Tinel-Lock バックシェル

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要求の厳しい防衛用途向けの Tinel-Lock バックシェル

Tinel-Lock バックシェル技術は、編組ケーブル シールドの結線において独自のバランスの取れた特性を提供し、堅牢で費用対効果の高い性能を実現します。

軍用車両や航空機の電子システムは、過度の衝撃、振動、温度サイクル、電磁干渉 (EMI) にさらされます。 これらのストレスは特にケーブル ハーネス、その中でも特にケーブルとコネクタ バックシェルの間の、シールドやシーリング システムの機械的な取り付け点となる部分に影響を与えます。金属ケーブル編組をバックシェルに固定する技術はさまざまに存在します。設計者にとっての課題は、特定の地上車両や航空機の用途に適した、コスト、取り付けやすさ、堅牢性の観点から適切な機構を選択することです。TE Connectivity (TE) は、TXR シリーズ バックシェルとともに Tinel-Lock 技術を開発しました。この技術は、編組ケーブル シールドの結線において独自のバランスの取れた特性を提供し、堅牢で費用対効果の高い性能を実現します。

結線の課題に応える設計

バックシェルにはいくつかの機能があります。まず、ハーネスをワイヤの摩擦から保護することで、ハーネス ルーティングの管理を可能にします。また、シーリング用の熱収縮メモリ ブーツを装着するための溝があり、EMI 遮蔽用のハーネス編組やシールド用の取り付け点も備えています。ケーブルの周囲の導電性シールドは、電場電圧と磁場電圧をアースに流すために使用されます。これがないと、ケーブルがアンテナとして働く可能性があります。つまり、ケーブルが EMI を拾ったり、ノイズを伝送したり、さらには他のケーブルからのエネルギーを「クロストーク」の形で放射することさえあります。ケーブル シールドの金属編組をバックシェルに適切に固定することは、EMI を遮蔽するために不可欠です。また、最適な固定方法を選択することで、低い DC 抵抗という形での電気導通の確保と強力な物理的取り付けが可能になり、ケーブル ストレイン リリーフと環境的に密閉されたソリューションが必要な場合には熱収縮ブーツを装着できます。

 

典型的な Tinel-Lock 結線システムには、コネクタ、バックシェル、環境接着剤が付いたオプションの熱収縮メモリ ブーツ、ケーブル、ケーブル編組、編組をバックシェルのランディング領域に固定するための Tinel-Lock リングが含まれます (図 1)。

図 1: Tinel-Lock リングとオプションの熱収縮ブーツを使用した結線システム
図 1: Tinel-Lock リングとオプションの熱収縮ブーツを使用した結線システム

Tinel-Lock 技術は、形状記憶金属リングを加熱後に収縮させて編組を結線し、360° 均一な円形接続を実現します。そのケーブル結線は激しい衝撃や -65°C ~ 200°C の温度サイクルに耐え、優れた電気導通性、耐振動性、耐腐食性を持ちます。Tinel-Lock バックシェルは、ニッケル、銀、スズめっきされたケーブル編組の結線に使用できます。

 

後述する他のケーブル結線方法と比較して、Tinel-Lock ソリューションには取り付けに関していくつかの利点があります。

取り付けに必要な技能の軽減

事前成形されたワンピース メタル構造の Tinel-Lock リングは、その円形の形状を記憶しています。取り付け後、Tinel-Lock リングは元の直径に戻り、わずかに収縮して編組の周囲に均一に固定されます。

 

TE AD-5000 Tinel-Lock 組み立て工具は、Tinel-Lock を取り付けるために特別に設計された手動式の抵抗加熱装置です (図 2)。

図 2: TE AD-5000 取り付け工具は、Tinel-Lock を正しい位置にシールド接続するために使用します。
図 2: TE AD-5000 取り付け工具は、Tinel-Lock を正しい位置にシールド接続するために使用します。

取り付け手順は次のとおりです。まず、Tinel-Lock リングを編組ケーブルに通します。次に、バックシェル挿入口の外形に合うように編組を開きます。編組/シールド材をバックシェルに押し込み、編組/シールド材がランディング領域を完全にカバーしてバックシェルのショルダーに突き当たるまで押します。次に、Tinel-Lock をケーブルに沿ってスライドさせます。Tinel-Lock をケーブルに対して垂直になるように持ち、バックシェルのショルダーの手前の、挿入口から 3 mm 離れた位置で止めます。

 

AD-5000 取り付け工具の電源を入れ、工具のノッチ付き電極を使用して Tinel-Lock をバックシェルに接触させずに把持します。足踏みペダルを踏んで電極に電力を供給します。これで、Tinel-Lock リングは直ちに加熱されます。

適切な取り付けのための視覚的インジケータ

適切な取り付け温度に達すると、Tinel-Lock リングの外側表面に塗布されている熱変色性ペイントのドットの色が変わります。ペイントが黒に変わったらすぐに足踏みスイッチを放し、電極を外します。数秒で Tinel-Lock の温度が下がり、元の円形からわずかに収縮して、360° の均一な圧力で編組を所定の位置にしっかりと固定します。

取り付けやすいサイド エントリ設計もある

サイド エントリ Tinel-Lock を使用すると、リングをハーネスに事前に通さずに、ケーブルまたはハーネス シールドを自製のコネクタ バックシェル アセンブリやその他のケーブル結線デバイスに接合できます。低背でバックルが付いていないサイド エントリ設計は、開口部の端に連結部が付いています (図 3)。これにより、コネクタやケーブルの取り外しや修理が必要になった場合に、コネクタのピン止めを解除することなく、結線にアクセスするために Tinel-Lock を簡単に取り外すことができます。取り付けの際は、まずサイド エントリ Tinel-Lock リングを開いてシールドを囲むように装着します。次に、抵抗ヒーターまたは単純なヒートガンを使用してリングを加熱します。リングが最終的な回復形状まで加熱されたら、リングに塗布された熱変色性ペイントの色が変わります。 

図 3: サイド エントリ Tinel-Lock リング
図 3: サイド エントリ Tinel-Lock リング

性能上の利点

どのハーネス システムでも、EMI 保護の強さは最も脆弱なリンクによって決まります。シールドは完全な導体ではなく、シールド システムに穴があると、外部の磁場や電場がケーブルに浸透する可能性があります。つまり、ハーネスを設計する際はあらゆるコネクティビティが重要になります。

 

どの遮蔽処理を選ぶかは、特定のケーブル編組タイプと、予想される周波数範囲に対して必要な遮蔽性能によって決まります。

 

EMI シールドの性能は、ミリタリ用遮蔽バックシェルのタイプによって大きく異なります。シールド効果は、ある特定の周波数 (MHz) における電磁場遮蔽 (dB が高いほど優れている) と電気抵抗 (ミリオームが低いほど優れている) の観点から測定されます。図 4 は、Tinel-Lock リングと別のタイプのバックシェルを比較したものです。

 

  • 標準的なバンディング バックシェルでは、ケーブル シールドをバンド ストラップまたはマグネフォーム クリンプ リングで結線できます。バンド ストラップは、最初は平らな金属片で、これを円形にする必要があります。施工者が工具を使用してバンドを慎重に下方に引き、しっかりとした均一な円状にします。バンド ストラップは一般的なソリューションですが、不均一な張力が加えられてバンドが破断強度に達した場合は新しいバンドを再装着する必要があります。バンド ストラップの代替策として、編組がマグネフォーム リングで取り付けられたバックシェルを供給できます。編組の長さは通常、6 インチ、12 インチ、または 18 インチです。この編組付きバックシェルを既存のケーブルに柔軟に接合できます。ただしそれでも、バックシェルの事前供給された編組をハーネスまたはケーブルの編組に接合するときには別の手法が必要になります。編組付きバックシェルは経済的ではありますが、最終的な取り付け時に編組の穴が変更された場合、バックシェルの EMI 遮蔽効果は損なわれる可能性があります。
  • Tinel-Lock TXR シリーズ バックシェルは Tinel-Lock リング技術を採用しており、1 MHz から 1,000 MHz の電磁スペクトル範囲でコストと遮蔽効果のバランスを取ります。その遮蔽効果は、TXR シリーズ バックシェルを機器から直接出ているハーネスで使用するか、あるいは熱収縮ブーツと組み合わせて使用するかにかかわらず、一貫しています。角度の付いた出口が必要な場合は、ストレート TXR シリーズ バックシェルと、加熱後に 45° または 90° の角度に戻る成形熱収縮ブーツを組み合わせることができます。
図 4: 2 種類の結線タイプの EMI 効果の比較
図 4: 2 種類の結線タイプの EMI 効果の比較

環境および用途に関する考慮事項

Tinel-Lock バックシェルは、加熱後に均一かつしっかりと収縮する形状記憶金属リングによって編組が固定されるため、激しい衝撃、振動、温度サイクルに対する固有の耐性を備えています。熱的には、Tinel-Lock は非常に安定した材料で、-50°C 〜 200°C の温度範囲で編組をしっかりと固定します。Tinel-Lock アセンブリを補完するため、接着剤付きの熱収縮成形ブーツを追加できます。この構成を使用すると、バックシェルとケーブル ジャケットの間のケーブル ストレイン リリーフが環境的に密閉されて強化され、配線にかかる応力とひずみが軽減されます。Tinel-Lock 技術は、MIL-DTL 5015、MIL-DTL-26482、MIL-DTL-38999 シリーズ コネクタやその他の MIL-STD に準拠した製品に適した TXR シリーズ遮蔽バックシェルで使用できます。

 

バックシェルの材料

  • アルミニウムは、強度が高く軽量で費用対効果の高い材料であり、多くの用途で選ばれています。
  • ニッケル アルミニウム青銅は、過酷な塩水/海洋環境での使用に適しています。
  • ステンレス鋼 303、304、316 グレードは、優れた耐腐食性と耐薬品性を持つ耐食鋼 (CRES) で、アルミニウムより強度が高く、顧客の用途要件に合わせて表面処理ができます。

表面処理オプションの例

  • カドミウムは、ミリタリおよび産業用のコネクタやバックシェルで昔から使用されている標準仕上げで、塩水噴霧に対する優れた耐腐食性を持っています。
  • 無電解ニッケルは、無反射仕上げや高い耐腐食性が必須でない産業用途や高温用途で一般的に使用されています。
  • 硬質アルマイト コーティングは、表面硬度と耐摩耗性が主要な基準である場合に使用されています。硬質アルマイト処理の被膜は、標準的なアルマイト処理よりもはるかに厚くなります。
  • 亜鉛コバルトは、同じ厚さの従来の亜鉛めっきと比較して耐腐食性が強化されためっきです。特定の金属に亜鉛とコバルトを電気めっきすることによって、従来の亜鉛めっきの最大 6 倍の耐腐食性を持つ均一な延性が得られます。
  • ショットブラストは、ニッケル アルミニウム青銅およびステンレス鋼の材料を無反射仕上げにするために使用されます。
  • 黒亜鉛ニッケルは、最新の特定有害物質使用制限 (RoHS) に準拠した、コネクタやバックシェルの環境めっきソリューションです。また、他のめっき材料との親和性も非常に高くなっています。

 

バックシェルの機能 — そしてさらにその先へ

今日のミリタリ用電子システムやハーネスに使用するバックシェルを選択する際は、経済性、取り付けやすさ、物理的堅牢性、材料の適合性、電気特性のバランスを取る必要があります。設計者が最適なものを選択できるように、TE は幅広い Tinel-Lock バックシェル、コネクタ、ケーブル、ツーリングや、さまざまな用途の課題に応える完全なハーネス機能を提供しています。設計支援から試験、試作品製作、ツーリング、大規模生産に至るまで、当社の専門知識は、地上や空中の過酷な環境に直面する電子システムを構築しようとしているお客様の具体的な目標の達成をサポートします。

主なポイント

  • TE は、TXR シリーズ バックシェルとともに Tinel-Lock 技術を開発しました。この技術は、編組ケーブル シールドの結線において独自のバランスの取れた特性を提供し、堅牢で費用対効果の高い性能を実現します。
  • Tinel-Lock バックシェルを使用したコネクタは、激しい衝撃、振動、温度サイクルに対する固有の耐性を備えています。これらはすべて、軍用車両や航空機の電子システムに共通の課題です。
  • Tinel-Lock 技術は、形状記憶金属リングを加熱後に収縮させて編組を結線し、360° 均一な円形接続を実現します。
  • 他のケーブル結線方法と比較して、Tinel-Lock ソリューションには、取り付けに必要な技能の軽減、適切な取り付けのための視覚的インジケータ、取り付けやすいサイド エントリ設計など、取り付けに関していくつかの利点があります。

 

TE が防衛に関する新たな課題の解決をどのように支援できるかをご説明します