Q: 最も一般的なタイプのプラチナ RTD 素子は何ですか?

A: 最も一般的なタイプのプラチナ測温抵抗体 (RTD) 素子は、Pt100 です。Pt100 RTD は、0°C (氷点) 時のベース抵抗値が 100 Ω で、薄膜または巻線の形で提供されています。

 


 

Q: プラチナ薄膜素子はさまざまなサイズが提供されていますが、どれを選べばいいのでしょうか?

A: 標準サイズは次の 4 種類です (L x W x T)。

 

新規設計の場合は通常、PTFC 外形をお勧めします。その理由は、比較的単価が低く、付加価値の高いプローブやアセンブリ用のさまざまなハウジングに適合する汎用性があるからです。お客様の多様な設計要件に応えるため、他のサイズもご用意しています。大きさや応答時間が重視される場合は、外形寸法をより小さくできるサイズのものが役立ちます。また、より大きなサイズを利用する場合やより大きな電力を必要とする場合に適したオプションもあります。次の表は、素子のサイズに基づく特性の一部をまとめたものです。

 

小型素子 大型素子
応答時間が速い 応答時間が遅い
自己発熱係数が高い 自己発熱係数が低い
推奨測定電流が低い 同じ電力で自己発熱による誤差が小さい
面積の小さいハウジングに適合 センシングの接触面積が広い

 


 

Q: 自己発熱係数とは何ですか?

A: 自己発熱係数とは、素子を通過する電力量に基づいて、素子の自己発熱量または温度上昇を定義するものです。このような温度上昇は、温度測定の誤差につながる可能性があるため、好ましくありません。

 

たとえば、空気流量が 1 m/s のときの PTFD 外形の自己発熱係数は 0.33°C/mW です。これは、デバイスを通過する電力が 1 mW 上がるたびに素子の温度が外気温より 0.33°C ずつ高くなることを意味しています。

 

経験則では、自己発熱による誤差が要求精度の 10% を超えないようにすることが望まれます。したがって、たとえば公差等級 A の PTFD 素子は、0°C 時の精度が通常は ±0.15°C であるため、自己発熱による誤差を 0.015°C 以下に抑える必要があります。つまり、±0.015°C / 0.33°C/mW = 0.045 mW から、電力を 0.045 mW までに制限する必要があります。

RTD のような抵抗素子の電力は I2R に等しいため、Pt100 素子の Max I は SQRT (0.045mW/100Ω) で求められ、0.0213 A (21.3 mA) となります。

 


 

Q: TCR とは何ですか? また、どのように計算するのですか?

A: 抵抗の温度係数 (TCR) とは、0°C 時に 11 Ω の抵抗値を示す仮想的な RTD の、1 K あたりの平均抵抗増加量のことです。TCR は、一般的にサーミスタに関連するアルファ (α) に似ています。TCR は、0°C ~ 100°C の範囲での抵抗値の平均的な変化を示し、次の式を使用して算出します。

 

TCR=(R100-R0)/(R0*100)°C

 


Q: 0°C 以外の温度では、Pt 薄膜素子の抵抗はどのように計算するのですか?

A: プラチナ RTD 素子の計算式は、DIN EN 60751 において次のように定義されています。

T ≥ 0°C の場合: RT = R0 * (1+a * T + b * T2)

T < 0°C の場合: RT = R0 * [1+a * T + b * T2 + c * (T-100°C) * T3]

係数: a = 3.9083E-03、b = -5.775E-07、c = -4.183E-12

 


 

Q: 0°C 以外の温度での温度公差を教えてください。

A: これらの RTD 素子の精度は DIN EN 60751 で定義されており、次の式に従います。

 

公差等級 互換性 温度公差範囲
F0.1 (T=AA) ± (0.1+0.0017*|T/°C|) °C (-30 … +200°C)
F0.15 (A) ± (0.15+0.002*|T/°C|) °C (-30 … +300°C)
F0.3 (B) ± (0.3+0.005*|T/°C|) °C (-50 … +600°C)
F0.6 (C=2B) ± (0.6+0.007*|T/°C|) °C (-50 … +600°C)

 

|T/°C| は温度 (°C) の絶対値

 


Q: 2 種類のリード ワイヤ (「金めっきニッケル ワイヤ」と「銀ワイヤ」) の違いは何ですか?

A: 金めっきニッケル ワイヤは、600°C までの全温度範囲で動作しますが、銀ワイヤの動作温度は 300°C までとなっています。金めっきニッケル ワイヤは主に、溶接またはろう付けによって素子に接続する場合に使用されており、銀ワイヤははんだ付けに適しています。

 


 

Q: これらの素子は、それぞれの精度等級に指定された温度範囲の範囲外で動作しますか?

A: Pt 薄膜素子はすべて同じ材料と工程を使用して製造されますが、各素子の対応する精度等級に基づいて試験とキャリブレーションが行われます。つまり、どの素子も -200°C から +600°C までの全温度範囲で動作しますが (金めっきニッケル ワイヤの場合)、精度温度範囲の範囲外で使用した場合、キャリブレーションされた精度は保証されません。

 

たとえば、精度等級 A (F0.15) の素子は、DIN EN 60751 で定義されている精度に合わせて、-30°C から +300°C までの温度範囲でキャリブレーションされます。この範囲外で使用しても素子が損傷することはありませんが、部品のキャリブレーションにわずかなずれが発生し、元の精度仕様が保証されなくなる場合があります。

 


 

Q: プラチナ薄膜素子には、どのような仕様が適用されていますか?

A: プラチナ薄膜 (PTF) 製品群は、DIN EN 60751 の仕様に適合するように設計・製造されています。

  • IEC 60751 と ASTM E1137 の仕様はよく似ています。 
  • IEC 60751 とDIN EN 60751 の仕様はまったく同じものです。
  • DIN 仕様は、基本的には IEC 仕様にカバー ページが追加されたものです。 
  • DIN EN 60751 と ASTM E1137 の各仕様は、どちらも標準的な 3850 ppm/K 温度係数プラチナ曲線に適用されること、および ITS-90 温度スケールに基づいていることから、非常によく似ています。これら 2 つの仕様の大きな違いの 1 つは、公差等級が次のように定義されていることです。

 

DIN EN 60751 ASTM E1137
公差等級 公差の定義 公差等級 公差の定義
クラス F0.3 (クラス B) ±(0.3 + 0.005 |T|) グレード B ±(0.25 + 0.0042 |T|)
クラス F0.15 (クラス A) ±(0.15 + 0.002 |T|) グレード A ±(0.13 + 0.0017 |T|)

|T| は温度 (°C) の絶対値

 


 

Q: 素子に加えて、アセンブリのカスタム パッケージを作成することは可能ですか?

A: はい。TE Connectivity は、付加価値を伴うプローブとアセンブリを専門としており、標準的な RTD アセンブリを提供するほかに、お客様のニーズに正確に適合するカスタム RTD アセンブリの製造も承っています。このアセンブリは、素子と AWG# が大きい延長リード線に熱収縮チューブを取り付けただけの簡単なものから、金属ハウジング、延長リード線、シーリング、コネクタを含む高耐久化されたアセンブリにまで及びます。詳細については、RTD プローブとアセンブリをご覧ください。