より走りやすく安全で環境に優しい高速車線の構築

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より走りやすく安全で環境に優しい高速レーンの構築

現代の交通渋滞には、実は未来のトランスポーテーションの革新のヒントとなることが潜んでいるのです。

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Image credit: Getty Images/Moment RF
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Mike Searles 氏は、陽が昇り始め、まだ妻と若い息子が眠っている時間帯に、非常に悩ましい通勤の途につきます。 混雑し始めたハイウェイを 30 分ほど走った後、それ以上の交通渋滞を避けるためにサンフランシスコ湾を渡るフェリーに 1 時間ほど乗船します。そして、繁華街にある職場まで忙しく徒歩で向かいます。


ハイテク向けアクセサリ製造会社の営業担当役員を務める Searles 氏は、郊外のフェアフィールドからサンフランシスコまで 50 マイルの距離を通勤しています。同氏は次のように語っています。「自宅からここまで片道 2 時間の通勤です。帰宅にも 2 時間を要します。しかし、職場の近くに家を持ちたくても、そんな大層な稼ぎがないのであれば、これは想定できる通勤形態なのです。」この想定では、日常的に家族との食事ができないことや、やっと車から解放されたときには、まだ幼い息子が眠りにつこうとしていることも甘受しなければなりません。
 

技術面で世界で最も進歩した地域の会社役員であっても、今や世界のどこでも当たり前になったハイウェイの渋滞や煩わしい通勤から解放されることはありません。スモッグに霞む空の下で渦巻く交通渋滞は、ロサンゼルス、東京、サンパウロなどの大都市のほか、シリコンバレーなども含めた地域の代名詞ともいえる現象になっています。語り草になっているようなひどい交通渋滞は、短い時間内に交通が集中することが原因となっています。2011 年のある週末にフリーウェイ 405 号線が 10 マイルにわたって閉鎖されたときに、南カリフォルニアで交通が混乱した伝説的なカルマゲドン(「CAR(車)」と「Armageddon(アルマゲドン)」の造語)がその一例です (皮肉なことに、これは道路の交通容量を増強する拡幅工事のための閉鎖でした)。それでも、Searles 氏のように毎日の通勤の苦労に取り込まれている人々が減少する気配はありません。

交通渋滞の現実は、単なる時間の浪費にとどまりません。 経費、資源、そして私たちの健康も蝕んでいます。Texas A&M Transportation Institute による 2015 年の調査によれば、米国全体で年間約 1,600 億ドルを時間とガソリン代に浪費しています。これは、平均でドライバー 1 人あたり 960 ドルに相当します。2014 年には、米国全体の交通渋滞で 69 億時間が浪費されており、これは混雑時間帯に通勤するドライバー 1 人あたり平均で年間 42 時間に相当します。ワシントン DC では、交通渋滞で通勤者 1 人あたり年間で平均 82 時間が無駄になっており、これは 1 人が 1 年で移動に費やす時間のほぼ 1% です。このようなあらゆる時間の浪費とその影響は、通勤者 1 人あたりの平均遅延時間が 1980 年代初頭に比べ、2 倍以上になっているという現実に目を向けさせています。
 

一方で、その解決に向けた道が開きつつあります。社会の極めて困難な問題の多くは、テクノロジーにより効果的に解決されてきました。そして、世界中の優れた技術者、設計者、研究者の中には、将来のトランスポーテーションの再検討へ技術的な資源と能力を投入している人々がいます。このような動きは、短期的には、急速に増大する公共と民間の交通機関に対するクリエイティブなソリューションと直近のイノベーションへの探究といえます。

 

相互に接続された交通機関インフラが増加するにつれて、それぞれのドライバの移動時間を短縮するだけでは不十分になってきます。 コネクティビティとセンサの先進企業である TE Connectivity でトランスポーテーション ソリューション部門の最高責任者を務める Steve Merkt 氏は次のように述べています。「目的地にいかに早くかつ安全に到着できるようにするには、テクノロジーが非常に重要です。我々はトランスポーテーション産業を、これまでよりもはるかに市場規模が大きいモビリティ産業として位置付ける必要があるのです。」

TE Connectivity は、接続された交通機関インフラの実現に不可欠なコネクティビティ ソリューションとセンサ ソリューションを設計製造しています。

相互に接続された交通機関インフラが増加するにつれて、それぞれのドライバの移動時間を短縮するだけでは不十分になってきます。コネクティビティとセンサの先進企業である TE Connectivity でトランスポーテーション ソリューション部門の最高責任者を務める Steve Merkt 氏は次のように述べています。「目的地に短時間で安全に到着できるようにするうえで、あらゆるドライバーの下で技術が効果を発揮します。トランスポーテーション産業を、これまでよりもはるかに市場規模が大きいモビリティ産業として位置付ける必要があります。」

モビリティに対する Merkt 氏の総合的な見解を取り込むには、構造的な障害を深く理解する必要があります。 数珠つなぎの車列に混じっての通勤は、感覚的にはモビリティと正反対ですが、現実面では経済的な成功の指標ともいえます。地域の家庭収入上昇に伴い、バスや鉄道など、スピードはないが低価格な移動手段から車やオートバイなどの個人所有の交通手段に移行する人々が増加します。

 

1980 年から 2000 年にかけ、米国の歴史でも最大の持続的な経済的繁栄が見られました。このときに国家人口は 24%増加していますが、車両の総走行距離は 80%増加しています。都市の中で、このような変化の影響を最も受けるのは雇用が集中している地域です。シリコン バレーのように経済発展の推進役となっている地域では、特にこの影響が大きくなります。このような交通混雑により、生産性低下と社会的孤立だけでなく、大気汚染やストレスの増加という問題も発生します。
 

交通渋滞の皮肉な点は、効率の追求から生まれていることにあります。仕事仲間と交流できるように、皆が同じ時間帯に職場へ向かうからです。誰もが抱くこの同じ欲求が道路を機能不全にしています。インフラの観点からすると、この課題に対処する方法がいくつかあります。とはいえ、公共交通機関の増強や新しい道路の建設には莫大な費用が必要です。また、混雑ピーク時間帯の道路有料化などは税金と捉えられるので、導入反対に遭うことになります。

 

専門家によれば、苦痛の種の多くに手元で対処できるツールを整備することが、通勤に関する大きな問題を緩和する最良の手段です。これは、データと技術を利用して、通勤手段を最適に判断できるようにすることです。単により速く移動できるだけではなく、よりスマートに移動できる賢明な手段を探し出すことです。
 

ナビゲーション デバイス製造元 TomTom の上級交通専門家である Nick Cohn 氏は、誰もが柔軟な業務スケジュールを求めているにもかかわらず、きわめて交通が混雑する時間帯がいまだに存在することを指摘しています。同氏によれば、「私どもは、どのような技術でも導入できますが、人々の行動を変えることはできそうもありません。通勤する人々は今でも動物の群れのように行動しています。」

 

同氏の助言は簡潔です。それは、利用できる最新の技術を使用することです。出発前に計画を立て、代替手段を検討することの重要性を同氏は強調しています。毎日の通勤であっても、出かける前に確認することです。「人々は毎日の行動パターンを変えていません。来る日も来る日も同じような行動を続けていては、交通の状況が改善される見込みはありません。」

  1. 未来のためのエンジニアリング

TEのエンジニアは、一見不可能なことをいかに実現できるかに日々チャレンジしています。以前は不可能だったアイデアをいかに可能にするか、TE がどのように貢献しているのかをイメージしたムービーをご覧ください。

未来派や車好きの人々にとっては、今後が期待される興味深い対策として、最近話題になっている自動運転車両の出現があります。 センサを満載して自動的に移動する新しい車両には、計り知れない高い効率性が秘められていますが、それ自身で大きな問題を解決できる可能性は高くありません。TE の Markt 氏によれば、「自動車産業、安全性、環境保全を推進するこのトレンドを考えるならば、現在の当社はコネクティビティへの移行を視野に入れています。自律運転を目的として車両に追加するセンサ には膨大な種類があります。」次の大きな動きは、接続された自動車グリッドとこれらのセンサが通信するようになることであると同氏は追加しています。

 

シリコン バレーで活動する交通技術者 Steve Fitzsimons 氏は、交通とその流れをモニタするこのようなネットワークの活用が将来は必要になるといいます。センサを搭載した車は交通管理センターに情報を提供します。このセンターは、一般的な交通状況を示すだけではなく、信号の点灯タイミングを変更したり、予想される遅延をドライバーに通知したりします。Fitzsimons 氏は次のように述べています。「この情報の収集、統合、把握の質が向上するにつれて、交通の流れを改善でき、事故件数を削減できるようになります。」
 

ゼネラルモーターズ、フォード、トヨタなどの自動車メーカーは、すでに車載技術に取り組んでいます。包括的な目標の 1 つとして、8 ~ 25 台のスマートな乗用車とトラックで緊密な "一団" を形成し、これらすべての車両が電子的に連携することで、衝突しないように互いに追従して走行できるようにするというものがあります。Fitzsimons 氏によれば、しばらくは自律走行車両と従来の車両が路上に混在することになるので、その条件下での処理が課題になるであろうとのことです。同氏は「おそらく、1 つの車線を自律走行車両専用とすることになるでしょう。」と述べています。

自動運転ソリューションの統合に取り組んでいるのは、民間の技術者だけではありません。米国政府は、米国の道路を走行する ”高度に自動化された車両” 向けに補強した法規と安全のガイドラインとして、最近 "Federal Automated Vehicles Policy," を公開しています。このガイドラインは、まだ内容が変更される可能性はあるものの、米国のハイウェイを走る自律走行車両に対して連邦政府が大きな役割を果たそうしていることを示す点で重要です。

 

将来のトランスポーテーション形態で実現する自律性の水準がどのようなものであっても、 センサ技術とコネクティビティ技術 の有機的な集合体によって車両が走行するようになることは予想がつきます。この集合体は、これまで人間が扱ってきた、複雑化する一方の機能の管理を担います。Merkt 氏によれば、この変化の中では「コネクティビティが骨格系統、センサが神経系統に相当する」ことになります。

 

短期的には、クラウド上で動作するナビゲーション アプリ、モバイル相乗りサービス、”考える” 交通信号などのデータ主導型リソースが出現して通勤者の負担を軽減しています。これらのソリューションの多くは、通勤に伴う頭痛の種を軽減しながら、一方で交通量の問題よりも予測不可能性の問題に対応してゆく傾向があります。日ごとに異なる交通状況によって、移動時間が不確定になっています。ブレーキ ライトが点滅する渋滞に紛れ込みたくないドライバーは、渋滞回避ナビゲーション アプリを事前に確認することが普通です。このアプリでは、事故、道路工事、特別な催事、スピード違反取り締まりなどに関するリアルタイムな情報を入力できます。また、Beat the Traffic の Web サイトでは、ユーザーがクラウドに提供したリアルタイムな最新情報を利用して、渋滞を回避する最速経路を提示しています。

当面のところ、共有経済が持つ ”利用が所有に打ち勝つ” 性質が、これまでにない規模で各消費者の独自性を押し出す傾向を推し進めていくことになります。 これは、Ants や Haxi などの共同作業的なオンライン相乗りサービスを利用するドライバーのスローガンになると考えられます。この中核的な概念は、交通自体の歴史同様に昔からあるもので、同じ方向に向かう乗客とドライバーが共に移動しようというものです。その一方で、このような新たなソリューションはすでに将来を見据えています。オンデマンド タクシーによる相乗りサービスは、自動運転の車両群に転換する可能性を探り始めたばかりのところにあります。

 

インフラの観点からすると、適応制御のような比較的新しいソリューションもあります。この車両検知技術では、交差点での車両台数を計測して、そのデータを中央のコンピュータに送信します。このコンピュータでは交通信号の最適な調整プランをソフトウェアで計算し、交通条件の変化に合わせて数秒単位でそのプランを更新します。これは画期的なシステムに見えますが、問題もあります。適応制御の導入コストは高く、交通信号を設置する費用の半分にもなります。
 

その先にあるソリューションは、大望と大差ないものであるか、単に技術の先行であるにすぎません。それらの目標は、乗員が 1 人のみの車両の使用を削減することにとどまっています。たとえば、テルアビブでは、skyTrans という ”個人向け高速交通” システムの導入によって、拡大する交通渋滞を部分的に緩和することを考えています。これは、地上 20 フィートに敷設した金属製軌道を走行する磁気浮上式交通機関です。この鞘状の車両は、軌道に懸垂して取り付けられ、磁気浮上技術を使用して浮き上がり、摩擦がほとんどない状態で走行します。乗客はスマートフォン アプリを使用して、最寄りの駅から車両を呼び出すことができます。各車両は互いに独立して走行でき、乗客は軌道が敷設されている範囲で目的地に最も近い地点まで乗車します。ソーラー パネルを搭載すれば、skyTran システムはエネルギー問題にも無縁になります。

 

米国での動きに目を転ずると、Hyperloop コンペのようなプロジェクトが進んでいます。これは、米国内を高速で移動できる次世代交通システムの開発を目指しています。独自に開発が進んでいる応募作として、このコンペで唯一の非大学系グループである  Team rLoop のものがあります。このチームは、仮想メディアとソーシャル メディアを通じてポッドを設計してきた世界中の 140 名以上のメンバーで構成され、現在はシリコン バレーにある TE の施設でその開発を進めています。乗客が乗り込むカプセルは、地上に敷設した総延長数百マイルに及ぶほぼ真空状態のチューブの中を高速に移動します。チューブに設けられた強力なマグネットによってポッドが浮上し、そのまま目的地まで推進されます。摩擦はほとんど発生せず、走行速度は時速 700 マイル以上に達します。

  1. TEのイノベーション : モビリティの未来を設計する

TE Connectivity は rLoop チームにセンサ、コネクタ、テクノロジーを提供することで、時速約1,200kmで疾走する未来のトランスポーテーションのイノベーションに貢献しています。(英語版ビデオ)

「未来は、我々が想像する程度にまで良くなるにすぎません。」 未来派で持続性の専門家である Alex Steffen 氏は述べています。「我々が想像していなかったものを作り出すことはできません。」毎日の通勤でいまだに数時間を費やしている Mike Searles のような人々にとって、これはたいへんな朗報といえるでしょう。トランスポーテーションの世界は進歩し続けているので、より安全で速く、より快適な日々の通勤が実現する可能性は大いにあります。一方で、Searles 氏が毎日感じている交通渋滞の現実は、次世代のトランスポーテーションにとって、ほんの一断面にすぎません。TE Connectivty の交通輸送の未 特集記事を是非ご覧になり、モビリティ産業の今後を占ってみてください。