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海水に接するセンサ

海水用途におけるセンサの腐食の原因と、これにまつわる課題に対応するための設計ソリューションについてご紹介します。

海水は、水深に関係なくセンサの金属部分を腐食させます。水深が変わると海水中の酸素・温度・pH・塩素・生物活動・導電率・流速のレベルも異なり、こうした条件が腐食をさらに加速させます。 圧力センサや線形位置センサなどのセンサは、オフショア プラットフォーム・脱塩システム・係留ケーブル・海底坑口・石油ガス収集システムといった用途で、さまざまな水深レベルにおける制御機能や安全機能に広く活用されています。稼働中、センサは潮流によって数センチほどの浅瀬から数百メートルの深海まで、さまざまな深度で海水に浸漬される可能性があります。このような環境で動作させるには、海水がもたらす過酷な条件下でもデータを提供し続けられるよう、センサを耐腐食性材料で構築しなくてはなりません。負荷システム・海中係留ケーブル・制御バルブ・チョーク・蒸水工場・プラットホームの安定確保といった用途に向けた、海水や海霧に接触するセンサに対する需要の増加にともない、適切なセンサ材料の選定にあたっては、用途や利用環境に適した合金を正しく選択することが大前提となります。腐食の原因が深度の変化・電解作用・生物による攻撃のいずれであれ、目的の用途に適した材料を用いることは、センサが長期にわたって優れた性能を発揮するための最優先項目となります。材料の選定は多くの場合、システムの信頼性要件・入手可能性・コスト・製造の容易さによって影響を受けます。

腐食の原因となる海水の特性

高濃度の塩分・溶存酸素・二酸化炭素・微生物を含む場合、海水環境の腐食性は高くなります。腐食率は、地球上の地域・温度・微生物の活動からなる組み合わせによって異なります。その他の腐食原因としては、淀んだ海域や汚染された海域が硫酸塩還元菌 (SRB: sulfate-reducing bacteria) を繁殖させ、センサ材料の性能に影響を与えることが考えられます。マイナス イオンを含む海水は、塩素・硫酸塩・臭素・重炭酸塩が主成分である一方、プラス イオンを含む海水の場合、ナトリウム・マグネシウム・カルシウム・カリウムが主成分となります。海水は塩化物その他の塩の溶解を促し、その結果としてステンレス鋼や他の活性・不活性材料の局部腐食を進行させます。この種類の腐食は、孔食・すき間腐食・粒界腐食の形態を取ることがあります。

海水中の微生物による腐食

微生物誘起腐食 (MIC: Microbially Induced Corrosion) は、センサの動作条件やセンサ構造に使われている材料 (特に低グレードのオーステナイト系ステンレス鋼) に応じてセンサの性能に影響を及ぼす、非常に深刻な問題です。微生物誘起腐食は通常、溶接接合部において発生するもので、早めに点検して処理をしなければ溶接部に問題が生じます。微生物誘起腐食は材料の劣化を伴う腐食プロセスであり、高濃度の酸素環境では好気性菌が活性化し、低濃度の酸素環境では嫌気性菌が生育します。こうした細菌には、粘液細菌・酸生成細菌・鉄酸化細菌・硫酸塩還元細菌・鉄還元細菌・硝酸還元細菌などがあります。微生物誘起腐食を発生させる細菌種は、数百種類にのぼります。微生物誘起腐食細菌が形成するコロニーは通常、センサのなかでも凹凸のある部位、内包物のある部位、腐食部位、または材料表面にできた切削部分に局部クラスタを形成します。こうした細菌コロニーは、酸素・鉄・マンガンを摂取して、糊状の物質を生成します。この糊状の物質は他のさまざまな細菌や非生物種を次々に呼び寄せ、センサの表面を攻撃し始めます。それがすき間や、酸素によるイオン濃淡電池の形成へとつながり、結果的に腐食が発生します。

環境条件が成長に適している場合、硫酸還元菌は腐食性が強く侵襲的になり、硫酸塩を有害な硫化物に変えることがあります。硫酸還元菌の成長状況は、微生物誘起腐食の先導役を務める酸生成細菌 (APB: Acid Producing Bacteria) によって左右されます。APB は酸素を消費して、低分子量の有機酸とアルコールを生成します。この有機酸を硫酸塩還元菌が摂取することにより、硫化水素生成のプロセスが始まります。硫化物は鋼に対して陰極の働きをしながら、電気化学的腐食プロセスによってセンサの鋼表面を攻撃し、陽性イオンを消費し始めます。その結果、センサ材料表面に孔食・上層硬化・剥落が発生します。世界のどの地域であるかによって異なりますが、この腐食プロセスは海水温度が 25° ~ 41°C の間で加速されます。チタンおよびニッケルベースの超合金は、局部腐食に対するより優れた保護性能をセンサに提供します。場合によっては、特に中東やアフリカなどの浅く暖かい水域においては、合金 400 および合金 K 材料が使用され、成果を上げています。

合金材料を使用した LVDT 位置センサと、TE の Seacon 海中嵌合対応コネクタ
合金材料を使用した LVDT 位置センサと、TE の Seacon 海中嵌合対応コネクタ

304 や 316 などの一般的なステンレス鋼の多くは、海水に直接接触するセンサでの使用に適していません。ステンレス鋼に代わり、合金含有量が多く孔食指数 (PREN) が 40 を超える二相ステンレス鋼も使用されていますが、この合金は、深海ならびに極寒の極地という新たな用途において、長期にわたり信頼できるセンサの耐久性を保証するものではありません。PREN の算出には、主成分のクロミウム (Cr)・モリブデン (Mo)・窒素 (N) が重み付け係数として使われ、指定の乗数をかけて全体値を算出します。共通の公式は、PREN = %Cr + (3.3 x %Mo) + (16 x %N) です。

PREN = %Cr + (3.3 x %Mo) + (16 x %N)

ニッケルベースの超合金

ニッケル・クロミウム・モリブデンの含有量が多く、優れた耐腐食性を発揮するニッケル超合金の中でも、特に合金 625 と合金 C276 が優れています。これら 2 材料は、信頼性および長期にわたる無故障での動作という点で、センサ向け材料に限らず、すべての重要な部品材料における最上の選択肢となります。これらの合金はステンレス鋼や二相鋼に比べてコストがかかりますが、局部腐食だけでなく酸化や還元に対して完全な耐性を備えています。