オフロード車両がより安全で環境に優しく、接続性と生産性が高くなるような設計に取り組んでいます。 これを実現するため、高度な自動化機能の導入が進められています。これは、元々乗用車用に開発されたもので、生産性の向上と総所有コストの低減を目的としています。
新しいヘビー デューティー車両では、運転者支援やオートメーション機能、インフォテインメント オプション、360 °カメラ システム、高速な車両対車両 (V2V) および車両対インフラストラクチャ (V2I) 通信のほか、さまざまな必須の安全機能も標準的な要件になりつつあります。現在この業界はレベル 2、つまり部分的な自動化を実現している状態です。当社では今後 4 ~ 5 年でレベル 4、つまり最新の車両には高度な自動化機能が導入されるものと予期しています。そのため、ISO 26262 および将来の基準に適応できるように、設計だけでなく開発プロセスや品質管理プロセスの一部としても機能的な安全性を取り入れる必要があります。
将来の商用車は周囲の環境や進行先経路に関する多くの情報を「認識する」ことになり、本部などの拠点にフィードバックを送信して分析させることで、性能と生産性を向上させるように対処できます。このような技術とこの後説明する技術により、ドライバーの満足感と生産性が向上するほか、車両所有者の総所有コスト (TCO) が低減し、優れた性能フィードバックがメーカーにもたらされます。

トレンド

以下の説明は、今後市場に出現することが予想されるトレンドのほんの一例を示したものに過ぎません。

On-Highway Trucks and Buses

トラックやバスなどのオンハイウェイ車における 3 つのトレンドは、安全性・生産性・持続可能性を確保した運用であり、新しい車両の設計で対処する必要があります。このような車両のドライバーに死角が生じると、他の車両や自転車、歩行者との事故につながるおそれがあります。たとえば、ドイツをはじめとする世界各国では、ヘビー デューティー車両のドライバーが死角を原因として、右折時に歩行者や自転車との事故を起こしています。ドイツなどの各国では、ヘビー デューティー車両にセンサとカメラを搭載し、高度な死角検出とアラームによってこのような事故を回避できるようにすることを義務付ける法整備が急がれます。テレメトリにより、オンラインでの貨物の手配と経路計画が促進されるだけでなく、運転行動が改善されるため、安全性と生産性の向上にもつながります。道路状況に応じた最適な車両の速度は、予測的な走行制御が判断します。これにより燃料が節約されるほか、中断が発生しないため、ドライバーにとっては道路上での生産的な時間が増えることになります。車両対車両通信により、複数ドライバーの車両の隊列走行が実現します。これにより安全性が高まり、燃料消費量が低下します。車両対インフラストラクチャ通信は、先進運転者支援システム (ADAS) に不可欠な要素であり、最終的には完全な自動運転へとつながります。このような機能はすべてセンサのネットワークと高速/低レイテンシのデータ接続に依存しています。

Off-Highway Construction and Mining Vehicles

Off-Highway Construction and Mining Vehicles

オフハイウェイ車両はその大きさや車体構成から、深い溝や穴、不均一な地形をならしたり乗り越えたりするときに、事故や横転を起こす可能性が高くなります。このような状況で、変化に富んだ地形でドライバーが安全に作業を行い、安全な作業現場を作り上げるためには、最新の 360° カメラ システムによる支援が欠かせません。生産性の観点からは、メーカーには機械を確実かつ効率的に運転する多数の技術を顧客に提供することが求められます。ここで課題となるのは、環境から重要な情報を取得してリアルタイムな反応を実現しながら、ほこりや化学物質、水、大きな振動、熱衝撃にも耐えられる接続です。技術の進歩に伴い、建設機器や採鉱機器ではこのようなデータ接続を活用したスマート化と自動化が推進され、最終的には完全な安全性が確保された遠隔地からオペレータが作業できるようになることが予想されます。また、信頼性や生産性、コストの面では、予防的な診断も有用なツールといえます。高度な機能を活用することで、車両や機械が故障する前に、部品の障害発生や交換が必要になる時期を予測できます。これは特に、オフハイウェイの建設車両と農業機械の両方で有用です。このような車両や機械が突然停止し、長期にわたって作業が止まってしまうと、多額のコストが発生する可能性があります。

Agricultural Vehicles and Machinery

Agricultural Vehicles and Machinery

農業において非常に重要なトレンドとなっているのが生産性と持続可能性であり、特に現地の資源 (水の供給や大気質など) に対する影響を最小限に抑えるように農業従事者にプレッシャーがかかっている場合に当てはまります。農業機械における接続と自動化の進歩により、このような主要な課題に対処できる正確な農業とスマートな農業が実現および改善します。たとえば、雑草の手入れや農薬の散布をより正確に実施できるようになるため、近隣の土地や農場、飲料水の供給に影響を与えることなく、可能な限り多量の作物を生産することができます。将来の農業機械は、センサやデータおよび接続を活用して天候パターンを把握し、天候に合わせて播種や灌漑、農薬散布から、農場の最後の収穫や最後の作物まで計算を行います。農業機器のメーカーは、農場のすべての作物を検出および識別し、管理的な判断を下せる車両を製造する必要があります。これにより、最終的にはコストの低減と持続可能性の改善につながります。

このようなトレンドと技術は、すべて高度なネットワーク インフラを必要とします。これは、増加するデータ需要の処理に対応し、車両内だけでなく車両から別の車両、あるいは倉庫や管理センター、さらにメーカーなど、別の場所とのあらゆる通信を可能にするものでなければなりません。 このようなネットワークには、高速なデータ伝送を低レイテンシで実現し、過酷な条件でも動作することが求められます。これまでは CAN バス アーキテクチャが、車両ネットワークのバックボーンとして役割を果たしてきました。設計者は、安全性や生産性の向上を目的として、より多くの自動化機能の導入を目指していますが、高度な車両機能で必要とされるデータ帯域幅は、CAN 単独で処理するには大きすぎます。そのため、まずは高い帯域幅と性能が要求される領域でイーサネットへの移行が始まっていますが、自動化の普及が進み、システム全体でより高い性能と帯域幅を取り入れる必要が生じれば、最終的には CAN を置き換えることになるでしょう。

 

現在のところ、ADAS 用の車載センサ システムおよび接続システムはほとんどが専用のシステムです。適応走行制御などの機能やアプリケーションは、それぞれが電子制御ユニット (ECU) にデータを供給するためのレーダー/ライダとコネクタを備えています。このような車両の自動化機能とセンサの融合が進むと、複数のセンサから取得したデータを組み合わせて分析できるようになるため、より正確な位置情報や環境情報を収集するうえでの重要性が増すことになります。たとえば、乗用車のセンサで舗装路だけでなく建設現場や採鉱場、農業地の障害物を検出する必要がある場合、そのセンサでは材質の特性も検出する必要があります。一例を挙げると、農場のコンバインで農地の作物を収穫しているときに、その経路で棒状の障害物が検出された場合は、その物体が機械で容易に対処できる軽量な棒なのか、放置された鋼製のパイプなのかを認識できる必要があります。後者の場合はコンバインが損傷を受け、運転を停止させて修理に出す必要が生じ、何らかの対策を取らなければならなくなる可能性があります。このような処理を正確かつ迅速に実現するには、さらなるコンピューティング能力が必要とされます。

 

このような融合モデルでは、車載の複数あるいはすべてのアプリケーションにわたりセンサを相互接続し、単一の ECU につなげます。処理対象のデータ量が多くなるほど高い帯域幅が必要になり、高い帯域幅を処理するためには高速なデータ通信を処理できるコネクタとケーブル、そして最大で 1 Gbit/s のデータ伝送を確実に処理できるイーサネット ネットワークが必要になります。


このようなタイプの技術と自動化機能に移行することで、エンジニアにとってはまったく新しい課題が生まれることになります。それは、最も過酷な環境でも確実に動作し、長期の使用にも耐えられる車両を設計することです。

MCON イーサネット コネクタ
MCON イーサネット コネクタ
HDSCS イーサネット コネクタ
HDSCS イーサネット コネクタ

産業用および商用の車両設計者は、車載の接続システムおよびネットワークのアップグレードに目を向けていますが、多くの高速データ用途は、過去数年間に自動車業界で開発されてきたコネクタ技術を使用して設計することができます。 ただし、商用車が直面する環境や課題は、乗用車やライト デューティー トラックと比較してはるかに過酷であることが一般的です。ほこり・土・湿気・極端な高温・激しい振動にさらされることが多い用途では、TE Connectivity (TE) が提供する密閉型 MCON および HDSCS (ヘビー デューティー防水型コネクタ シリーズ) イーサネット コネクタなどの新しいコネクタを使用できます。MCON コネクタは最大で 1 秒あたり 100 MB のデータ接続が必要とされる用途で使用できます。また、HDSCS は最大で 1 秒あたり 1 Gbit の伝送が可能です。

 

MCON コネクタの新しい密閉型イーサネット コネクタ技術は、過酷な環境での商用車のフィールド メンテナンスを可能にします。堅牢な全二重電線対電線接続を提供し、多機能ディスプレイ、テレマティックス、テレメトリ ユニット、インフォテインメント モジュール、メディア アクセス コントローラ、外部カメラ、検知モジュールなどの用途に対応します。

MCON コネクタの利点:

  • 最適で高品質な設計によって、製造コストとサービス コストを削減
  • より高い信頼性を実現する多接点技術
  • 接点保持を確保する設計の二次ロック機能を内蔵
  • 2 種類のコーディングと複数のパネル厚によりモジュール用途に対応
  • OEM では既存のハーネス メーカーのサプライ チェーンを活用可能

HDSCS イーサネット コネクタは、堅牢で過酷な環境下での使用に耐える熱可塑性樹脂コネクタで、TE の新しい MATEnet 相互接続システムと組み合わせることができます。 この電線対電線および電線対デバイスのコネクタ システムは、商用車の信頼性と品質のニーズを満たすように設計されており、非シールドまたはシールド ツイストペア ケーブルを使用することで、複数のハイブリッド インタフェースと拡張性を実装する柔軟性を実現します。

HDSCS コネクタの利点:

  • 長期使用の信頼性を改善し、製造コストとサービス コストを削減できるように最適化 
  • 接点保持を確保する二次ロック機能による確実な接続 
  • 事前ロック位置で提供される信頼性の高いスライド ロック機構による確実な取り扱いと低い挿入力
  • 電線対電線および電線対基板に対応したモジュール用途を念頭に設計されており、インライン・防水フランジ・PCB マウントの各取り付けオプションに対応

当社の新しいコネクタの用途

どちらのソリューションも、レーダー、ライダ、カメラ、テレマティック ユニット、オンボード診断、ヘッドアップ ディスプレイ、計器類、インフォテインメント アプリケーション、イーサネット アーキテクチャなど、ほとんどすべての過酷な環境用途に対応できます。

インフォテインメント

安全性

ネットワーク

市場での競争力を維持し、安全性・生産性・持続可能性を実現する自動化のトレンドと機能性を先取りするには、設計者やメーカーは最新の設計にイーサネットを取り入れ、増大したデータ接続の要件に対応できるようにする必要があります。 これを実現する最良の方法は、早期の段階から (TE などの) エンジニアリング専門家に相談し、センシングおよびコンピューティング能力の増大を実現しながら過酷な条件でも信号の完全性を維持できる革新的なコンポーネントを設計および製造するために必要なトポロジとテクノロジについて助言を提供してもらうことです。