UAV 用の次世代アンテナ設計

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サイズ、重量、コストの削減

導電性材をコーティングした複合材の技術により、コスト効果が高く堅牢で軽量なアンテナおよびアレイを、次世代の無人プラットフォームにお届けします。Kathleen Fasenfest、電気技術、航空宇宙、防衛、艦船担当マネージャ

無人航空機 (UAV) はミリタリ産業での使用が拡大しており、航空用途だけでなく、地上や水中でのミッションにまで適用範囲が広がっています。 近年のアンテナ設計では、アンテナの小型化、正角性の向上、軽量化が図られ、無人機の燃料効率が向上しています。航空用途の UAV では警備区域での滞在時間は、負荷重量と航空力学の影響を直接受ける重要な任務パラメータです。無人の地上車両では、アンテナ正角性が向上することで、外部に突き出したアンテナによって偶発的な損傷が発生する可能性が低くなります。 設計者は、小型で機能性に優れた UAV を目指しているため、SWaP-C (サイズ、重量、出力、およびコスト) 要件を満たすためには、最新の製造手法で作られた小型、軽量、省エネのコンポーネントが必要です。すべてのサブシステムが SWaP-C 向上の対象となるため、サブシステムを少しずつ改善することが、プラットフォーム全体の大幅な改善につながります。 最先端の材料および製造技術により、サイズ、重量、空力抵抗、およびコストを削減しながら、アンテナ設計の向上を実現できるようになりました。次世代のアンテナ設計に影響を与える主な技術革新には、複合材および最新の選択的金属被覆化プロセスがあります。これらの技術革新を組み合わせると、機械的に堅牢で厳しい環境条件にも耐えられる、コストパフォーマンスの高い 3 次元アンテナを実現できます。

次世代のアンテナ設計に影響を与える主な技術革新には、複合材および最新の選択的金属被覆化プロセスがあります。

一般的な熱可塑性複合材は、高性能のポリマと特性強化のための充填剤の選択から始まります。 無人機に応用するポリマには、PPS、PEI、PEEK といったグレードの高温成形可能な熱可塑性素材を使用するのが一般的です。複合材料は強度に優れ、耐衝撃性、引張強度、曲げ強度などの必要な特性を得られるように作られます。しかし、複合材料の選択には使用温度や耐溶剤性の要件を考慮する必要があるため、設計時に、見込まれる温度条件やアンテナ環境をよく理解する必要があります。 カーボン ファイバ強化複合材は、軽量、費用対効果、量産のニーズを満たす導電性部品です。導電性の複合材を使用すると、アルミニウム部品より通常 30 ~ 40% の軽量化を図れます。アンテナ用途には、接地面からエンクロージャまで多岐にわたり、カーボン ファイバ複合材が使用されています。 成形可能で経済的なソリューションとしては、ガラス繊維複合材がレドームやアンテナ基材の生産に使用されています。通常のレドームは、経済的に設計する場合は無アルカリガラスで強化し、低損失がきわめて重要な場合は石英ファイバで強化して成形します。ガラス繊維複合材は、非繊維強化設計よりも、部品が薄型で軽量にできます。また、ガラス繊維を使用することで多くの複合材の誘電率が高まるため、こうした複合材を基板材料に使用することによって、アンテナを小型化できます。複合材はさまざまな充填材の添加により誘電率を変えることができ、そのような材料には中空ガラス ミクロスフェア、伝導性粒子、発泡剤などがあります。 カーボン ファイバとガラス繊維のどちらの複合材でも、繊維の長さは設計パラメータとして重要です。繊維が長いほど強度が増しますが、特徴を細かく出して製造するのが難しくなります。成形可能な長繊維複合材を使用すると、大幅に薄くしても短繊維と同等の強度を確保できます。連続繊維による強化は、大型の滑らかな特徴を備えた設計でいっそうの軽量化を可能にするため有利です。

3D 表面に特定形状の金属被覆化を施すには、選択メッキが一般的な手法です。 この処理では、部品表面に物理マスクを適用してから複数段階のメッキ処理を行うなど、労力がかかります。このように作業負荷が高いことから、選択的金属被覆化の適用部品は比較的高価になるのが普通です。 代替プロセスには、レーザー直接構造化 (LDS) や 2 ショット法による成形回路部品 (MID) などがあります。どちらも費用対効果の高い 3D 金属被覆化技術ですが、使用できる基板材料の範囲に制約があります。また、どちらのプロセスにも射出成形が必要で、臨時費用とリード タイムが増大します。 TE Connectivity ではこのような基板制限を克服するため、基板材料を問わずに 3D 表面を選択的に金属被覆化するプロセスを開発しました。このプロセスでは最初に、導電性材コーティングを部品表面に噴霧します。次に、この被覆を放射線または熱処理により硬化させます。最後に、コンピュータ数値制御 (CNC) レーザーを使用して、被覆が希望のパターンになるよう切除します。このプロセスにより 3D の共形状が得られ、金属の分解能は 100 ミクロンにも達します。また基板には成形部品または機械加工部品を使用できます。 この 3D 選択的金属被覆化プロセスは多様な基板を対象にでき、プラスチック、耐薬品性複合材、ガラス、セラミック、金属に適用できます。また、十分な接着性、-65 °C ~ +200 °C の温度範囲、耐腐食性があります。この金属被覆は耐久性に優れ、航空宇宙用途で通常必要とされるレベルの衝撃、振動、液体、塩水噴霧への耐性があります。この金属被覆化プロセスにより、過酷な環境で使用できる堅牢な 3D アンテナを、迅速に開発および製造できます。

導電性材のコーティングは、柔軟で正確に複合材基板への適用が可能です。
図 1: 導電性材のコーティングは、柔軟で正確に複合材基板への適用が可能です。
TE Connectivity ではこのような基板制限を克服するため、基板材料を問わずに 3D 表面を選択的に金属被覆化するプロセスを開発しました。

複合材と 3D 金属被覆技術によって、無人機用途のアンテナを小型化し、重量とコストを削減する道が開かれます。 複合材は、成形と量産が可能なアンテナ基板を、安価に製造するための最適なアプローチです。基板は形状を問わず、機械的な取り付け部のある基板にも対応します。この技術によって、従来の基板材料では実現できなかった、アンテナの柔軟な設計が可能になりました。

成形モジュール アンテナ設計
図 2: ガラス繊維強化の複合材基板と導電性材コーティングを使用した、成形モジュール アンテナ設計。

導電性材コーティングによる選択的金属被覆化は、標準的な回路基板エッチング技術で作成される回路トレースを、複合材部品上に形成するための優れたソリューションになります。 導電性材コーティングの伝導率は、場合によっては銅の伝導率に近付けることができます。回路に加わる損失を小さく抑えながら、より費用対効果の高い製造プロセスを可能にします。しかし、この選択的金属被覆化プロセスは、3 次元回路接続形態の製造工程での使用に特に有用です。3 次元 RF の継手経由および直接回路からアンテナへの接続が、この技術によって実現できます。アンテナ 組立て部品内で、アルミニウム部品は全体の重量の大部分を占めます。複合材のグランド プレーンは、従来のアルミニウム部品より 30 ~ 40% の軽量化が可能で、製造の容易性を高め、大幅なコスト節減を実現します。金属のインサートを使用すると、無人機プラットフォームにアンテナをしっかり取り付けられます。複合材のグランド プレーンに導電性材コーティングを使用することで、電磁障害 (EMI) シールド、アース、落雷に対する保護性能を向上できます。アルミニウム部品の製造加工時間がかなりかかる場合は、複合材をグランド プレーンにするとコスト面での優位性がかなり高まります。

モジュール アンテナ アレイ。
図 3: モジュール アンテナ アレイの構造を見ると、複合材と導電性材コーティング用途の広さがわかります。

従来のレドーム製造には、複数の材料層でのハンドレイアップが必要です。ハンドレイアップによる成形プロセスは、手間、時間、コストがかかるうえに、複雑なレドーム形状には対応できません。 一方で、長ガラス繊維や連続ガラス繊維の複合材が最近進歩し、その結果、射出成形による薄くて軽量なレドーム成形が可能になりました。耐久性のある軽量なレドームを成形できることは、アンテナの設計と製造における経済性を大きく変えます。3 次元の選択的金属被覆化では、必要に応じて落雷回避や周波数選択の機能をレドームに持たせることができます。 既に言及したさまざまな利点に加えて、導電性材コーティングを使用すると、無人機を構成する複合材部品にアンテナを直接印刷することもできます。無人機が複合材のボディ パネルを組み込む傾向にあり、導電性材コーティングで無人機の表面に機能を持たせることもできます。アンテナ、RF トレース、DC 配線は、従来の独立機能部品の代わりに、車両の構成部品に直接印刷できるようになりました。このアプローチにより、前例のない方法で無人機にアンテナを組み込むことができます。

未来が到来しました

導電性コーティングの複合材技術により、費用対効果が高く、小型、軽量、低コストの斬新なアンテナを製造することが可能になります。射出成形複合材は、アンテナ基板とレドームを量産するための魅力的なアプローチです。導電性材コーティングによる選択的金属被覆化では、3 次元アンテナ、回路トレース、グランド プレーンの構造を生成できます。これらのプロセスを組み合わせ、電気的および機械的に堅牢なアンテナおよびアレイを、次世代の無人プラットフォームに最適な共形で軽量な形でお届けします。