加速度計

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適切な加速度計タイプの選択

ほとんどのエンジニアリング活動と同様に、正しい工具を選ぶことが測定結果に大きな影響をもたらすことがあります。適切な加速度計の選択に以下の情報をお役立てください。

一般的に、加速度計は
DC 応答と AC 応答の 2 つのクラスに分かれます。

AC 応答加速度計では、その名のとおり、出力は AC 結合です。AC 結合デバイスは、重力や一定の遠心加速度のような静的加速度の測定には使用できません。動的イベントの測定にのみ適しています。

一方、DC 応答加速度計は DC 結合であり、0 ヘルツにまで対応します。したがって、動的加速度にも静的加速度にも使用できます。ただし、DC 応答加速度計を選択する理由は静的加速度を測定することだけではありません。

加速度計
加速度、速度、変位

ほとんどの振動研究には、加速、速度、変位の知識が必要です。これらは、構造物の設計や検証でエンジニアが求める重要な変数です。一般に、g 値は参考のための値ですが、速度と変位は多くの設計の計算に必要となる変数です。加速度出力から速度と変位を得るには、加速度計からの信号を積分し、アナログ領域またはデジタル領域でそれぞれ二重積分します。AC 応答加速度計の問題点の 1 つはここにあります。たとえば、持続時間の長い正弦半波入力パルスの測定にAC 応答加速度計を使用することを考えてみます。このデバイスの出力は、その RC 時定数の課す固有の制約によって、正弦半波入力パルスのピーク値を完全に追跡することができません。正弦半波パルスの終わりに、まったく同じ理由で AC 結合加速度計の出力がアンダーシュート (オフセット) を起こします。以下の図の赤い波形は持続時間の長い正弦半波入力の後の AC 結合デバイスの出力を表しています。

これらの一見小さな振幅偏差が数値積分 1 の間に大きな誤差になることがあります。DC 応答デバイスは速度の遅い入力を正確に追跡できますので、このような問題はありません。日常の現実の用途での物理的な入力は正弦半波インパルスと同じものではありません。しかし、AC 結合デバイスで速度の遅い動作を追跡する必要がある場合にはこの基本的な問題が必ず残ります。それでは、広く利用されているさまざまな加速度計技術を見てみましょう。

加速度計のグラフ
加速度計

最も一般的な AC 応答加速度計では、検知機構に圧電素子が使用されています。加速中、加速度計の振動質量によって圧電素子が電荷を「変位」し、加速に応じた電気出力が生み出されます。電気的にいえば、圧電素子は、通常 109 オーム程度の有限の内部抵抗をもつソース コンデンサに似ています。これはデバイスのハイパス特性を定義する RC 時定数を導きます。このため、圧電加速度計は静的なイベントの測定には使用できません。圧電素子は天然物の場合も人工物の場合もあります。 それらにはそれぞれ程度の異なる形質導入効率と線形性特性が備わっています。市場には 2 種類の圧電加速度計があります。すなわち、電荷出力タイプと電圧出力タイプです。

AC 加速度計
チャージ型圧電

ほとんどの圧電センサは、非常に広い温度範囲、幅広いダイナミック レンジ、幅広い帯域幅 (>10kHz まで使用可能) を実現する PZT (チタン酸ジルコン酸鉛セラミック) を基にしています。溶接によって密封された金属ケースにチャージ型加速度計を収められた場合、過酷な環境条件に堪えることができるので最も耐久性の高いセンサの 1 つになると考えられます。チャージ型デバイスはインピーダンス特性が高いため、低ノイズのシールド ケーブル (できれば同軸構成) で使用する必要があります。低ノイズとは、低摩擦電気ノイズ2 (動作によってケーブル自体から誘発されたスプリアス出力) のことを指します。これらのノイズ処理ケーブルは、一般にセンサの製造元から入手できます。パラレル ケーブルの静電容量に関する問題を回避するため、通常、チャージ型増幅器をチャージ型加速度計とのインタフェースとして使用します。最新のチャージ型増幅器を使用すると、チャージ型センサの幅広いダイナミック レンジ (>120dB) を簡単に実現できます。圧電セラミックの広範な動作温度範囲により、チャージ型デバイスによっては -200°C~ +640°C以上で使用できます。これらは極端な温度での振動測定 (タービン エンジンの監視など) の用途に特に適しています。

電圧型圧電

もう 1 つのタイプの圧電加速度計は、電荷出力ではなく電圧出力を行います。

これは、加速度計のハウジングにチャージ型増幅器を組み込むことによって実現されています。電圧型デバイスは、3 線式 (信号、アース、電力) または 2 線式 (電力または信号、アース) です。2 線式は IEPE (集積電子圧電) としても知られています。 AC 信号が DC パワーラインに重畳される便利な同軸 (2線式) 構成により、IEPE は最も広く利用されるものになっています。センサの信号出力から DC バイアスを取り除くため、阻止コンデンサが必要です。多くの最新信号分析器は、IEPE 加速度計に直接インタフェースを取ることのできる IEPE/ICP3 入力オプションを備えています。IEPE 電源オプションが利用できない場合は、この種のデバイスとのインタフェースのために一定の電流電源のある信号調整器または電源が必要となります。3 線式デバイスの適切な動作には、DC 電源引通し線が別途必要になります。

セラミック検知素子しかないチャージ型デバイスとは異なり、電圧型デバイスは超小形電子回路を備えてデバイスの使用温度を電子機器の最高動作温度 (通常最大 +125°C) に制限しています。設計によって制限を +175°C まで広げることはできますが、それ以外の性能面で犠牲にする部分が生じます。

使用可能なダイナミック レンジについて一言 - 圧電セラミック素子の非常に幅広いダイナミック レンジによって、チャージ型加速度計は非常にフレキシブルな拡張性を備えています。なぜなら、ユーザーのコマンドによってシステムのフル スケール レンジを遠隔地のチャージ型増幅器から調整できるからです。一方、電圧型デバイスは内蔵増幅器によって工場でフル スケール レンジが事前定義されており、変更することはできません。

圧電型加速度計は、非常に小さなフットプリントで利用できます。したがって、軽量な構造物での動的な測定に適しています。

加速度計

DC 加速度計の生産には広く使用されている 2 つのセンシング技術が利用されています。
すなわち、容量性とピエゾ抵抗です。

DC 加速度計
容量性

容量性タイプは加速中の振動質量における静電容量の変化を基にしたもので、今日の加速度計に最もよく使用されている技術です。エアバッグやモバイル デバイスなどの大型商用用途を通して普及が進みました。大容量の用途に対して規模の経済をもたらす MEMS (マイクロ電気機械システム) 製作技術の使用によって、製造コストの削減を可能にしています。しかし、このクラスの低価格容量性加速度計は、通常、SN 比の低さとダイナミック レンジの狭さがネックになります。あらゆる容量性デバイスに固有の特性の 1 つは、その内部クロックです。クロック周波数 (最大 500kHz) は電流検出回路に不可欠な要素です。これは内部漏れによって出力信号に常に存在します。高周波ノイズは加速度測定レンジの対象外ですが、常に信号内に存在しています。増幅器や IC が内蔵されているため、その 3 線 (または差動出力用に 4 線) の電気的インタフェースはシンプルであり、必要になるのは安定した DC 電圧電源のみです。

物理的幾何学とガス減衰の大きさのせいもあって、容量性加速度計の帯域幅は主に数百ヘルツ (設計によっては最大 1500Hz) に限定されています。また、容量性センサの構造も低レンジの加速度測定に適したものです。最大レンジは、通常、200g 未満に制限されています。これらの制限以外に、現在の容量性加速度計 (特に計装グレード デバイス) には優れた線形性と高い出力安定性が備わっています。

容量性タイプの加速度計は、コストが大きな要素となりうるオンボード モニタ用途に最適です。土木工学における振動測定などの g レベルの低い低周波動作にも適しています。

 

ピエゾ抵抗

ピエゾ抵抗は、DC 応答加速度計によく用いられるもう 1 つのセンシング技術です。ピエゾ抵抗加速度計は、容量性デバイスのように振動質量における静電容量の変化を検知するのではなく、加速度計のサイズモ系に含まれるひずみゲージでの抵抗の変化を生成します。ほとんどのエンジニアはひずみゲージに詳しく、その出力とのインタフェースの取り方を知っています。多くのピエゾ抵抗設計の出力は、通常、温度変化の影響を受けます。したがって、内部的または外部的にその出力に温度補償を適用する必要があります。現在のピエゾ抵抗加速度計では、あらゆる形態のボード信号調整用 ASIC と In-Situ 温度補償が取り入れられています。

ピエゾ抵抗加速度計の帯域幅は 7,000Hz 以上にまで達します。ピエゾ抵抗設計の多くは、ガス減衰 (MEMS タイプ) または液体減衰 (接着型ひずみゲージ タイプ) が施されています。減衰特性は加速度計を選ぶ上で重要な要素になる場合があります。機械的入力に超高周波入力が含まれる (または高周波応答を引き起こす) 可能性がある用途では、減衰加速度計はセンサの共鳴 (共振) を防止してダイナミック レンジを保持または改善することができます。ピエゾ抵抗センサの出力は差動式であり完全な抵抗性があるため、通常、SN 性能が際立っています。ダイナミック レンジは DC ブリッジ増幅器の品質によってのみ制限されます。非常に高い g 衝撃を測定できるよう、10,000g を優に上回る加速レベルを扱えるピエゾ抵抗設計もあります。

ピエゾ抵抗タイプ加速度計は帯域幅能力が幅広いため、周波数範囲と g レベルが通常高いインパルス / 衝撃の測定に最適です。DC 応答デバイスであるため、その加速出力から目的の速度情報と変位情報を積分誤差なし正確に得ることができます。ピエゾ抵抗加速度計は、自動車安全性試験、兵器試験、および VC 加速度計を使用できないさらに衝撃の大きな測定によく用いられます。

 

加速度計

各加速度計センシング技術にはそれぞれ利点と欠点があります。さまざまな機種や試験要件の基本的な違いを理解してから機種を選択することが重要です。

第一に、静的加速度や超低周波 (<1Hz) の加速度を測定する場合、または速度情報と変位情報が加速度データから抽出される場合は、DC 応答加速度計のみが選択肢になります。動的イベントは DC 応答タイプと AC 応答タイプのいずれでも測定できます。動的測定のみに利用する場合は、DC 応答 デバイスを選ぶか AC 応答デバイスを選ぶかは純粋に好みの問題です。DC 応答センサのゼロ オフセットに対応することを好まず、AC 連結シングルエンド出力の圧電型を選ぶユーザーもいます。あるいは、ゼロ オフセットと 4 線式 (シングルエンド モードの場合は 3 線式) に対応することを問題とせず、シャント キャリブレーションと内蔵機能性試験 (2g ターンオーバ) 機能の DC 応答加速度計を選ぶユーザーもいます。要するに、次のとおりです。

チャージ型圧電設計は単純な構造と堅牢な材料特性を備えており、最も耐久性のある加速度計タイプです。

高温 (>150°C) 動的測定用途にはチャージ型圧電を推奨します。ほとんどの場合、唯一の選択肢になります。チャージ型デバイスはインピーダンスが高いため、低ノイズ同軸ケーブルを使用し、遠隔地のチャージ型増幅器 (またはインライン チャージ コンバータ) によってその電荷出力を調整する必要があります。

電圧型の圧電は動的測定に最も一般的なタイプの加速度計です。小型かつ広帯域幅で、内蔵チャージ コンバータを備えており、多くの最新信号分析器やデータ取得システム (統合 IEPE/ICP 電源のあるもの) と直接のインタフェースを取ることができます。電圧型圧電は、通常、<125°Cの用途に限定されます。しかし、低インピーダンス出力であるため低ノイズ同軸ケーブルを使用する必要はありません。

容量性設計は低周波測定に適した高減衰から過減衰応答を特徴としています。低コストで SMD クラスのデバイスは、究極の精度が求められない大量生産の自動車用途やコンシューマ用途に適しています。より高価な計器グレード シリコン MEMS 容量性加速度計では、優れたバイアス安定性と超低ノイズが実現されています。容量性加速度計には低インピーダンス出力と±2V ~ ±5V のフル スケール出力があります。ほとんどの設計では、安定化された DC 電圧が電源として必要です。

ピエゾ抵抗加速度計は周波数とダイナミック レンジの機能に多様性があります。DC 応答デバイスであるため静的加速度を扱うことができますし、正確な速度情報と変位情報を提供します。また、幅広い帯域幅でほとんどの動的測定要件に対応します。ピエゾ抵抗設計では、さまざまな程度の減衰 (ζ =0.1 ~ 0.8) 応答を実現できます。そのため、衝撃試験などの各種試験条件での使用に適しています。電子機器のないシンプルなピエゾ抵抗加速度計は小型かつ軽量で、±100 ~ ±200mV のフルスケール出力になっています。ASIC が内蔵された増幅モデルは、低出力インピーダンス (<100Ω) と ±2V ~ ±5V のフルスケール出力を特徴としています。

 

加速度計
参考文献

1.A. G. Piersol, T.L.Paez, Harris’ Shock and Vibration Handbook 6th Ed.,
p.10.9, McGraw-Hill, 2010

2.A. G. Piersol, T.L.Paez, Harris’ Shock and Vibration Handbook 6th Ed.,
p.15.19, McGraw-Hill, 2010

3.ICP は PCB の登録商標です。さまざまな サプライヤからの広く使用されている他の商標名が存在します。