LVDT リニアポジションセンサの指定

トレンド

トランスデューサ設定の
ヒント

特定の用途向けの LVDT リニアポジションセンサを探すときには、多くの製品仕様を理解して、適切なトランスデューサを設定しなければならないことがよくあります。

要件を満たす LVDT 変位センサを指定するためのヒントは次のとおりです。
測定範囲は?

センサは特定の測定範囲で機能するように設計されています。LVDT リニアポジションセンサは、約 ±0.010 インチから ±10 インチまでの測定に最も適しています。この範囲に入らない特殊な例はありますが、ほとんどがこの範囲内に収まります。

用途は?

幅広い用途を理解することが、多くの選択肢から絞り込んで、最適な LVDT の機械的インタフェースを見つけることにつながります。たとえば、自動システムを使用する組み立てラインで品質測定チェックを行う場合や、運動が完全に線形ではなく左右横方向の運動も含む場合は、スプリング式 LVDT が有効な選択肢になる可能性があります。このタイプのセンサは、品質管理や試験を行う研究室や、アセンブリ作業、工作機械、生産ライン検査で使用するのに適しています。

線形バルブ位置測定には、おそらくセパレート コア LVDT (図 1 参照) が最適です。動作に摩擦のないフリーコア LVDT は、通常、ガイド付きコア (スプリング式) ユニットより安価で、幅広い範囲に対応するさまざまなサイズがあります。

図 1: セパレートコア LVDT には可動部があります。

図 1: セパレートコア LVDT には、芯線と呼ばれる、透磁性材料による分離した管状電機子の可動部があります。コイルの中空ボア内で軸方向に自由に移動でき、位置を測定する物体と機械的に結合します。LVDT の出力特性は、芯線の位置の違いによって変わります。

スペースの制約はあるか?

お客様の状況によっては LVDT を取り付ける十分なスペースがない場合があります。スペースが問題になるときは、より小型の LVDT (TE Connectivity Miniature 3/8" LVDT など) が狭い場所でも使用できる可能性があります。 

環境についての考慮点

ちり、ほこり、湿度、噴流の激しい環境や屋外にセンサが設置される場合、外部媒体の巻線への侵入を確実に防止するようにハーメチック シールされた LVDT を推奨します。外部媒体が侵入すると、センサの耐久性や信頼性が低下するからです。穏やかな環境や屋内研究所の環境では、ハーメチック シールされていない標準的なトランスデューサを利用すると初期コストを削減できます。

作動油のあるシリンダ内の用途では、「ベント式」 LVDT が適しています。ベント式の LVDT リニアポジションセンサは、センサのコイル アセンブリのベントによって LVDT リニアポジションセンサ内外の圧力を等化するため、高圧・高温・衝撃・振動の影響を同時に受けても耐えることができます。

放射に対する適度な耐性を持ち、水中・高圧・大気の環境下においても動作する特殊な構成の LVDT もあります。たとえば、センサが海水に直接接触する場合は、一部のステンレス鋼を LVDT の構造に使用できません。海中の環境に耐えるには、海水に対する耐薬品性の高い特殊な合金で LVDT ケーシングが作られている必要があります。このような超合金を使うことによって、デバイスが海水に完全に接触した状態で、最大海深 15,000 フィートで約 7,500 psi の圧力を外部から受けても、LVDT アセンブリは長期耐用年数の要件を満たします。十分な信頼性を持つ LVDT アセンブリの信頼性をさらに高める材質です。

合金 400 は微生物によるピッチングや攻撃に対して優れた抵抗性を持つニッケルベースの特殊な合金です。酸素レベルの高い、浅くて暖かい水域で動作するセンサに有効です。表面に海洋生物が発生することはありません。深度 7500 フィートの海中で 3500 psi を超える外部圧力を受ける用途では、インコネル、チタン、およびハステロイが優れた耐腐食性を発揮します。ニッケル、クロミウム、モリブデンの含有量が多いからです。

耐圧性と耐腐食性に優れた合金 625 または合金 718 で設計された LVDT アセンブリは、デバイスが海水に完全に接触する状態が何年も続いても、高い信頼性を維持します。これらの合金はステンレス鋼よりもコストがかかりますが、酸化や還元の影響を受けず、局部腐食を起こしません。無機物絶縁体を含むコバルト、ニッケル、クロミウムのような特殊合金を採用すれば、LVDT の性能をさらに高めることになり、これに匹敵する技術は存在しなくなるでしょう。

図 2: DC 駆動の LVDT
図 2: DC 駆動の LVDT には内部信号調整があります。外部 AC 励磁の容積、重量、コストを考慮しなくてすみますが、温度動作範囲に制限があります。
使用温度は?

DC 駆動の LVDT は 85°C 以下の温度で使用できます。DC 駆動の LVDT は、従来の外部 AC 励磁・復調・増幅機器の容積、重量、コストを考慮しなくてすみますが、センサ内の電子信号調整モジュールの材質の特性によって制約が生じます (図 2 参照)。

一方、AC 駆動の LVDT は 200°C までの温度に対応し、環境的に制御された場所にあるユニットの外で動作するリモート信号調整電子機器を使用すればさらに高い温度にも対応します。出力は、適当な表示器に表示することも、コンピュータベースのデータ取得システムに送って、統計的プロセス制御に活用することもできます。

認証要件は?

危険な動作環境で使用する線形位置トランスデューサを選ぶ場合、規制や安全要件が国によって異なるため、予定されている使用環境と場所をセンサのユーザが完全に理解している必要があります。

米国内で UL 定格に認定されたセンサは、他国での使用が必ずしも許されるわけではありません。特に、石油ガス用途、原子力発電所、海中、採掘などの危険区域において、この傾向が見られます。多くの国において、センサは、安全性を確保して事故や災害を防止するために特定の国内仕様に準拠する必要があります。

たとえば欧州市場では、爆発性のある大気で使用される可能性があると指定されたセンサは、ATEX 規格の認証を受けなければなりません。センサが危険な環境下での動作用に設計されていても、ユニットは最新の ATEX 規格で試験および評価される必要があります。