センサを基盤とする経済

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電気センサ

センサ通信の世界に関するこの新しい記事を、Wired Brand LabがTE Connectivity と共同で提供します。

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Wired Brand Lab (in collaboration with TE Connectivity)
Image Credit : Getty Images/Moment RF
Originally published on Wired.com

小さな電子センサは、私たちの生活に大きな影響を及ぼしています。 毎日のあらゆる瞬間において、この小さいながらも重要な技術機器が、絶え間なく続くデータより生活が変わるような判断をします。

 

そこから得られる利益は計り知れません。近年、センサはモノのインターネット (IoT) エンジンのスパーク プラグとしてその存在感を最も高めてきました。すでに数千億ものセンサがネットワーク接続されたさまざまな「モノ」に埋め込まれています。それらのセンサによって、心拍数や薬品の摂取量を遠隔地からモニタする高度な健康管理デバイスから、落とした鍵を探し出すシステム、オーブンをスマートフォンで消せるシステム、屋内植物の世話をするシステムに至るまで、さまざまなことが可能になってきました。

 

これは始まりにすぎません。

 

「このメタデータの新時代の次の段階は、誰も存在を知らなかったパターンを目撃することです」と、 TE Connectivity の主要分野アプリケーション センサ担当エンジニア、Brian Ream は語ります。「センサによって、莫大な量のデータをあっという間に収集・合成・理解できる世界が急速に出現しつつあります」インテリジェントな「モノ」はありふれた存在になり、それらが互いにつながって生成する厖大で豊富なデータセットから、チャンスにあふれる新世界が生まれてきます。各産業の研究者は周囲の世界についてさらに正確な予測や知見を提供できる可能性があります。ただし、流入する情報の収集と理解に成功した場合ですが。 世界の新興経済国ではセンサを利用した技術によって社会経済の発展が促進され、国力が高まって世界を舞台に競争できるようになります。ポートランド州立大学の SWEETLab は貧困環境の生活を豊かにするために複数のプロジェクトに取り組み、同研究室が呼ぶところの「Internet of Broken Thing(壊れたモノのインターネット)」に注目しています。彼らのモニタは、ケニヤの送水ポンプ、インドの料理用レンジ、インドネシアの浄水器などの各種プロジェクトで使用されてきました。同様に、 ベトナムの小さな農場では IoT を利用した「スマート農業」によって、生産効率の改善・ペストや気候変動からの保護・作物の品質向上が図られています。センサによって潅漑水位、肥料支出、温度変動が監視され、コスト削減と病気発症リスクの低減が実現されています。

 

これらのメタ開発は、多くの専門家にとって、センサをめぐる最も刺激的な動きです。「センサの最先端技術の新しい成果に夢中になりがちですが、それでは大局を見失うことになります」と PricewaterhouseCoopers の主任科学技術者、Chris Curran は語ります。「これは最もむずかしいことでもありますが、その真価はデータを利用すること、そして集めた情報から価値を引き出すことにあるのです。それがこの分野の鍵になります」

これは最もむずかしいことでもありますが、その真価はデータを利用すること、そして集めた情報から価値を引き出すことにあるのです。それがこの分野の鍵になります。
Chris Curran、主任科学技術者、PricewaterhouseCoopers

どのようなセンサでも、その目的はシンプルです。振動・温度・圧力・電圧などの情報を収集することです。それらの情報はアルゴリズムと分析を経てリアルタイムな意思決定の改善に役立てられます。 センサの集めるデータが多ければ多いほど、情報のリアルタイム分析の質が向上します。当初、センサはジェットエンジンなどの巨大で高額な産業プラットフォーム用に開発されていました。故障する何週間も前に製品の欠陥を見つけるためです。「ほとんどのセンサは、当初は安全装置で使用されていました」TE Connectivity でトランスポーテーション ソリューション部門の最高責任者を務める Steve Merkt は語ります。「その後、他の産業分野に進出していったのです」

 

研究者の予想によれば、ネットワーク接続される「モノ」は、今年中に 2015 年から 30 パーセント増加して 64 億個近くになり、2020 年までに 208 億個に達するとのことです。 全米科学財団は、IoT の進展によって、2020 年までに 500 億の「スマートな」モノが接続され、1 兆個のセンサが使用されるようになるだろうとしています。

 

センサを装備したデバイスは、すでに厖大な量のデータを生み出しています。業界専門家の推定では、私たちが毎日生成している情報は文明が始まってから 2003 年までに生成された情報とほぼ同じの量であるとのことです。世界中のデータの 90 パーセントは過去の 2 年間で生成されたと考える専門家さえいます。データによるインサイトから得られる職場や生産方法の新たな効率性が注目され続ける中で、リアルタイム分析は今までにもまして重要になってきています。

 

ワシントンの技術開発企業 Pegasus Global Holdings の専務取締役、Bob Brumley は「いろいろな意味で私たちはセンサを基盤とする経済に直面しています」と語ります。「センサはあらゆる種類のチャンスを築くことのできるプラットフォームになってきました」

 

こうした新しいチャンスはどのように形成されるのでしょうか。このことを知るために多くの専門家に話を聞きました。

センサは医療の世界ですでにその地位がしっかりと確立されています。多くの病院でセンサが毎日使用されており、機器の動作と患者ケアにきわめて重大な情報がモニタされています。 たとえば、透析機器では圧力センサ・力センサ・温度センサによって患者の血液循環を確保する重要なパラメータがモニタされています。 

 

また、センサは家庭での健康管理促進の流れにも一役買っています。サンフランシスコに拠点を置く在宅ケア機関向けソフトウェア メーカの ClearCare によれば、アメリカ合衆国に独居高齢者が 1300 万人近くもいることが理由の 1 つになっているということです。医療企業はこれらのセンサベースのデバイスによって高齢者が自立した生活を長く続けることができると期待しています。専業介護士に関わる経費を削減できるからです。ツールにはいろいろな形態のものがあります。たとえば、飲み忘れを防ぐ薬瓶、歩行状況を調べられる靴下、枕の下に置いて睡眠時間を記録するデバイス、さらには皮膚に貼って体温をモニタする小さなステッカーなどです。これらの重要な情報は臨床医に伝えられ、何か問題があれば対応してくれます。

 

同様のモニタリングは、血圧から血糖値に至るまで、あらゆることに対してリアルタイムに行うことができます。そして、有害あるいは致命的になるかもしれない事態を予防できます。

 

「人体はすでにスーパーコンピュータのようになっています。あらゆる場所からセンサ入力があるのです」と Ream は述べています。「まもなく当人が意識さえしていないことさえも測定できるようになるでしょう。捕捉して測定できる情報が多ければ多いほど、ある時点での患者の健康状態がよくわかります」

 

心の健康に役立てられるセンサ利用製品もあります。デザイナー・インベンターの Chloe Meineck は、痴呆症患者のために Music Memory Box というデバイスを作成しました。ユーザは、よく目にしてきたはずの物体、たとえば過去に受けとった賞品などの小物に RFID タグを貼り付けます。Music Memory Box の中心にその物体を置くと、読み取り装置によって RFID 番号が読み取られてその物体に合った音楽や音が流れます。その結果、ふだんなら思い出せない患者の記憶が喚起されます。Meineck によるこのプロジェクトは、音楽、特に歌や患者が懐かしく感じる音楽によって痴呆症患者の記憶が誘発させることがあるという医学的研究を利用したものです。

自律型自動運転車は間違いなく魅惑的なものです。 しかし、SF 的な魅力に訴える話題を提供するとともに安全で効率的な運転も実現することでセンサベース技術の可能性も高めているのです。なぜなら、自律型自動運転車ではライダ (light radar: 光レーダ) センサが利用されているからです。ライダはレーザ光を照射して反射光を受光することで周りの物体を検知して測距することによって車両の周辺環境を三次元でマッピングする技術です。 ライダはレーダよりもはるかに近距離で使用しますが、波長が短いために優れた解像度を実現します。多くの自律型車両が使用しているライダ センサは、1 秒ごとに視野内 220 万のデータ ポイントをスキャンし、最大 120 メートルまでの物体の位置をセンチメートル単位の精度で特定できます。

 

自律型車両では、無線通信によって車両同士が接続されていますし、歩行者や自転車を含む周囲の環境をモニタすることが可能になっています。そのため、安全性が向上するのです。早ければ 2017 年秋にも、センサ対応の車両対車両トランスポーテーション (V2V) をすべての新車が備えることを米国連邦運輸当局が義務づけるかもしれません。

  1. センサの世界にようこそ

センサによって、私たちを取り巻く世界をもっと観察して伝えることができるようになります。センサが見ているものは、人々が想像していることと、実現可能なこととの違いなのかもしれません。

都市は、場合によっては生活しにくいところです。 騒がしく、人が多く、ストレスが溜まる場所です。しかしそれは必然のことではありません。都市環境での健康とストレス軽減にセンサが大きく貢献するようになってきています。たとえば、ロンドンの企業家たちは、心血管疾患のリスクになるという飛行機の騒音に常に悩まされている人々のために設計されたセンサベースのモニタ システムの実験を行っています。このシステムは空港近くのセンサのネットワークから騒音データを収集し、飛行機のエンジンによる騒音に長く晒されることで生じる可能性のある健康リスクについての関心を高めるものです。作成者たちは、収集した証拠はヒースロー空港の 3 本目の滑走路建設阻止に役立てられると期待しています。

 

しかし、おそらく最大にして最も未来的なプロジェクトが実際には都市ではない都市で行われています。CITE (The Center for Innovation, Testing and Evaluation) は、メキシコ国境の 6,560 マイル (約 10,556 km) 北になるニューメキシコ砂漠で開発が進められている疑似都市です。CITE は Pegasus Global Holdings の開発する都市で、15 平方マイル (約 38.8 平方キロメートル) 以上の土地に人口 35,000 人規模の米国の小さな街を模して設計されたものです。そこには高層のオフィスビル、狭い路地、公園、住宅、教会、偽の州間幹線道路、ガソリンスタンド、さらには大規模小売店まで存在します。ただし、人間は住んでいません。

 

CITE の目的は、相互に接続された大規模なセンサベース技術の実験を、現実の条件で行うことができるようにすることです。実験の中心となるのは、高度道路交通システム (AI 対応交通管理や無人配達車両の行き交う道路など)・代替エネルギ発電 (太陽光や地熱など)・スマート グリッド技術、およびデータ収集・センサ・公的観測・セキュリティ・コンピュータシステムなどに関するものが考えられます。

 

「1 つのシステムが他のシステムに与える影響、つまり波及効果を確認できる、現実に近い広大なセンサベースの運用環境の構築が狙いです」と Brumley は述べています。「あらゆるモノをネットワーク接続させたら興味深いことになりますよ」

 

健康管理でも、都市計画でも、トランスポーテーションでも、予測を知り予測を立てるマシンを中心として、全体の効率が重視される新しい時代においてセンサが重要な役割を果たしています。センサによって多くのデバイスが新たな活路と効率性を獲得する中で、データにあふれる世界のもたらす無限のチャンスを活用するのは次世代のエンジニア、イノベーター、アーティストにかかっています。センサが生み出す巨大なデータをモニタ・整理することでスマートな決定を行い、より健康的でより楽しい生活を実現することができます。