ネットワークに接続された工場の生産性をロボットが向上

トレンド

相互接続性の最適化

自動運転車から工場のロボットまで、生産プロセスを統合する IoT 対応マシンを通して、世界とつながる新しい方法をエンジニアは思い描いています。- Mark Maas (イノベーティブ プラットフォーム ビジネス開発マネージャ)

メディアでは、日々、IoT (モノのインターネット) について新しい話題が取り上げられています。それらの多くは、装置が他の装置と自律的に通信できるという展望や危険性にフォーカスして語られています。 自動で機能する装置や遠隔地からハッキングされた装置が人間にもたらす脅威に目を向けているのです。しかし、IoT についてあまり語られていないことがあります。それは、人間がルールに沿ってプログラミングしたセンサをどのようにして装置に備え、他の装置の一連のデータをどのようにして効率的に伝え、そのデータを使用して効果的かつ正確、安全に特定の重要なステップで実行するのか、ということです。自己監視型ネットワークや適応学習装置を作ることで、私たちが知っているM2M通信をさらに発展させることができます。これらの装置はデータをリアルタイムに生成して送信することができ、私たち人間のニーズを実現するために設計された即時性かつ複雑な相互接続性を提供できる手段なのです。

メーカーにとって、装置を通信可能にしない場合、生産活動を調整するチャンスを逃すことになります。

しかし、このレベルに統合したパフォーマンスの達成と、現状の一般的な性能は大きくかけ離れています。 現在、IoT に関する議論の多くを消費者が行っています。そこでは、デバイスによって毎日の仕事がどのように便利になるかという観点で IoTが論じられています。つまり、モバイルなどでボタンを押すだけで、テレビのチャネルを変えたり、別のラジオ局に切り替えたり、照明の明るさや室内の温度を調整できるという便利さの実現について議論されているのです。このレベルの接続なら、マシン・ツー・マシン統合というよりもむしろ遠隔機能の話です。

「人間の行動」や「自身の環境」から学習する装置と関連したIoT について考えると、大きな可能性が広がります。 1 つの例として、NEST サーモスタットです。人間の設定した入力内容を検出して処理し、その情報を使用して建物内の温度を予知は、私たちが実現できるほんの一部にすぎません。この接続性を次の段階に進めるために、次のような可能性を考えてみましょう。あなたはいつも平日午後 6 時ちょうどに帰宅するとします。NEST サーモスタットはそのことを知っていて、午後 6 時の帰宅時にインテリアがちょうどよい温度になるように自宅を温めます。しかし、ある日、車が渋滞に巻き込まれていつもより 20 分遅く帰宅することになったとします。あなたの自動車のシステムはこの遅れを検出し、その影響を計算してサーモスタットに新しい到着予定時間を送信します。サーモスタットはそれに反応して自らを再プログラムします。つまり、予想される到着時間や、現在、今後の気象状況に合わせて予熱予冷運転を調整します。その結果、家庭でのエネルギ使用量が削減でき、光熱費の節約につながります。このシナリオから、特に建築全体や都市全体などの大規模なケースでは、スマートコネクティビティを装置に組み込むことで大きな利点があることがわかってきます。これにより、IoT は、長期的なコストパフォーマンス、資源の配分、全体においての便利さを向上させる包括的な戦略が加わることになります。

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現在、産業分野では、M2M通信はほとんど見られません 私たちが今日所有している装置は、反復作業を人間に強いるものがほとんどです。フットボールチームと似たところがあります。競技場の選手がコミュニケーションを取らずに個人プレーをすると、試合に勝つことができません。この例えを産業分野に当てはめてみてください。現在の工場にある装置やロボットは通信をしないので、それらの装置の生成するデータは各装置内に留まったままです。統合されていないこのシステムには、価値の高い作業を必要に応じて行う柔軟性がありません。メーカーにとっては、装置を通信可能にしない場合、生産活動を調整するチャンスを逃すことになります。このような欠陥によって、余計な処理や、切り替え作業のためにダウンタイムが頻繁に生じ、必要のないときでも装置が稼働を続ける必要があります。

このポイントを現実的に達成するためには、生産を「最初から正しく行う」アプローチが必要です。それは、IoT 対応の M2M通信によって実現可能です。

スマートファクトリでは、装置やロボットに M2M通信と相互接続性に対応した技術 (ハードウェアおよびソフトウェア) が備わっています。 この技術によって、同一工場内での装置間のデータ転送が容易になるとともに、スマートフォンやスマートガーメントなどの各種デバイスを通して、インターネットで接続されたインフラストラクチャやユーザへのデータ転送も容易になります。このスマート コネクティビティによる転送を通して、装置が生成した生データが他の装置 (およびネットワークやクラウド) に転送されてビッグ データ分析などの技術で処理されることで生産がリアルタイムに把握できるようになります。この情報から、装置は取り得る手段を自律的に決定することができます。ただし、それは、特定の種類の運転効率向上のために調整された、装置の動作システムにプログラムとして組み込まれている特定のパターンやルールのパラメータの範囲内で行われます。たとえば、使用されるエネルギを減らす手段として生産作業が完了した直後に休止モードに変えるなどの手段になります。これらのルールとパターンによって、生産がかつてないほど柔軟になります。

ネットワーク接続された作業場で、人間にとって危険な作業をロボットは行うことができます。
ネットワーク接続された作業場で、人間にとって危険な作業をロボットは行うことができます。
センサを装備したロボットによって装置が通信できるようになり、スマートな環境が実現します。
センサを装備したロボットによって装置が通信できるようになり、エネルギ効率のよいスマートな環境が実現します。

工場のトップレベルから、消費者によってすべてが制御されているといえます。 私たち消費者は、新しいバージョンの製品が品質、速度、価格、効率性の点で改善されることを期待しています。また、個別の設定や要件に合わせてカスタマイズされることを望んでいます。この大量生産が行われている世の中で、個々が自己表現をすることを誰もが求めているからです。乗用車 MINI は、そのようなカスタマイズの良い例です。  顧客は、利用可能な多彩なオプションから選択し、独自の車だと思うデザインを自分でカスタマイズし、自らの個性を示します。大量生産でこのレベルのカスタマイズを実現するには、まったく新しい生産へのアプローチが必要になります。そのためには、バッチ サイズ 1 のようなものが必要です。それは究極的な願望ではありますが、独自の携帯電話のようなものであれば不可能ではありません。この段階に現実的なコストで達するためには、「最初から正しく行う」アプローチが必要です。それは、IoT 対応の M2M通信によって実現可能です。このアプローチではなく現在の生産アプローチでカスタマイズを行うと、独自の携帯電話にかかるコストは非常に高くなります。

変化の実現

従来の工場からスマートファクトリに移行するには、次の 4 つの重要な前提条件を満たすことが必要です。

標準化

標準化は諸刃の剣になります。高度なアプローチを実現して相互接続性を確保するためには標準が必要ですが、標準を明確にして確立するには時間がかかります。この時間の遅れが、導入の障害になることがあります。そして、これによって、あるアプローチが標準になることで技術革新が断念されてしまうことがあります。なぜなら、特にビッグ データのことが話題になった場合に、標準から離れることに反対する人が出てくるかもしれないからです。むずかしいのは、技術の進化と成熟は非常に速いということです。そして、多くの場合、標準はこの技術革新の速度についていけません。その結果、標準が成長のチャンスを奪うことがあるのです。とはいえ、前に進むこと、そして最初からやり直すことを繰り返さないことは、ある程度の標準がきちんと存在する場合にのみ可能になります。 

スマート コネクティビティ

スマート コネクティビティは、相互接続性も含め、多種多様なデバイスや装置に対する据付が簡単なソリューションを実現しています。スマート コネクティビティの構成要素は、センシングとコネクティビティです。センサはデジタルの神経系を整備し、コネクティビティは入力のネットワーク化を可能にします。ネットワーク化されたこれらの入力は (センサ由来の) デジタル化された入力であり、ネットワークやクラウドに送られます。これは装置や業務と統合されなければなりません。それによって、人間やプロセス、システムに役立ち、意思決定が向上することになります。現在の産業環境では多くの装置はネットワーク接続されていません。つまり、通信をしていません。これらの装置を接続しようとする場合、これらの装置が生成するデータ量について考える必要があります。今日では、ほとんどの場合、このデータは限定的なものになっています。生産において IoT の利用から最大限の利益を得るためには、メーカーは装置内部のセンシング機能を増やす必要があります。また、すべてのデータを解放してネットワーク化された入力に利用し、意思決定を向上させなければなりません。

要求される品質、期待される結果、そして大幅な ROI を迅速に生み出す小さなプログラムを実行することで、エンジニアは IoT 発展への明確な道筋を確立することができます。

セキュリティ

ビッグ データ、クラウド、および IoT では、装置とデータのセキュリティや保護に関して大きな懸念を持たれています。自律車両をハッカーが遠隔地から乗っ取り、加速させたりブレーキを掛けたりするという話がよくあります。これは恐ろしい話です。この分野については、いっそうの注意が必要です。そして、データに関する保護についても考える必要があります。データに関する法律、特にデータの所有者および転送方法と管理方法についての法整備が必要です。

短期的 ROI

小さな投資ではっきりとした収益が得られることから、マシン・ツー・マシンの進歩に対する長期的なサポートや取り組みを促す動きを進めることができます。産業の環境において、 多くの場合、高い ROI (投資利益率) が求められるものの、上級経営層にとって意味のある具体的な予測や発言を行うことが困難です。そのような場合、ビジネスの実例を小規模なものから早急に提示することが非常に重要です。従来の工場をスマートファクトリに再構成するためにはインフラ、コネクティビティ、クラウド、解析ツールを新しく導入する必要があり、非常に高いコストがかかります。これに加えて ROI を明確に予想できないということもあり、賛同を得るのが非常に困難になっています。エンジニアは、要求される品質、期待される結果、そして大幅な ROI を迅速に生み出す小さなプログラムを実行することで、IoT 発展への明確な道筋を確立することができます。

IoT に関するほとんどの議論に宣伝や誇張があるにもかかわらず、スマート コネクティビティからメーカーが大きな ROI を生み出す見込みがあるという認識は高まりつつあります。 これは、メーカーに従来の工場をスマートファクトリ (ネットワーク接続された工場) に変えさせるのに役立つ鍵になります。そのために、達成可能で現実的な成功の青写真を上級経営層は求めています。そして、上級経営層は IoT が大幅な生産向上や無駄の削減を実現できるという仕組みを理解する必要があります。必要とされるこれらの情報を満たすため、IoT 投資の正しさを説明する際に、エンジニアは、まず重要な疑問に答える必要があります。その疑問とは、予想される業績の改善は IoT の直接の結果か、あるいは、IoT だけが改善を容易にする方法なのか、というものです。これに答えるには、IoT に投資する 3 つの利点を中心に話を進めてください。

コスト削減

主な削減は、運用効率向上と関連があります。採用が実現して大規模に行われるにつれ、変更のコスト、すなわち採用や実装のコストも下がっていきます。

透明性

業務に関する知見が深まることで、メーカーは改善点を特定しやすくなります。たとえば、製品の生産ライフサイクル全体を追跡することで、各ユニットの実際の製作コストを追跡できます。それによって、価格設定がより正確になります。さらに、製品の寿命や性能に影響を与える変更内容に関するデータを収集できます。製品がその用途に対して適切な仕様であるかどうか、オーバースペックやアンダースペックではないかどうかを判断することもできるでしょう。そして、製品の全寿命を通して監視し、状況の変化に応じてどのように機能するかを追跡することができます。この透明性によって、ユーザに提供する製品の性能情報に、故障の起こりやすい時期も含めることができるようになります。ユーザは、その情報を利用して、故障が発生する前に新しい製品を注文して古い製品と置き換えることができます。その結果、ユーザは予定外のダウンタイムを回避できるようになります。 

エネルギ効率

IoT に接続した装置を使用することで、信頼性の高い方法でエネルギを使用できるようになります。すべての装置を接続することによって、特定の装置の動作する時間を測定することができます。すなわち、ネットワーク接続された工場を通して装置のネットワークからデータが伝えられ、装置はそのデータに基づいて必要なときにのみ動作します。また、装置に故障やシャットダウンが発生した場合に、他の装置がすぐに応答することができます。続いて、必要に応じて、そしてプログラムされている解決方法のとおりに、生産を減速させたり生産プロセスを変更したりします。 

ネットワーク接続された工場では、応答時間を向上させる重要な情報を装置が測定および伝達します。

ネットワーク接続された工場では、応答時間を向上させる重要な情報を装置が測定および伝達します。

今後の数年間のうちに、メーカーは IoT 技術に投資しなければならない時期が来るでしょう。 そこに至るために、エンジニアリング コミュニティは、1 つ 1 つの成功例をお互いに共有し、企業に伝え、さらに大きな実業界にも伝えていく必要があります。現在、ドイツでは、Industrie 4.0 (産業用 IoT) は工業化された生活の 4 つ目の革命と受け取られています。このことは、Henry Ford の話を思い起こさせてくれます。Ford 氏の起業したころ、彼のライバルは馬車でした。自動車が馬車に取って代わることは決してないと言う人も少なくありませんでした。当時は馬車が標準的な交通手段だったのです。しかし、今となってみればわかるように、その標準的な手段は、より優れた新しい手段や考え方に取って代わられました。 

サクセスストーリーを築く

IoT の持つ潜在的なグッドポイントを実証するため、エンジニアは IoT 革命が企業の業績に与える意味を示す必要があります。サクセス ストーリーを構築するときは、小さく始めて、証明可能なデータに基づき確実にポイントを上げるようにしてください。まず 1 台の装置から始めて節減効果を記録してサクセス ストーリーを巧みに作成。潜在的利益を組織全体に拡大しましょう。これらの話は IoT に関してありがちな偏見や恐れに反論するために役立ち、むしろ、IoTやスマート コネクティビティ、ネットワーク化された工場への信頼を広げる効果があるでしょう。装置を接続するメリットを示すことにより、生産ラインに沿ったすべてのタッチ ポイントの接続と統合を改善するだけで、自社の生産拡大、予定外のダウンタイムの削減、業務上の柔軟性の向上、生産力を向上が可能になることをビジネス リーダーに対して示すことができます。